2016年4月4日月曜日
おがさわら丸のタイル画に描かれた植物たち
父島二見港に停泊する「おがさわら丸」。
小笠原諸島と本土を結ぶ唯一の貨客船である。
おがさわら丸の船内でひときわ目を引くのが美しい花々が描かれたタイル画。
一つ一つの花を見てみると、小笠原に自生する種と思われるものが含まれていることに気づく。
これだけ目立つタイル画のこと、どこかに描かれた植物の情報があるだろうと思い検索したが見当たらなかった。
自分なりに種同定することにした。
まずは左上。
ここには2種類のヤシ科と思われる植物が描かれている。
まず、左下の扇形の葉は、小笠原固有変種の「オガサワラビロウ Livistona chinensis var. boninensis」だと思われる。
次に、真ん中で存在を放つヤシ。候補としては小笠原固有種の「ノヤシ Clinostigma savoryanum」、それから自生はしないが広く植栽されている「ココヤシ Cocos nucifera」が思いつく。葉や幹の雰囲気はココヤシに近いが、それにしては大きな実(ココナッツ)が描かれていないのが不自然な気もする。
どちらの種かは判断付けがたいが、ここは固有種のノヤシということにしたい。
次に左下。
まず、白い花を多数付けた植物は固有種の「ヒメツバキ Schima mertensiana」だろう。ヒメツバキは小笠原村の花にも指定されており、小笠等諸島を代表する花木である。
次に、ヒメツバキの下に描かれた植物。葉裏と新芽が赤さび色であること、また葉の形状から判断すると「コバノアカテツ Planchonella obovata var. dubia」が妥当だと思う。
コバノアカテツはアカテツの変種で、小笠原諸島と沖縄の大東島に分布する。
次に、ヒメツバキの右隣に描かれた黄色の5弁花は、園芸植物として小笠原でも栽培される「アリアケカズラ Allamanda cathartica」だろうか。これについてはあまり自信はない。
最後に、右下に2個描かれた花は、小笠原固有種の「テリハハマボウ Hibiscus blaber」か広域分布種の「オオハマボウ Hibiscus tiliaceus」と思われる。絵からはどちらの種なのか判別できないが、小笠原なのだし固有種のテリハハマボウということにしておく。
右上。
まず、一番上に描かれた赤い花は、恐らく「デイコ Erythrina variegata var. orientalis」だろう。
デイゴ(デイコとも)は小笠原では「ビーデビーデ」と呼ばれて親しまれている花木。かつては固有種ムニンデイゴとされていたが、今では沖縄等で見られるデイゴと同種とされている。
次に、デイコの下に描かれたパイナップル様の植物は小笠原固有種の「タコノキ Pandanus boninensis」だろう。
それから、タコノキの右隣に描かれているのは、おなじみの「ハイビスカス Hibiscus rosa-sinensis」だろう。ちなみに、ハイビスカスの標準和名は「ブッソウゲ」という。
ここには他に、左に描かれた赤い花と、右上に描かれた玉状に咲いたピンク色の花?があるが、残念ながら検討がつかない。左の花はかなり特徴的な姿をしており、種判別は十分に可能だと思うのだが。(2017年11月追記 左が「シクンシ Combretum indicum、右上がサンダンカIxora chinensisではないか?)
最後に右下。
まず、左側の赤い花は、先ほども登場したブッソウゲ(ハイビスカス)で良いだろう。
次に、右上の白い4弁花は小笠原固有種の「ムニンノボタン Melastoma tetramerum」でよいと思う。ムニンノボタンは小笠原諸島の中でも父島のみに分布、個体数が非常に少なく保護増殖が行われている。
最後に、ムニンノボタンの下の花は「ハハジマノボタン Melastoma tetramerum var. pentapetalum」だと思う。
ハハジマノボタンはムニンノボタンの変種で母島に固有。花弁は5枚で淡紅色を帯びる。タイル画に描かれたノボタンsp.は4弁花の点で異なるが、花色から判断すればハハジマノボタンが妥当だろうと判断した。
以下、タイル画に描かれた植物の種名をまとめる。
<固有(変)種>
・オガサワラビロウ
・ノヤシ
・ヒメツバキ
・テリハハマボウ
・タコノキ
・ムニンノボタン
・ハハジマノボタン
<広域分布種>
・コバノアカテツ
・デイゴ(人為的に持ち込まれたとする説もある)
<園芸種>
・アリアケカズラ
・ブッソウゲ
・不明種1
・不明種2
計13種
種同定にいくつか不安があるものの、描かれた植物の約半分は小笠原固有種ということになる。さらに、コバノアカテツとデイゴもかつては小笠原固有種とされていたことから、この2種も固有種として描かれたのかもしれない。タイル画のモチーフに小笠原ならではの植物が多く取り入れられていることをうれしく思った。
現おがさわら丸は今年夏をもって小笠原航路を引退し、新しい船にバトンタッチする。よって、このタイル画も今年で見納めになるかもしれなく、少し残念である。
<参考>
・豊田武司 2003. 小笠原植物図譜(増補改訂版). アボック社.
・豊田武司 2014. 小笠原諸島固有植物ガイド. ウッッズプレス.
2015年3月28日土曜日
3月10日 三田市で観察した雪
冬型の気圧配置となったこの日、兵庫県三田市では強風を伴いながら一時雪が降った。
昨年春に関東南部から引っ越して初めての冬を経験したが、三田市を含む兵庫県南部は関東南部よりも随分と雪が降る印象だ。
僕の抱いた印象が正しいのか、東京(関東南部)と神戸とで、過去の気象データ(1981~2010年の30年間の平均値)を比較してみる。
(気象庁ホームページよりデータ引用)
両地と比較すると、神戸で約2倍雪の日が多い。データ上でも関東南部よりも雪がよく降ることが見て取れる。
もう一つ。最深積雪の記録を比較してみた。
雪日数の少ない東京の方が、大雪に遭っていることがわかる。昨年2月に関東地方では大雪となった(東京の積雪は27cm)が、神戸では同規模の大雪を気象観測が始まって以来経験していないということになる。
標高2000m超の山脈によって日本海側からの雪雲が遮られる関東平野部と比較して、兵庫南部と日本海側とを隔てる中国山地は標高1510mの氷ノ山が最大でああり、しかも山地の幅が広くないことから、雪雲がしばしば太平洋側(瀬戸内側)にまで流れ込んできて頻繁に雪が降るのだろう。
一方で、関東地方では南岸を進む発達中の低気圧によってしばしば大雪となるが、近畿地方ではあまり大雪にはならないようだ。
今まで関東南部(神奈川、東京)に住んでいた時は、関東でも近畿でも太平洋側(瀬戸内側)は同じように冬晴れが続くのだとばかり思っていた。しかし、実際に移り住んでみると細かな気象の違いがあることが分かり、面白い。
ところで、この日降ってきた雪を観察すると、いわゆる六角形の結晶は確認できず、わずかに針状の結晶が見られる程度だった。今回降ってきたのはほとんどが雪あられだったようだ。
雪あられは、雪の結晶を核に水滴がくっ付いて凍結したもので、白色には見えるものの正確には雪とは別物になる。
<引用・参考>
・気象庁 過去の気象データ検索 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=h0 (2015年3月10日現在)
・Wikipedia 中国山地 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%B1%B1%E5%9C%B0 (2015年3月10日現在)
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2014年9月21日日曜日
植物検疫 オーストラリアから日本への持ち込み
※2018年12月記
植物防疫法の改正に伴い、情報を更新します。端的に言えば、この記事で書いた方法では植物を海外から日本に持ち込めなくなった、ということになります。
記事の内容は、一旅行記として楽しんでいただくに留めてもらえると幸いです。
最近になり、植物防疫法が厳しくなったようです。植物防疫所の”海外からの植物の持込みに関するご質問”(http://www.maff.go.jp/pps/j/trip/oversea/faq/index.html#imp_faq)などに説明がありますが、要約すれば、「海外から植物を持ち込みたい場合は、帰国前に必ず輸出国政府(植物を持ち出す国)の植物防疫機関で検査を受け、検査証明書を発行してもらう必要があり、証明書がなければ廃棄処分になる」ということになります。
ただし、以前から検疫の対象外だったもの(害虫がいないことが明らかな木製品など)については今まで通り、検疫の必要はないようです。
なお、私は法改正後に植物を持ち込んだ経験がないため、詳しい説明は避けます。
詳しくは植物防疫所のwebサイトをご覧ください(http://www.maff.go.jp/pps/)。
以下、元記事
9月18日
約3週間のオーストラリア旅行を終えて帰国しました。
旅行中も更新を続けていく予定でしたが、忙しさとパソコンの不調で滞ってしまいました。これから少しずつ書いていきます。
西オーストラリア州パース郊外の園芸店(nursery)の種子販売コーナーにて。
左右の大きな棚が野菜の種子で、その間のコーナーが西オーストラリア原産の植物の種子。。
山野草店を除く日本の園芸店で見られる在来の野草というと、せいぜいキキョウやリンドウ、それからオミナエシやカワラナデシコといったところだろうか。それと比較すると非常に大きな売り場だった。
以前からオーストラリアの植物に関心があった僕は、いくつか購入した。
購入したのは
・Xanthorrhoea preisii(ススキノキ科) 和名ススキノキ Grass Tree。
・Nothofagus cuninghamii(ナンキョクブナ科) 和名ナンキョクブナ(の一種) Myrtle Beech。
・Swainsona formosa(マメ科) Sturt (Desert) Pea。
・Rhodanthe chlorocephala(キク科) Everlastings。
その他に※市街地で採取したもので
・Schinus areira (S. molle var. areira)(ウルシ科) ピンクペッパー、コショウボクと呼ばれる仲間。南米原産
・Tipuana tipu(マメ科、ジャケツイバラ科) Rose woodとして木材利用される。南米原産。
以上が種子。
・Melilotus sp.(マメ科) 日本にも同属のシナガワハギなどが帰化。
・Trifolium tomentosum(マメ科) 日本にも同種と思われるものが帰化していて和名フウセンツメクサ。
・Erodium sp.(フウロソウ科) 日本にも同属でツノミオランダフウロなどが帰化。
・Cotula sp.(キク科) 日本には同属でオーストラリア原産のマメカミツレが帰化。
これらは土のついた根を切り取って乾燥標本にした。
(※オーストラリアでは動植物の採取は国立公園や自然保護区などにおいて厳しく規制されているが、市街地の道端などではその限りではないらしい。もっとも、市街地であっても在来種が生えていることはあり、種ごとによって扱いが異なるのかは分からない)
ところで、海外から日本に植物を持ち込む際は生の植物体、乾燥植物、種子のいずれの場合も植物検疫での申告が必要となる。植物検疫を受けるのは初めての経験で、若干緊張をしながら準備を進めた。
主に参照したのは日本の植物検疫所のホームページ、それからCITES(日本ではワシントン条約として知られる)のホームページ。
まずは、各植物種(もしくは属)が規制対象になっているかを検疫所の「輸入条件に関するデータベース」から検索。
上記6種のうち4種は通常検査でOK。RhodantheとTipuanaはリストに表示されなかった。
次に、CITESのページでリストにかかる種がないかを検索。該当種はなく一安心。
(ちなみに、普通に園芸店で売られる植物の中にも、例えばドラセナ(Dracaena)やエアープランツの一種Tillandsia xerographicaのようにCITESの指定種が含まれており、これらは国内移動は可能でも国間での移動には許可証が必要。お店で買ったものなら問題なく日本に持ち込めるわけではない。)
僕が悩んだのは、植物検疫のリストに載っていない植物があったこと、それから事前にオーストラリアの検疫所で検査を受けて検査証明書をもらう必要があるのか、それとも必要ないのか、ということの2点。
まずリストに載っていない植物については情報がないので、とりあえず持ちこむことにした。
それから検査証明書についてはページによって記述が異なっていた。
「輸入条件に関するデータベース」で各種について検索すると、条件のひとつに”輸出国政府機関が発行した検査証明書があること”、と記述されていた。一方、「旅行者(携行品)・郵便物」のページには証明書が必須である、とは書かれていなかった。自分の場合は旅行者携行品に当たると考え、現地の検疫所を訪れることなく日本の空港に向かうことにした。
関西国際空港に入港。入国審査を終え、荷物を受け取ってから植物検疫コーナーに向かう。
検疫を受ける前には、事前に申告書に持ちこみ品目の種類と個数を書き、それを検疫コーナーに持っていく必要がある。
植物に関するものは念のため検疫を受けた方がよいだろうと、木製品のブーメランとディジュリドゥも持っていくことにした。
植物検疫担当の方は1名。他に検査を受けている人はおらず、並ぶことなく検査開始。
まず、木製品については持ってきたものについては検査対象外とされた。
次に検査官は種子の袋をカッターでひとつずつ開封し、中を確認。採取した種子や乾燥標本はティッシュや紙に挟んでいたので、それも開封して中を確認。中を確認ののち、切り口に「植物検疫 Plant Quarantine」とプリントされたシールで封をし、まとめて入れておいたビニール袋に検査合格証印を押した紙を貼られて終了。
10分程度で検査は終わった。
検査中に科名や属名を聞かれたので、事前にメモした紙を見ながら回答。その他に、特定外来生物に当たるような種はないかと聞かれたので、ないと回答。
検査終了後、入国前に悩んでいた2点について質問。
まず、データベースに載っていない種については、通常検査でOKな種と同じ扱いでよいとのこと。
検疫では日本の農林業に悪影響を及ぼす病虫害の侵入を防ぐのが主な目的であるから、「許可された植物しか持ち込めない」ではなく、「何らかの形で規制された植物は持ちこんではいけない」と考えた方が適当なのだろう。(ちなみに、植物検疫所のデータベースにはCITESは反映されていないようなので、注意が必要である)
それから、現地国の検査証明書については本来どんな場合であっても必要なのだが、商業・研究利用目的でない旅行者の少量の携行品(お土産など)であれば、証明書はなくても大丈夫、とのことだった。
検疫を終えると次は税関。検査を受けた植物を見せる。
税関では麻薬取り締まりなど異なる観点から検査を受ける。コショウボクのタネが袋越しに大麻の種子などに見えたのか開けて見せるように指示されるが、他は問題なく終了。趣味でタネを持ってきた、と言うと、変わったやつだなという風な顔をされた。
以上で全ての検査が完了。
検疫官の皆様、日々のお仕事お疲れ様です。
参考
・植物検疫所 ホームページ
http://www.maff.go.jp/pps/index.html (2014年9月21日現在)
・CITES ホームページ(英語)
http://www.cites.org/ (2014年9月21日現在)
植物防疫法の改正に伴い、情報を更新します。端的に言えば、この記事で書いた方法では植物を海外から日本に持ち込めなくなった、ということになります。
記事の内容は、一旅行記として楽しんでいただくに留めてもらえると幸いです。
最近になり、植物防疫法が厳しくなったようです。植物防疫所の”海外からの植物の持込みに関するご質問”(http://www.maff.go.jp/pps/j/trip/oversea/faq/index.html#imp_faq)などに説明がありますが、要約すれば、「海外から植物を持ち込みたい場合は、帰国前に必ず輸出国政府(植物を持ち出す国)の植物防疫機関で検査を受け、検査証明書を発行してもらう必要があり、証明書がなければ廃棄処分になる」ということになります。
ただし、以前から検疫の対象外だったもの(害虫がいないことが明らかな木製品など)については今まで通り、検疫の必要はないようです。
なお、私は法改正後に植物を持ち込んだ経験がないため、詳しい説明は避けます。
詳しくは植物防疫所のwebサイトをご覧ください(http://www.maff.go.jp/pps/)。
以下、元記事
9月18日
約3週間のオーストラリア旅行を終えて帰国しました。
旅行中も更新を続けていく予定でしたが、忙しさとパソコンの不調で滞ってしまいました。これから少しずつ書いていきます。
西オーストラリア州パース郊外の園芸店(nursery)の種子販売コーナーにて。
左右の大きな棚が野菜の種子で、その間のコーナーが西オーストラリア原産の植物の種子。。
山野草店を除く日本の園芸店で見られる在来の野草というと、せいぜいキキョウやリンドウ、それからオミナエシやカワラナデシコといったところだろうか。それと比較すると非常に大きな売り場だった。
以前からオーストラリアの植物に関心があった僕は、いくつか購入した。
購入したのは
・Xanthorrhoea preisii(ススキノキ科) 和名ススキノキ Grass Tree。
・Nothofagus cuninghamii(ナンキョクブナ科) 和名ナンキョクブナ(の一種) Myrtle Beech。
・Swainsona formosa(マメ科) Sturt (Desert) Pea。
・Rhodanthe chlorocephala(キク科) Everlastings。
その他に※市街地で採取したもので
・Schinus areira (S. molle var. areira)(ウルシ科) ピンクペッパー、コショウボクと呼ばれる仲間。南米原産
・Tipuana tipu(マメ科、ジャケツイバラ科) Rose woodとして木材利用される。南米原産。
以上が種子。
・Melilotus sp.(マメ科) 日本にも同属のシナガワハギなどが帰化。
・Trifolium tomentosum(マメ科) 日本にも同種と思われるものが帰化していて和名フウセンツメクサ。
・Erodium sp.(フウロソウ科) 日本にも同属でツノミオランダフウロなどが帰化。
・Cotula sp.(キク科) 日本には同属でオーストラリア原産のマメカミツレが帰化。
これらは土のついた根を切り取って乾燥標本にした。
(※オーストラリアでは動植物の採取は国立公園や自然保護区などにおいて厳しく規制されているが、市街地の道端などではその限りではないらしい。もっとも、市街地であっても在来種が生えていることはあり、種ごとによって扱いが異なるのかは分からない)
ところで、海外から日本に植物を持ち込む際は生の植物体、乾燥植物、種子のいずれの場合も植物検疫での申告が必要となる。植物検疫を受けるのは初めての経験で、若干緊張をしながら準備を進めた。
主に参照したのは日本の植物検疫所のホームページ、それからCITES(日本ではワシントン条約として知られる)のホームページ。
まずは、各植物種(もしくは属)が規制対象になっているかを検疫所の「輸入条件に関するデータベース」から検索。
上記6種のうち4種は通常検査でOK。RhodantheとTipuanaはリストに表示されなかった。
次に、CITESのページでリストにかかる種がないかを検索。該当種はなく一安心。
(ちなみに、普通に園芸店で売られる植物の中にも、例えばドラセナ(Dracaena)やエアープランツの一種Tillandsia xerographicaのようにCITESの指定種が含まれており、これらは国内移動は可能でも国間での移動には許可証が必要。お店で買ったものなら問題なく日本に持ち込めるわけではない。)
僕が悩んだのは、植物検疫のリストに載っていない植物があったこと、それから事前にオーストラリアの検疫所で検査を受けて検査証明書をもらう必要があるのか、それとも必要ないのか、ということの2点。
まずリストに載っていない植物については情報がないので、とりあえず持ちこむことにした。
それから検査証明書についてはページによって記述が異なっていた。
「輸入条件に関するデータベース」で各種について検索すると、条件のひとつに”輸出国政府機関が発行した検査証明書があること”、と記述されていた。一方、「旅行者(携行品)・郵便物」のページには証明書が必須である、とは書かれていなかった。自分の場合は旅行者携行品に当たると考え、現地の検疫所を訪れることなく日本の空港に向かうことにした。
関西国際空港に入港。入国審査を終え、荷物を受け取ってから植物検疫コーナーに向かう。
検疫を受ける前には、事前に申告書に持ちこみ品目の種類と個数を書き、それを検疫コーナーに持っていく必要がある。
植物に関するものは念のため検疫を受けた方がよいだろうと、木製品のブーメランとディジュリドゥも持っていくことにした。
植物検疫担当の方は1名。他に検査を受けている人はおらず、並ぶことなく検査開始。
まず、木製品については持ってきたものについては検査対象外とされた。
次に検査官は種子の袋をカッターでひとつずつ開封し、中を確認。採取した種子や乾燥標本はティッシュや紙に挟んでいたので、それも開封して中を確認。中を確認ののち、切り口に「植物検疫 Plant Quarantine」とプリントされたシールで封をし、まとめて入れておいたビニール袋に検査合格証印を押した紙を貼られて終了。
10分程度で検査は終わった。
検査中に科名や属名を聞かれたので、事前にメモした紙を見ながら回答。その他に、特定外来生物に当たるような種はないかと聞かれたので、ないと回答。
検査終了後、入国前に悩んでいた2点について質問。
まず、データベースに載っていない種については、通常検査でOKな種と同じ扱いでよいとのこと。
検疫では日本の農林業に悪影響を及ぼす病虫害の侵入を防ぐのが主な目的であるから、「許可された植物しか持ち込めない」ではなく、「何らかの形で規制された植物は持ちこんではいけない」と考えた方が適当なのだろう。(ちなみに、植物検疫所のデータベースにはCITESは反映されていないようなので、注意が必要である)
それから、現地国の検査証明書については本来どんな場合であっても必要なのだが、商業・研究利用目的でない旅行者の少量の携行品(お土産など)であれば、証明書はなくても大丈夫、とのことだった。
検疫を終えると次は税関。検査を受けた植物を見せる。
税関では麻薬取り締まりなど異なる観点から検査を受ける。コショウボクのタネが袋越しに大麻の種子などに見えたのか開けて見せるように指示されるが、他は問題なく終了。趣味でタネを持ってきた、と言うと、変わったやつだなという風な顔をされた。
以上で全ての検査が完了。
検疫官の皆様、日々のお仕事お疲れ様です。
参考
・植物検疫所 ホームページ
http://www.maff.go.jp/pps/index.html (2014年9月21日現在)
・CITES ホームページ(英語)
http://www.cites.org/ (2014年9月21日現在)
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2014年6月10日火曜日
チリ産乾燥ミズゴケから草本が発芽した
6月8日
2ヶ月前に南米チリ産の乾燥ミズゴケに混入している植物を紹介した。
それほど大したものは入っていないだろうと思っていたが、南半球特有のナンキョクブナを始めとする様々な植物を確認することができて予想以上に興味深いものだった。
(以前の記事)
「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その①」
「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②」
観察し終えた乾燥ミズゴケは、本来の用途である園芸資材として鉢植えに使用しているが、そのミズゴケから草本がいくつも芽生えてきた。
5月7日
発芽に気づいて間もなくの頃。この段階では草丈は5mmにも満たない。
一見して単子葉類と分かる細長い葉。右側の葉の先端が茶色くなっているが、タネの殻が付いているのかもしれない。
6月8日
大分成長して、一番大きな株は葉が5枚、草丈3cmくらいになった。
全形。
ちょっと分かりづらいが、このポットに入れたミズゴケから5本ほど発芽している。
他の植木鉢のミズゴケから発芽したものを含めると、10株は超えると思う。
現在確認できる限りでは、発芽した植物は1種類のようだ。最初はどこかから風に乗って飛んできた種が発芽したのではないかと疑ったが、同一の種が、ミズゴケからのみ多数発芽したことから、チリ産のミズゴケ由来の植物で間違いないと思う。(違っていたらすみません)
さて、この植物の正体は何だろうか。
ミズゴケ中に混じっていた単子葉類の植物は、
・カヤツリグサ科のUncinia属の不明種 Uncinia sp. ※
・イグサ科のイグサ属(Juncus)の不明種 Juncus sp.1
・同じくイグサ属と思われる不明種 Juncus sp.2
の3種である。このうち、Juncus sp.1がミズゴケに特に多く混入していた。
このことから、発芽した草本はJuncus sp.1ではないかと思っている。
(※「sp.」というのは「~の一種」という意味で、「Juncus sp.」なら「イグサ属の一種(種類不明)」という意味になります。「sp.」は特定の種類を表すものではないので注意です。)
今回、チリ産ミズゴケに混じっていたと思われるタネから草本が芽生えてきた。何も特別なミズゴケではなく、普通にホームセンターで購入した150g入り乾燥ミズゴケ、そのうち10g程度から複数本が発芽したのである。
このことから、輸入ミズゴケから何らかの草が芽生えてくる、というのはそれほど珍しい現象ではないと思われる。
「ミズゴケに混入する雑草種子を殺すために熱湯消毒した方がいい」、という記述がネット上に散見されることからもそれが伺える。
その中で一つ興味深いブログ記事を見つけた。↓
”遊ぶ大人の非常識 by きのこ組 「乾燥水苔から発芽?!」”
イグサ科、それからイネ科と思われる草本が発芽・成長した、とのことである。
僕の購入したミズゴケから発芽した草本はこれと同じものだろうか、それとも違う種類なのだろうか。開花・結実するまで何とか育てて確認したい。
地球の裏側の植物が生えてきた、ということは非常に興味深いものの、やはり外来種問題が気になってくる。つまり、輸入乾燥ミズゴケが外来種の侵入経路となる危険があるということである。
イグサ科イグサ属の外来種、と聞いて僕がピンと来るのはコゴメイ(Juncus sp.)である。在来のイグサによく似た外来種(帰化植物)で、茎の内部に隙間があることで区別されるという。近年になって帰化が確認された種で、現時点では種名不明、原産地不明である。
単なる空論だが、「コゴメイは輸入ミズゴケ由来だった」、としたら面白いな、と思っている。
では。
<参考>
・遊ぶ大人の非常識 by きのこ組 「乾燥水苔から発芽?!」
http://petamun.blog.so-net.ne.jp/2013-05-26-1(2014年6月10日)
・日本帰化植物写真図鑑第2巻, 編・著 植村修二/勝山輝男/清水矩宏/水田光雄/森田弘彦/廣田伸七/池原直樹, 発行 全国農村協会, 2010年12月24日 初版第1刷発行
・ 食虫植物のページ 植込み (水苔) 戻しから植込みまで
http://hiros-factory.sakura.ne.jp/carnivorous/Cultivation/Sarracenia/02/Cultivation-Sarracenia-02.htm
(2014年6月10日)
・食虫植物観察日記! ハエトリソウの植え替え方
http://blog.goo.ne.jp/atlastwarabimoti/e/7223189728ffb15f39862e13907ddcbd(2014年6月10日)
2ヶ月前に南米チリ産の乾燥ミズゴケに混入している植物を紹介した。
それほど大したものは入っていないだろうと思っていたが、南半球特有のナンキョクブナを始めとする様々な植物を確認することができて予想以上に興味深いものだった。
(以前の記事)
「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その①」
「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②」
観察し終えた乾燥ミズゴケは、本来の用途である園芸資材として鉢植えに使用しているが、そのミズゴケから草本がいくつも芽生えてきた。
5月7日
発芽に気づいて間もなくの頃。この段階では草丈は5mmにも満たない。
一見して単子葉類と分かる細長い葉。右側の葉の先端が茶色くなっているが、タネの殻が付いているのかもしれない。
6月8日
大分成長して、一番大きな株は葉が5枚、草丈3cmくらいになった。
全形。
ちょっと分かりづらいが、このポットに入れたミズゴケから5本ほど発芽している。
他の植木鉢のミズゴケから発芽したものを含めると、10株は超えると思う。
現在確認できる限りでは、発芽した植物は1種類のようだ。最初はどこかから風に乗って飛んできた種が発芽したのではないかと疑ったが、同一の種が、ミズゴケからのみ多数発芽したことから、チリ産のミズゴケ由来の植物で間違いないと思う。(違っていたらすみません)
さて、この植物の正体は何だろうか。
ミズゴケ中に混じっていた単子葉類の植物は、
・カヤツリグサ科のUncinia属の不明種 Uncinia sp. ※
・イグサ科のイグサ属(Juncus)の不明種 Juncus sp.1
・同じくイグサ属と思われる不明種 Juncus sp.2
の3種である。このうち、Juncus sp.1がミズゴケに特に多く混入していた。
このことから、発芽した草本はJuncus sp.1ではないかと思っている。
(※「sp.」というのは「~の一種」という意味で、「Juncus sp.」なら「イグサ属の一種(種類不明)」という意味になります。「sp.」は特定の種類を表すものではないので注意です。)
今回、チリ産ミズゴケに混じっていたと思われるタネから草本が芽生えてきた。何も特別なミズゴケではなく、普通にホームセンターで購入した150g入り乾燥ミズゴケ、そのうち10g程度から複数本が発芽したのである。
このことから、輸入ミズゴケから何らかの草が芽生えてくる、というのはそれほど珍しい現象ではないと思われる。
「ミズゴケに混入する雑草種子を殺すために熱湯消毒した方がいい」、という記述がネット上に散見されることからもそれが伺える。
その中で一つ興味深いブログ記事を見つけた。↓
”遊ぶ大人の非常識 by きのこ組 「乾燥水苔から発芽?!」”
イグサ科、それからイネ科と思われる草本が発芽・成長した、とのことである。
僕の購入したミズゴケから発芽した草本はこれと同じものだろうか、それとも違う種類なのだろうか。開花・結実するまで何とか育てて確認したい。
地球の裏側の植物が生えてきた、ということは非常に興味深いものの、やはり外来種問題が気になってくる。つまり、輸入乾燥ミズゴケが外来種の侵入経路となる危険があるということである。
イグサ科イグサ属の外来種、と聞いて僕がピンと来るのはコゴメイ(Juncus sp.)である。在来のイグサによく似た外来種(帰化植物)で、茎の内部に隙間があることで区別されるという。近年になって帰化が確認された種で、現時点では種名不明、原産地不明である。
単なる空論だが、「コゴメイは輸入ミズゴケ由来だった」、としたら面白いな、と思っている。
では。
<参考>
・遊ぶ大人の非常識 by きのこ組 「乾燥水苔から発芽?!」
http://petamun.blog.so-net.ne.jp/2013-05-26-1(2014年6月10日)
・日本帰化植物写真図鑑第2巻, 編・著 植村修二/勝山輝男/清水矩宏/水田光雄/森田弘彦/廣田伸七/池原直樹, 発行 全国農村協会, 2010年12月24日 初版第1刷発行
・ 食虫植物のページ 植込み (水苔) 戻しから植込みまで
http://hiros-factory.sakura.ne.jp/carnivorous/Cultivation/Sarracenia/02/Cultivation-Sarracenia-02.htm
(2014年6月10日)
・食虫植物観察日記! ハエトリソウの植え替え方
http://blog.goo.ne.jp/atlastwarabimoti/e/7223189728ffb15f39862e13907ddcbd(2014年6月10日)
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2014年5月6日火曜日
広島市のイヌノフグリ事情
今年の3月に、日本生態学会の大会に参加するために広島市を訪れた。
朝、宿から会場へ向かう途中。
歩道脇のわずかな隙間にコケと共に草が生えていることに気がついた。
生育していたのはツメクサ(もっとも、市街地のツメクサは実はハマツメクサのこともあるらしいのだが)、外来種のマメカミツレ、そしてオオイヌノフグリに似た種類の分からない草本。
オオイヌノフグリに似ているものの、光沢のある無毛で肉厚の葉やピンク色のつぼみなど明らかに違う特徴を持っていた。この仲間でピンクの花を咲かせるのは在来種のイヌノフグリである。しかし、環境省のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に指定されるイヌノフグリが都会のど真ん中に生えているものだろうか、と疑問に思い、標本を取った。
その日の昼頃、信号待ちをしていたところポールの根元に再びその草を見つけた。
日が当たっていたためだろう、ここでは開花していた。
オオイヌノフグリと比較して二周りほど小さな愛らしい花である。
その後、採取した標本を研究室の先輩にお見せしたり、自分でも図鑑を調べたりしてイヌノフグリVeronica polita var. lilacina であることを確認した。
日本で見られるイヌノフグリの仲間、つまりクワガタソウ属(Veronica)には多くの種類があるが、平野部でいわゆる雑草として見かける機会が多いものとしてはオオイヌノフグリの他にタチイヌノフグリ、フラサバソウがあり、いずれも帰化植物である。
そのうち、市街地(主に広島駅~平和記念公園周辺)において、僕が歩いた範囲ではタチイヌノフグリとフラサバソウは比較的多く、時にイヌノフグリと混生していたが、オオイヌノフグリは全くと言っていいほど見当たらなかった。
2日後。
植物観察のために研究室のメンバーと広島市北部を訪れた。
森林や畑が多く残る郊外で、市街地よりも自然豊かに見える場所。しかし、こちらではイヌノフグリは全く見られず、かわってオオイヌノフグリとフラサバソウの天下となっていた。
全国的に見てイヌノフグリは減少傾向にある種で、環境省のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類、都道府県単位では36都府県で絶滅危惧種の指定を受けている。
一方で、広島県では絶滅危惧指定を受けておらず、広島市でも希少種扱いは受けていない。「広島市の生物-まもりたい生命の営み-(2004年)」には”市内に広くみられ、近年とくに変化はない”とあり、全国的には稀少となったイヌノフグリが広島市では大幅に減少することなく生き続けているようだ。
市街地のど真ん中で絶滅危惧種のイヌノフグリが出現したことに違和感を覚え、ひょっとして外来系統なのでは、とも疑ったが、この報告を見る限りは昔から残ってきた個体群と考えてよさそうだ。
イヌノフグリの現状や帰化種との関係について高倉ら(2011)の報告がある。
近畿や瀬戸内地域で主に研究をされているようだが、それによればイヌノフグリはかつては道端などにも出現したが、現在では石垣環境にやや選択的に生育するという。一方、オオイヌノフグリが生育しない島嶼では今でもイヌノフグリが地面に普通に生育するという。
また、オオイヌノフグリの花粉をイヌノフグリに付ける実験を行ったところイヌノフグリの種子形成が低下したが、逆の実験を行ってもオオイヌノフグリの種子形成は影響を受けなかったことから、オオイヌノフグリが一方的にイヌノフグリの繁殖に悪影響を与える可能性があるという。かつては広く分布していたイヌノフグリは外来のオオイヌノフグリに繁殖を邪魔されるなどして数を減らし、オオイヌノフグリの生育しづらい石垣などに生える個体群だけが生き残ったと考えられるそうだ。
広島市のイヌノフグリに話を戻す。
今回、イヌノフグリが生えていたのは石垣ではなく、一見何の変哲もない道端のわずかな地面だった。石垣同様に土壌に乏しいことがイヌノフグリにとって好適で、一方オオイヌノフグリには厳しい環境ということなのだろうか。詳しいことは分からないが、帰化種のタチイヌノフグリやフラサバソウが生育していたことから、オオイヌノフグリのタネだけが侵入できていない、ということは考えにくく、何らかの環境要因が関わっているのだと思う。
また、市街地は郊外と比べて古くに開発されて、現在は比較的安定した土地であることも影響しているかもしれない。
タチイヌノフグリなど他の帰化種から何らかの影響を今後受ける可能性は否定できないが、現状が維持される限りイヌノフグリはしばらく安泰と考えてよさそうだ。都市部は単なる自然の少ないコンクリートジャングルではなく、時に希少な生物の住処として機能する環境でもあるといえる。
一方、郊外に出てみればオオイヌノフグリが優勢であり、少しでも環境が変化すれば一気にオオイヌノフグリが広がる可能性も考えられる。仮に大規模な再開発が行われた時に、市街地がイヌノフグリの生育地として今まで通りに機能し続けるのかは疑問である。
大都市の一角にも、時に貴重な生き物が住んでいることに注目してもらえたら、と思う。
※今回の記事で市街地としたのは広島市中区の広島駅~平和記念公園周辺、郊外としたのは安佐南区~安佐北区です。正確な区分ではないのでご了承ください。
<参考・引用>
・神奈川県植物誌20011. 神奈川県植物誌調査会編. 神奈川県立生命の星・地球博物館発行. 2001年7月20日発行.
・広島市の生物-まもりたい生命の営み-. 広島市環境局環境企画課. 2004年3月発行.
・野に咲く花. 林弥栄監修・平野隆久写真. 山と渓谷社. 1989年10月1日 1刷発行、2008年7月1日 20刷発行.
・イヌノフグリの”多型”-石垣環境への適応と種子散布者との関係-. 高倉耕一・西田佐知子・西田隆義. 2011年. 日本生態学会関東地区会会報第59号.
朝、宿から会場へ向かう途中。
歩道脇のわずかな隙間にコケと共に草が生えていることに気がついた。
生育していたのはツメクサ(もっとも、市街地のツメクサは実はハマツメクサのこともあるらしいのだが)、外来種のマメカミツレ、そしてオオイヌノフグリに似た種類の分からない草本。
オオイヌノフグリに似ているものの、光沢のある無毛で肉厚の葉やピンク色のつぼみなど明らかに違う特徴を持っていた。この仲間でピンクの花を咲かせるのは在来種のイヌノフグリである。しかし、環境省のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に指定されるイヌノフグリが都会のど真ん中に生えているものだろうか、と疑問に思い、標本を取った。
その日の昼頃、信号待ちをしていたところポールの根元に再びその草を見つけた。
日が当たっていたためだろう、ここでは開花していた。
オオイヌノフグリと比較して二周りほど小さな愛らしい花である。
その後、採取した標本を研究室の先輩にお見せしたり、自分でも図鑑を調べたりしてイヌノフグリVeronica polita var. lilacina であることを確認した。
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| フラサバソウVeronica hederifolia |
日本で見られるイヌノフグリの仲間、つまりクワガタソウ属(Veronica)には多くの種類があるが、平野部でいわゆる雑草として見かける機会が多いものとしてはオオイヌノフグリの他にタチイヌノフグリ、フラサバソウがあり、いずれも帰化植物である。
そのうち、市街地(主に広島駅~平和記念公園周辺)において、僕が歩いた範囲ではタチイヌノフグリとフラサバソウは比較的多く、時にイヌノフグリと混生していたが、オオイヌノフグリは全くと言っていいほど見当たらなかった。
2日後。
植物観察のために研究室のメンバーと広島市北部を訪れた。
森林や畑が多く残る郊外で、市街地よりも自然豊かに見える場所。しかし、こちらではイヌノフグリは全く見られず、かわってオオイヌノフグリとフラサバソウの天下となっていた。
全国的に見てイヌノフグリは減少傾向にある種で、環境省のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類、都道府県単位では36都府県で絶滅危惧種の指定を受けている。
一方で、広島県では絶滅危惧指定を受けておらず、広島市でも希少種扱いは受けていない。「広島市の生物-まもりたい生命の営み-(2004年)」には”市内に広くみられ、近年とくに変化はない”とあり、全国的には稀少となったイヌノフグリが広島市では大幅に減少することなく生き続けているようだ。
市街地のど真ん中で絶滅危惧種のイヌノフグリが出現したことに違和感を覚え、ひょっとして外来系統なのでは、とも疑ったが、この報告を見る限りは昔から残ってきた個体群と考えてよさそうだ。
イヌノフグリの現状や帰化種との関係について高倉ら(2011)の報告がある。
近畿や瀬戸内地域で主に研究をされているようだが、それによればイヌノフグリはかつては道端などにも出現したが、現在では石垣環境にやや選択的に生育するという。一方、オオイヌノフグリが生育しない島嶼では今でもイヌノフグリが地面に普通に生育するという。
また、オオイヌノフグリの花粉をイヌノフグリに付ける実験を行ったところイヌノフグリの種子形成が低下したが、逆の実験を行ってもオオイヌノフグリの種子形成は影響を受けなかったことから、オオイヌノフグリが一方的にイヌノフグリの繁殖に悪影響を与える可能性があるという。かつては広く分布していたイヌノフグリは外来のオオイヌノフグリに繁殖を邪魔されるなどして数を減らし、オオイヌノフグリの生育しづらい石垣などに生える個体群だけが生き残ったと考えられるそうだ。
広島市のイヌノフグリに話を戻す。
今回、イヌノフグリが生えていたのは石垣ではなく、一見何の変哲もない道端のわずかな地面だった。石垣同様に土壌に乏しいことがイヌノフグリにとって好適で、一方オオイヌノフグリには厳しい環境ということなのだろうか。詳しいことは分からないが、帰化種のタチイヌノフグリやフラサバソウが生育していたことから、オオイヌノフグリのタネだけが侵入できていない、ということは考えにくく、何らかの環境要因が関わっているのだと思う。
また、市街地は郊外と比べて古くに開発されて、現在は比較的安定した土地であることも影響しているかもしれない。
タチイヌノフグリなど他の帰化種から何らかの影響を今後受ける可能性は否定できないが、現状が維持される限りイヌノフグリはしばらく安泰と考えてよさそうだ。都市部は単なる自然の少ないコンクリートジャングルではなく、時に希少な生物の住処として機能する環境でもあるといえる。
一方、郊外に出てみればオオイヌノフグリが優勢であり、少しでも環境が変化すれば一気にオオイヌノフグリが広がる可能性も考えられる。仮に大規模な再開発が行われた時に、市街地がイヌノフグリの生育地として今まで通りに機能し続けるのかは疑問である。
大都市の一角にも、時に貴重な生き物が住んでいることに注目してもらえたら、と思う。
※今回の記事で市街地としたのは広島市中区の広島駅~平和記念公園周辺、郊外としたのは安佐南区~安佐北区です。正確な区分ではないのでご了承ください。
<参考・引用>
・神奈川県植物誌20011. 神奈川県植物誌調査会編. 神奈川県立生命の星・地球博物館発行. 2001年7月20日発行.
・広島市の生物-まもりたい生命の営み-. 広島市環境局環境企画課. 2004年3月発行.
・野に咲く花. 林弥栄監修・平野隆久写真. 山と渓谷社. 1989年10月1日 1刷発行、2008年7月1日 20刷発行.
・イヌノフグリの”多型”-石垣環境への適応と種子散布者との関係-. 高倉耕一・西田佐知子・西田隆義. 2011年. 日本生態学会関東地区会会報第59号.
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2014年4月14日月曜日
乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②
その①に引き続きチリ産乾燥ミズゴケに混入していた植物について。
その前に①で書き直した点。
樹木sp.1→Luma chewuen?に変更。
樹木sp.2→sp.1に変更。
種同定について全く自信はないのですが、葉の形状が類似していること、葉裏に黒っぽい腺点があるという特徴からひとまず本種としておきます。
では、新たな種について。
Uncinia sp.
カギ針状の雌しべ?が特徴的。
最初は科名すら分からなかったが、どうやらUnicinia属の一種らしい。
カヤツリグサ科の一属で、南米やオーストラリア、ニュージーランドなどに分布。ナンキョクブナに似た分布域を持つようだ。
日本では見られない属。
?
チランジア(エアープランツ)をミニチュアにしたような姿。
南米にはチランジアなどのパイナップル科の植物が分布するからその一つかもしれないが、単に葉っぱが折れて根元だけ残った植物にも見える。
Pinus radiata?
(ラジアータマツ?)
最初はイネ科などの草かと思ったが、どうやらマツの葉っぱらしい。
チリにはマツ属の樹木は分布しないが、Pinus radiataが広く植栽されているという。
Pinus radiataは3葉マツ(3枚の松葉が一か所から出る)で、今回見つけたものも3枚目の葉が取れたような痕があったから本種と考えた。
次はシダ。
シダsp. 1
日本のチャセンシダなどに少し似た雰囲気を持ったシダ。葉柄が随分と長いようだ。葉がどれも途中で折れていたため。全形がどのようなものかは分からない。
拡大。
胞子のう群は見られなかった。
シダsp. 2
①で紹介したJuncus sp. 1と並んで多く混入しており、湿地において主要な種であったと考えられた。
シダsp. 1以上にボロボロになっており、葉の全体像を読み取ることができなかった。
拡大。
この破片を見る限り、単葉(一枚葉)でなく複葉(小さな葉が集まっている)であることがうかがえる。
もう一枚拡大。
上と下の葉が同じ種類のものなのかは正直なところよく分からず、シダsp. 2に複数種が含まれている可能性もある。
こちらも胞子のう群は見当たらず。
シダsp. 3 (胞子葉?)
多くのシダは、葉裏に胞子を入れる胞子のうを付けるが、胞子をつける胞子葉と、光合成を行う栄養葉と、2種類の葉を持つ種も少なからずある。
シダsp. 3は葉脈が不明瞭で、また他のシダと比較して不自然にボロボロとなっており、胞子葉であると考えられた。
そのため、sp. 1やsp. 2とは別種としたものの、どちらかの胞子葉であった可能性も大いにありそうだ。
(参考) オオハナワラビの栄養葉と胞子葉
下についているシダの葉っぱらしい形のものが栄養葉、直立して黄緑色をしているのが胞子葉である。
シダの新芽(シダsp. 4?)
ゼンマイ状に丸まったシダの新芽も見つかった。sp. 1~3と別種なのか、いずれかの種の新芽なのかは分からない。
コケsp. 1(左)、sp. 2(右) (蘚類)
スギゴケなどに似たコケも混入していた。ミズゴケも同じ蘚類に属するが、それとは異なる種であった。
コケsp. 3 (苔類)
日本のウロコゴケなどを彷彿とさせる苔類と思われるコケ。
地衣類sp.
小枝についていた。日本でも樹木に着生するサルオガセなどの地衣類があるがそれに近いものだろうか。
ちなみに小枝そのものが今まで出てきた種と一致するのか、しないのかは分からない。
最後に
主役であるミズゴケ。
今回の観察で、ミズゴケを含めて15~17種の植物を見つけることができた。念入りに選り分けたわけではないので、見逃してしまった種もいくつかあるかもしれない。
数百円の買い物で、思いがけず地球の反対側の植物を見ることができてなかなかに面白かった。ちょっとした海外旅行の気分である(笑)。
チリを始め、海外の植物の自生する姿を見てみたいという気持ちが強くなった。
参考
・Wikipedia日本語版 ラジアータパイン http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%B3(2014年4月13日現在)
・Chileflora http://www.chileflora.com/(2014年4月12日現在)
その前に①で書き直した点。
樹木sp.1→Luma chewuen?に変更。
樹木sp.2→sp.1に変更。
種同定について全く自信はないのですが、葉の形状が類似していること、葉裏に黒っぽい腺点があるという特徴からひとまず本種としておきます。
では、新たな種について。
Uncinia sp.
カギ針状の雌しべ?が特徴的。
最初は科名すら分からなかったが、どうやらUnicinia属の一種らしい。
カヤツリグサ科の一属で、南米やオーストラリア、ニュージーランドなどに分布。ナンキョクブナに似た分布域を持つようだ。
日本では見られない属。
?
チランジア(エアープランツ)をミニチュアにしたような姿。
南米にはチランジアなどのパイナップル科の植物が分布するからその一つかもしれないが、単に葉っぱが折れて根元だけ残った植物にも見える。
Pinus radiata?
(ラジアータマツ?)
最初はイネ科などの草かと思ったが、どうやらマツの葉っぱらしい。
チリにはマツ属の樹木は分布しないが、Pinus radiataが広く植栽されているという。
Pinus radiataは3葉マツ(3枚の松葉が一か所から出る)で、今回見つけたものも3枚目の葉が取れたような痕があったから本種と考えた。
次はシダ。
シダsp. 1
日本のチャセンシダなどに少し似た雰囲気を持ったシダ。葉柄が随分と長いようだ。葉がどれも途中で折れていたため。全形がどのようなものかは分からない。
拡大。
胞子のう群は見られなかった。
シダsp. 2
①で紹介したJuncus sp. 1と並んで多く混入しており、湿地において主要な種であったと考えられた。
シダsp. 1以上にボロボロになっており、葉の全体像を読み取ることができなかった。
拡大。
この破片を見る限り、単葉(一枚葉)でなく複葉(小さな葉が集まっている)であることがうかがえる。
もう一枚拡大。
上と下の葉が同じ種類のものなのかは正直なところよく分からず、シダsp. 2に複数種が含まれている可能性もある。
こちらも胞子のう群は見当たらず。
シダsp. 3 (胞子葉?)
多くのシダは、葉裏に胞子を入れる胞子のうを付けるが、胞子をつける胞子葉と、光合成を行う栄養葉と、2種類の葉を持つ種も少なからずある。
シダsp. 3は葉脈が不明瞭で、また他のシダと比較して不自然にボロボロとなっており、胞子葉であると考えられた。
そのため、sp. 1やsp. 2とは別種としたものの、どちらかの胞子葉であった可能性も大いにありそうだ。
(参考) オオハナワラビの栄養葉と胞子葉
下についているシダの葉っぱらしい形のものが栄養葉、直立して黄緑色をしているのが胞子葉である。
シダの新芽(シダsp. 4?)
ゼンマイ状に丸まったシダの新芽も見つかった。sp. 1~3と別種なのか、いずれかの種の新芽なのかは分からない。
コケsp. 1(左)、sp. 2(右) (蘚類)
スギゴケなどに似たコケも混入していた。ミズゴケも同じ蘚類に属するが、それとは異なる種であった。
コケsp. 3 (苔類)
日本のウロコゴケなどを彷彿とさせる苔類と思われるコケ。
地衣類sp.
小枝についていた。日本でも樹木に着生するサルオガセなどの地衣類があるがそれに近いものだろうか。
ちなみに小枝そのものが今まで出てきた種と一致するのか、しないのかは分からない。
最後に
主役であるミズゴケ。
今回の観察で、ミズゴケを含めて15~17種の植物を見つけることができた。念入りに選り分けたわけではないので、見逃してしまった種もいくつかあるかもしれない。
数百円の買い物で、思いがけず地球の反対側の植物を見ることができてなかなかに面白かった。ちょっとした海外旅行の気分である(笑)。
チリを始め、海外の植物の自生する姿を見てみたいという気持ちが強くなった。
参考
・Wikipedia日本語版 ラジアータパイン http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%B3(2014年4月13日現在)
・Chileflora http://www.chileflora.com/(2014年4月12日現在)
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2014年4月13日日曜日
乾燥水苔に見る南米チリの植物たち その①
着生ランなどの栽培のためにホームセンターで乾燥ミズゴケを購入した。 産地は南米のチリ。
乾燥ミズゴケには、しばしばミズゴケではない植物の枝葉が混入している。 それらは園芸家から見ればただの「ゴミ」であるわけだが、考えてみれば地球の裏側の植物の乾燥標本が手元に届いているようなもので、なかなかに興味深い。
何年か前に、ちりめんじゃこの中のシラス(イワシの子供)以外の小魚やカニの幼生といった「チリモン(チリメンモンスター)」が話題となった。ミズゴケ中の植物たちはいわばミズゴケ版チリモン「ミズゴケモンスター(コケモン?)」といったところか。
ミズゴケには植物だけでなく時に虫なども混じっているようで、検索したところミズゴケに混入した南半球産のカメムシについて紹介されているブログがあった。(害虫屋の雑記帳:園芸店で南半球のカメムシを買う http://homeservice.blog.ocn.ne.jp/gaityuya/2014/02/post_e185.html 2014年4月12日現在)
こちらの虫の方が植物よりも「コケモン」にふさわしいかもしれない。
それでは僕が見た植物たちについて。
ミズゴケから選り分けた植物の枝葉など。
ミズゴケは1袋150gだった。
乾燥して丸まったりもろくなったりしていたので、ぬるま湯で戻してから判別を試みた。
まずは木本と思われるものから。
ナンキョクブナの一種
葉の長さ1.5~3cm、幅1~1.5cm、葉柄0.3~0.5cm。葉はかなり硬質で、常緑の可能性が高そう。
ナンキョクブナは主に南半球に見られるナンキョクブナ科の木本で、そのうちチリには10種類のナンキョクブナ属Nothofagusが分布するらしい。
絵合わせから、今回のものはNothofagus nitida、もしくはN. dombeyiではないかと思ったが自信はない。
Luma chewuen?
葉の長さ1.2~2cm、幅0.8~1.2cm、葉柄0.2~0.3cm。葉はやや分厚いが硬くはない。葉裏に黒い斑点が多くあったが、元々の特徴かは不明。
日本のツゲに何となく似た雰囲気。Luma chewuenには葉裏に黒い斑点(腺点)が散在するようで、形状も似ていることからとりあえず本種とした。
樹木sp. 1
葉の長さ0.5~1cm、幅0.3~0.5cm、葉柄0.1cm。茎(地下茎?)は長く、ミズゴケ中にもぐり込んでいた。
見当が付かず。
ミズゴケの中を這うように伸びて生活している小低木、もしくは草本と考えられた。日本の植物で例えると、やはりミズゴケ湿地などで這って生育するツルコケモモなどに近い存在だろうか。
樹木sp.2の葉の拡大。
随分と肉厚の葉で、葉裏の主脈が突き出す。
葉の表はボツボツとへこんでいる。
イグサ属の一種① Juncus sp.1
日本でも湿地においていくつかのイグサ属Juncusの草本が生育するが、本種も同属と
思われる。ただし種類は分からず。
日本のイグサと比べて随分と茎が太く、大型の種と思われた。ミズゴケ中には大量の木の枝のようなものが混入していたが、そのほとんどが本種であるようだった。
ミズゴケを採取する湿地においてかなり重要な種であるのかもしれない。
イグサ属の一種①の果実部分の拡大。
日本のイグサ属では、果実の形態が種判別の重要なカギとなることがある。今回見つけた種も、果実形態などをもとに種同定が可能なのかもしれないが、今回はそこまで力は及ばず。
イグサ属の一種② Juncus sp.2
前述のイグサ属①と比較してはるかに華奢な草体で、花序もまばら。
そもそもイグサ科すら自信がない。ひとまずイグサ属の一種としているが、カヤツリグサ科かもしれない・・・。
イグサ属の一種②の果実部分の拡大
状態が悪く、種判別はおろかイグサ属なのかすら僕には確証が持てなかった。
他にもいくつかの植物が見つかりましたが、長くなるので続きは別記事にて。
参考ホームページ
・Chileflora http://www.chileflora.com/index.html (2014年4月12日現在)
・Wikipedia英語版 Nothofagus http://en.wikipedia.org/wiki/Nothofagus (2014年4月12日現在)
・害虫屋の雑記帳 http://homeservice.blog.ocn.ne.jp/gaityuya/ (2014年4月12日現在)
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