2018年2月25日日曜日

奄美大島で観察した落葉樹 Deciduous trees of Amami Ōshima island

1月中旬

鹿児島県の奄美大島を訪れた。

金作原にて。遊歩道沿いでは落葉樹も目立つ

常緑広葉樹林(照葉樹林)が全域に発達する奄美大島だが、落葉シーズンの1月ということもあり、思いのほか落葉樹も目に付いた。









奄美大島に生育する落葉樹には、奄美大島や奄美群島に固有な種、国内で奄美に分布が限られる種も含まれている。常緑樹が優勢なこの島において、特有な落葉樹がみられるのは興味深い。


シマウリカエデ Acer insulare(ムクロジ科)

奄美大島と徳之島に固有のカエデ(モミジ)。
道路沿いなどの林縁に普通にみられた。
落葉済みのものから黄葉中のものまで、様々な個体がみられた。

落葉していた葉。

葉形は多様。

アオモジ Litsea cubeba(クスノキ科)

本州の中国地方以西に分布し、奄美群島が分布の南限らしい。

林道沿いで点々とみかけた。

ハゼノキ Toxicodendron succedaneum(ウルシ科)

別名リュウキュウハゼ。奄美大島では林縁などに普通にみられた。

イイギリ Idesia polycarpa(ヤナギ科)

果実を付けていた。
青森県が北限だが、暖温帯でより生育量が多い気がする。
奄美大島では林道沿いなどで普通にみられた。

シマサルスベリ Lagerstroemia subcostata(ミソハギ科)

国内では奄美群島に分布し、屋久島と種子島には変種のヤクシマサルスベリがある。国外では中国、台湾、フィリピンに分布する。

赤褐色の幹が特徴的。渓流沿いや地滑り跡地?などに生育し、ときに大きな集団もみられた。


上述の落葉樹は島内の比較的広範囲に分布するが、島の南西部の沿海地に分布が限られる種もある。
そこには落葉樹が優占する森林が成立し、奄美大島の中では特異な景観の場所だ。冬の季節風の影響を強く受けるためだろうか。

アマミカジカエデ Acer amamiense(ムクロジ科)

奄美大島の固有種。葉は本土に分布するカジカエデに似ている。2000年に記載された。

ワダツミノキ Nothapodytes amamianus(クロタキカズラ科)

奄美大島の固有種。かつては八重山諸島以南に分布するクサミズキと同種扱いされていたが、2004年に新種として記載された。

ヒロハタマミズキ Ilex macrocarpa(モチノキ科)

中国にも分布するが、国内分布は奄美大島のみ。種小名は「大きな(marco)実(carpa)」を意味し、その名と通り、モチノキ属の中では大型の果実を付けるらしい。





他に観察した落葉樹はカラスザンショウ、ハマセンダン、シマグワ、アカメガシワ、シマタゴ、オオムラサキシキブ、ギョボク、オオシマウツギ、ゴンズイなど。

温暖な奄美の冬の気候を反映してか、イイギリやアマミカジカエデなどを除く大半の種は多少なりとも緑葉が残っていることが多く、図鑑の記述で初めて落葉樹であることを知った種もあった。

Amami Ōshima is the biggest island of the Amami Islands, which belongs to Kagoshima prefecture. Despite the main vegetation type of the island is Laurel forest, some endemic deciduous tree species of the Amami Islands are distributed. Acer insulare (Japanese name: Shima-Uri-Kaede) is a common endemic tree throughout the Island. In contrast, Acer amamiense (Japanese name: Amami-Kaji-Kaede) and Nothapodytes amamianus (Japanese name: Wadatsumi-no-ki) are very rare species and only distributed in the coastal area of the southern part of the island. In Amami Ōshima, we can also see many non-unique deciduous, such as Litsea cubeba, Toxicodendron succedaneum, and Lagerstroemia subcostata.


<参考>
・Nagamasu H. and Kato M. 2004.  Nothapodytes amamianus (Icacinaceae), a New Species from the Ryukyu Islands.  Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 55 : 75-78.
・大川智史 林 将之 2016.  ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑. 文一総合出版.
・Yamazaki T. 2000.  A New Species of Acer from the Ryukyus.  Journal of Japanese Botany, 75 : 282-284.
・Plant Biographies (学名の意味を紹介するサイト)http://www.plantlives.com/plant_biogs.php 2018年2月25日確認