2014年11月16日日曜日

ヒメシロアサザの種子散布 その2

11月14日

先日から次々と種子を放出しているヒメシロアサザNymphoides coreana
前回の記事(→リンク)で、種子が表面張力によって水面に浮かび、水の流れで散布されるらしい、ということを書いた。

では、果実から出た種子がどのようにして水面へと達するのだろうか。

ヒメシロアサザの果実。

まず、果実を付けた花柄が水面近くまで伸び、果実が水面で割れることで種子が浮かぶのではないか、と考えた。
しかし、少なくとも我が家の栽培株においては、成熟したと思われる果実を付けた花柄も多くが下を向き、水面近くまで達することはなかった。

そこで、水中で果実が割れた場合に種子がどのように水面へ到達するのかを確かめることにした。
果実が割れる瞬間をずっと待ち続けるわけにはいかないので、果実を水中で強制的に割ることにした。

果実に割れ目を付け、種子を押し出す。
すると、種子とともに気泡が姿をあらわした。

種子をまとった気泡はそのまま水面へと上昇、気泡がはじけると同時に種子は水面に浮かび上がった。

外部から空気が入り込まない水中での実験であり、自然状態でもこれに近い形で水面へと運ばれるのではないかと思う。



種子ではないが、沖縄の海に生えるウミショウブは、水中で形成された雄花が気泡とともに浮かび水面を滑走して雌花にたどり着くことで有名で、時々メディアでも紹介される。
ヒメシロアサザの種子散布はそれを彷彿させるもので、興味深いものだと思った。





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2014年11月13日木曜日

ヒメシロアサザの種子散布

花期の様子。花径は1cm以下と小さい
2014年10月31日

栽培しているヒメシロアサザNymphoides coreana が今年も結実した。
埼玉県のとある工事予定地の休耕田から希少種を移植するアルバイトに参加した際、無数に発芽していた幼個体をいくつかいただいたものだ。



本種は自家受粉を行うためよく結実する。
環境さえ整えば爆発的に増える種と思うが、現状は開発などの影響を受け、国のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類。採取地の埼玉県では絶滅危惧Ⅰ類に指定される。

割れた果実から飛び出した種子は水面に浮かぶ(そのまま水底に沈むものもあるかもしれないが)。
茶色い粒々が浮かんでいるのを見つけた時、最初はそれが何なのか見当がつかなかったが、しばらくしてヒメシロアサザのものと気づいた。


表面張力で浮かんでいるようでちょっと突くだけで沈む。自然界でも水面を流れて移動した種子が、波などを受けて適当な所で沈み、広がっていくのだろう。
種子や果実の内部に空気をため、その浮力で浮かぶ戦略を取る植物は多いが、表面張力を利用するものはあまり多くないと思うので、面白い。


・11月15日 追記
追加の記事を書きましたのでリンクを貼ります。
→「ヒメシロアサザの種子散布 その2

・11月26日 追記
ヒメシロアサザの種子散布について、記事を書いた時にはそれに関する情報を見つけられなかったのですが、その後に「ため池の自然-生き物たちと風景 (浜島繁隆・土山ふみ・藤蔵繁生・増田芳樹 編著 信山社サイテック 2001年」に、ヒメシロアサザの種子について、”種子の表面は水をはじき1~2日浮遊した後沈むが、その間、水の働きで種子散布が行われる”、との記述を見つけました。この本の記述は著者の一人の浜島さんの論文が引用されているようなので、そちらにはもっと細かい内容が書かれているのかもしれません。機会があれば読んでみたいと思います。

ただ、僕が観察した限りでは種子は1~2日の浮遊ののちに沈む、というよりも、波などの影響で適当なタイミングで沈む(言い換えれば穏やかな水面では自動的に沈むことなくかなり長時間浮かび続ける)のではないかと思います。自生状態を観察したことがないので、偉そうなことは言えないのですが・・・。






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2014年10月24日金曜日

佐渡の植生 海岸湿地の植物たち

10月21、22日

佐渡の西側の海岸で、塩性湿地に生える植物を観察した。

自然豊かな佐渡島であるが、大部分の海岸線で護岸工事やテトラポットの設置がなされており、海岸が自然のまま良好に保たれている場所はそう多くない。人の生活圏と接する海岸植生は開発の影響を受けやすく、今日の佐渡において特に脆弱な存在の一つであると考えられる。



岩礁海岸に成立する植物群落。小さな岬の付け根に当たる場所であり、多少なりとも日本海の荒波から守られていると思われた。
右側の赤茶色で背丈の低い群落の主な構成種はヤマイFimbristylis subbispicata (カヤツリグサ科)、左側の背丈の高い群落の構成種はヨシPhragmites australis (イネ科)とシオクグCarex scabrifolia (カヤツリグサ科)など。


(写真は佐渡の別の場所で撮影したもの)
海側の最前線に主に見られたのがウミミドリLysimachia maritima (サクラソウ科)。

北方系の植物で、佐渡は分布の南限に近い。(日本における分布南限は石川県の能登半島)

卒論で、東北の海岸に成立する湿地の植生を扱った自分にとってはなじみ深い植物である。



ヤマイ群落内から流れ出る水
塩性湿地というと塩分(海水)の影響が着目されやすいが、実際には陸側からの淡水の流入も大きく影響していると思われる。

つまり、塩性湿地の水質は海水とイコールではなく、海水と淡水の混じった汽水である。

陸側から流れ込む水が開発等により遮断されたり、または極度に汚染された場合、塩性湿地の植物たちに何らかの影響が及ぶことも考えられる。


この場所でも明らかに陸側から水が流れ込んできており、ヤマイはその水が流れたり湧き出していると思われる場所に生育していた。

写真では分かりづらいと思うが、靴の先の辺りを右から左へ水が流れていた。

その他に見かけたもの。

左写真はドロイJuncus gracillimus (イグサ科)。
イヌイとも迷ったがおそらく本種。

湿地に生えていたものとしては、他にトウオオバコ、アキノミチヤナギなど。

湿地の背後の礫地にはハマゴウVitex rotundifolia が生育していた。

ハマゴウは暖かい地域の海岸を代表する低木で、本州の暖温帯域の海岸を北限に、沖縄の海岸でも普通に見かける。



北方系のウミミドリが生育する湿地の背後にハマゴウが生える構図は、通常異なる気候下で生育する植物が同所的に見られる佐渡を象徴するかのようで、とても面白かった。

佐渡島の希少植物のうち海岸植物として、ウミミドリをはじめ北方系のハマベンケイソウやハマハコベなどが挙げられているが、今回の観察では発見できなかった。次回訪れた時は見つけたいと思う。



<参考>
・Y List 植物名検索
http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html (2014年10月24日現在)
 

・上野海岸におけるウミミドリの生育環境 ~植生調査と土壌塩分濃度の測定から~, 高木政喜・白井伸和, 石川県立自然史資料館研究報告 第3号, 2013年
http://www.n-muse-ishikawa.or.jp/motto/docs/BIMNH3_p1.pdf (2014年10月24日現在)





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佐渡島の植生 安養寺のブナ林

10月22日

植生学会の観察会で佐渡島を訪れた。


今回訪れた場所のひとつが安養寺。
大佐渡山地と小佐渡山地に挟まれた国中平野に位置する。

標高約60mの当地には佐渡島で最も低標高に成立しているブナ林が見られる。

ブナ林の外観。


林内。

白っぽい樹皮の木がブナ、真ん中の褐色の木はスギ。高木層には他にアカシデ、ホオノキなどがあった。
スギは佐渡島では自然林の構成種で、尾根部にスギ林も形成しているが、お寺の隣なので植栽起源かもしれない。

林床を覆う低木は日本海側のブナ林の構成種のひとつであるヒメアオキ。

丸く大きな葉が特徴のオオカメノキ(ムシカリ)。
本種もブナ林の低木層の重要な構成種。

このように、安養寺のブナ林ではブナだけでなく、ブナ林を構成する植物が多く出現していた。
低木としては上記以外にハイイヌツゲ・エゾユズリハ・オオバクロモジ・ハウチワカエデ、ヤマモミジなど、草本としてコシノカンアオイなどが見られた。

(背後に写るサクラはウワミズザクラ、ササは恐らくヤダケ。)

ブナ林、つまり冷温帯域の植物が多く見られる一方で、暖温帯の常緑広葉樹林(照葉樹林)で見られる植物も混生していた。

写真の右側に写るのは、冷温帯で見られるヒノキアスナロ、左側に写るのは常緑広葉樹林の構成種であるシロダモ。

主に暖温帯で見られる植物として他に見られたものはヒサカキ、ヤブコウジ、ヤブツバキなど。少し離れた所ではスダジイの大木もあった。
ちなみに小佐渡山地では日本海側ブナ林に生育するユキツバキも見られるそうだが、ここではヤブツバキのみ。


当地の気候は、気温をもとにすれば暖温帯域に属するといえる。
最も近いアメダス(両津)で観測された1981年~2010年平均の月別平均気温をもとにWI(温量指数)、CI(寒さの指数)を算出すると、WI=105.5、CI=-4.5となる。
暖温帯のWIは85~180、CIは-10以上とされているので、これに当てはまる。
両津のアメダスの標高は5mと少し低いが、安養寺の気候もこれと大きくは違わないはず。

(WI(温量指数)については説明が長くなるので、詳しくは「Wikipedia 暖かさの指数」などを参考にしていただければ、と思います。)

ブナの幼個体(高さ約40cm)。発芽から5年くらいだろうか。
暖温帯域でブナが見られる例はいくつかあり、例えば東京近郊で有名なのは高尾山のものがあげられる。
高尾山のブナは、200~300年位前の小氷期の時代に生育したものの生き残りと言われ、現在残るのはいずれも成熟個体。充実した果実が形成されず、次世代への更新はできていないと考えられている。

一方、佐渡の安養寺のブナ林では少ないながらも幼個体が見られた。また、亜高木~高木層に達した個体も直径は様々で、一次的に成立して消えつつある群落ではなく、ある程度持続的な群落であると思われた。

伊藤邦男氏の1984年の調査報告によれば、安養寺のブナ林のブナの樹高や幹径は小さく、その他の構成種などから「伐採など人為の加わった若いブナ林の特徴」があるという。
つまり、安養寺のブナ林は原生的な森林ではなく、人為が大きく加わった存在であると考えられる。お寺の周囲は田畑が広がり、人々の生活空間にきわめて近い場所に成立していること、近くには雑木林でよく見られるコナラやクヌギなどが見られたことからもそれが伺えた。

暖温帯域の二次林、つまり雑木林には冷温帯域で主に見られる植物が構成種に現れるというが、佐渡でも本来、スダジイを始めとした暖温帯の植物が生育する場所に、人の手が適当に加わり続けたことで、ブナを始めとする冷温帯の植物が進出して両気候帯の植物が混在する独特の森林が形成されたのかもしれない。(

ただ、佐渡島では異なる気候帯(暖温帯~亜高山帯)の植物が同時に現れる例がしばしば見られるので、人為だけでなく佐渡特有の気候(雪、強風、暖かい冬と涼しい夏など)が成立に関わっているのかもしれない。佐渡島低地の自然林がほとんど残っていないので、この場所が元々ブナ林が成立する条件であるのか、それとも常緑樹林が成立するのか、この2つが混じった林ができるのかは何とも分からない。

伊藤氏の調査からちょうど30年たった今、報告に書いてあったよりもブナは大きくなり、また高木に挙げられていたアカマツはほとんど枯れていたようだった。また、「林内には林縁に生育する植物が多く見られる」という内容の記述があったが、今回はそれらの植物はそれほど目立っていなかったように感じた。
安養寺のブナ林は、今の姿のまま安定することなく、これからも少しずつ姿を変えていくのではないだろうか。




<参考文献・URL>
・植生管理学, 福島司著, 朝倉書店, 2006年3月30日 第2刷

・佐渡の花 携帯版, 伊藤邦男・村川博實著, 山歩きガイドクラブ, 2008年3月31日 改訂版第2刷

・気象庁 過去の気象データ検索
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=54&block_no=0518&year=&month=&day=&view=(2014年10月23日現在)

・佐渡の貴重な植物群落1 佐渡:安養寺のブナ林 佐渡における最低海抜のブナ林, 伊藤邦男
http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/10222/1/03_05_0006.pdf (2014年10月23日現在)

・Wikipedia 暖かさの指数 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%95%E3%81%AE%E6%8C%87%E6%95%B0 (2014年10月23日現在)

・高尾通信 1-5 元禄ブナの危機
http://www.takaosan.info/mame1-5.html (2014年10月23日現在)


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2014年9月21日日曜日

植物検疫 オーストラリアから日本への持ち込み

※2014年9月時点での情報に基づいて書いているため、現在は状況が異なるかもしれません。
正確な情報については、植物検疫所のホームページ等を確認してください。

9月18日

約3週間のオーストラリア旅行を終えて帰国しました。
旅行中も更新を続けていく予定でしたが、忙しさとパソコンの不調で滞ってしまいました。これから少しずつ書いていきます。


西オーストラリア州パース郊外の園芸店(nursery)の種子販売コーナーにて。


左右の大きな棚が野菜の種子で、その間のコーナーが西オーストラリア原産の植物の種子。。
山野草店を除く日本の園芸店で見られる在来の野草というと、せいぜいキキョウやリンドウ、それからオミナエシやカワラナデシコといったところだろうか。それと比較すると非常に大きな売り場だった。

以前からオーストラリアの植物に関心があった僕は、いくつか購入した。


購入したのは
Xanthorrhoea preisii(ススキノキ科) 和名ススキノキ Grass Tree。
Nothofagus cuninghamii(ナンキョクブナ科) 和名ナンキョクブナ(の一種) Myrtle Beech。
Swainsona formosa(マメ科) Sturt (Desert) Pea。
Rhodanthe chlorocephala(キク科) Everlastings。

その他に※市街地で採取したもので
Schinus areira (S. molle var. areira)(ウルシ科) ピンクペッパー、コショウボクと呼ばれる仲間。南米原産
Tipuana tipu(マメ科、ジャケツイバラ科) Rose woodとして木材利用される。南米原産。
以上が種子。

・Melilotus sp.(マメ科) 日本にも同属のシナガワハギなどが帰化。
・Trifolium tomentosum(マメ科) 日本にも同種と思われるものが帰化していて和名フウセンツメクサ。
・Erodium sp.(フウロソウ科) 日本にも同属でツノミオランダフウロなどが帰化。
・Cotula sp.(キク科) 日本には同属でオーストラリア原産のマメカミツレが帰化。
これらは土のついた根を切り取って乾燥標本にした。

(※オーストラリアでは動植物の採取は国立公園や自然保護区などにおいて厳しく規制されているが、市街地の道端などではその限りではないらしい。もっとも、市街地であっても在来種が生えていることはあり、種ごとによって扱いが異なるのかは分からない


ところで、海外から日本に植物を持ち込む際は生の植物体、乾燥植物、種子のいずれの場合も植物検疫での申告が必要となる。植物検疫を受けるのは初めての経験で、若干緊張をしながら準備を進めた。
主に参照したのは日本の植物検疫所のホームページ、それからCITES(日本ではワシントン条約として知られる)のホームページ。

まずは、各植物種(もしくは属)が規制対象になっているかを検疫所の「輸入条件に関するデータベース」から検索。
上記6種のうち4種は通常検査でOK。RhodantheTipuanaはリストに表示されなかった。
 
次に、CITESのページでリストにかかる種がないかを検索。該当種はなく一安心。
(ちなみに、普通に園芸店で売られる植物の中にも、例えばドラセナ(Dracaena)やエアープランツの一種Tillandsia xerographicaのようにCITESの指定種が含まれており、これらは国内移動は可能でも国間での移動には許可証が必要。お店で買ったものなら問題なく日本に持ち込めるわけではない。)

僕が悩んだのは、植物検疫のリストに載っていない植物があったこと、それから事前にオーストラリアの検疫所で検査を受けて検査証明書をもらう必要があるのか、それとも必要ないのか、ということの2点。
まずリストに載っていない植物については情報がないので、とりあえず持ちこむことにした。

それから検査証明書についてはページによって記述が異なっていた。
「輸入条件に関するデータベース」で各種について検索すると、条件のひとつに”輸出国政府機関が発行した検査証明書があること”、と記述されていた。一方、「旅行者(携行品)・郵便物」のページには証明書が必須である、とは書かれていなかった。自分の場合は旅行者携行品に当たると考え、現地の検疫所を訪れることなく日本の空港に向かうことにした。

関西国際空港に入港。入国審査を終え、荷物を受け取ってから植物検疫コーナーに向かう。
検疫を受ける前には、事前に申告書に持ちこみ品目の種類と個数を書き、それを検疫コーナーに持っていく必要がある。
植物に関するものは念のため検疫を受けた方がよいだろうと、木製品のブーメランとディジュリドゥも持っていくことにした。

植物検疫担当の方は1名。他に検査を受けている人はおらず、並ぶことなく検査開始。

まず、木製品については持ってきたものについては検査対象外とされた。
次に検査官は種子の袋をカッターでひとつずつ開封し、中を確認。採取した種子や乾燥標本はティッシュや紙に挟んでいたので、それも開封して中を確認。中を確認ののち、切り口に「植物検疫 Plant Quarantine」とプリントされたシールで封をし、まとめて入れておいたビニール袋に検査合格証印を押した紙を貼られて終了。
10分程度で検査は終わった。


検査中に科名や属名を聞かれたので、事前にメモした紙を見ながら回答。その他に、特定外来生物に当たるような種はないかと聞かれたので、ないと回答。 

検査終了後、入国前に悩んでいた2点について質問。
まず、データベースに載っていない種については、通常検査でOKな種と同じ扱いでよいとのこと。
検疫では日本の農林業に悪影響を及ぼす病虫害の侵入を防ぐのが主な目的であるから、「許可された植物しか持ち込めない」ではなく、「何らかの形で規制された植物は持ちこんではいけない」と考えた方が適当なのだろう。(ちなみに、植物検疫所のデータベースにはCITESは反映されていないようなので、注意が必要である)

それから、現地国の検査証明書については本来どんな場合であっても必要なのだが、商業・研究利用目的でない旅行者の少量の携行品(お土産など)であれば、証明書はなくても大丈夫、とのことだった。

検疫を終えると次は税関。検査を受けた植物を見せる。
税関では麻薬取り締まりなど異なる観点から検査を受ける。コショウボクのタネが袋越しに大麻の種子などに見えたのか開けて見せるように指示されるが、他は問題なく終了。趣味でタネを持ってきた、と言うと、変わったやつだなという風な顔をされた。
以上で全ての検査が完了。


検疫官の皆様、日々のお仕事お疲れ様です。


参考
・植物検疫所 ホームページ
http://www.maff.go.jp/pps/index.html (2014年9月21日現在)

・CITES ホームページ(英語)
http://www.cites.org/ (2014年9月21日現在)


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2014年9月2日火曜日

8月26日 西オーストラリア パース(Perth)の雑草

8月26日
学会と旅行のため、オーストラリアを訪れている。

オーストラリアはコアラやカンガルーなどの動物だけでなく植物も固有のものが多い。
例えば、ヤマモガシ科(バンクシア属など)やマメ科(アカシア属など)、フトモモ科(ユーカリ属など)は多様な種に分化していて、それらによって形作られる景観は日本とは全く異なるものである。


一方、市街地を歩くと道端には見覚えのある植物が目立つ。
上の写真は芝生地を撮影したもので、セイヨウタンポポ、オランダミミナグサ、シロツメクサなど日本でもおなじみのヨーロッパ原産の草本が生えていることが分かる。

街を歩いていると、他にも様々な草本に出会った。

Poa sp.(イネ科)

スズメノカタビラに似た草本。

Cardamine sp.
(アブラナ科)

タネツケバナの仲間。
日本においてはミチタネツケバナ(C. hirtsuta)やコタネツケバナ(C. debilis)が帰化種として知られている。

ノボロギク
Senecio vulgaris (キク科)

日本でもよく見かけるノボロギクと思う。

チャボタイゲキ
Euphorbia peplus
(トウダイグサ科)

日本にも帰化しているが、それほど多くは見られない(と思う)チャボタイゲキ。
ここパースでは数多く見られた。



同じトウダイグサ科ではホルトソウ(Euphorbia lathyris )と思われるものもあった。

ニセカラクサケマン?Fumaria capreolata (ケマンソウ科orケシ科)

こちらも日本ではあまり一般的でないニセカラクサケマンと思われる植物。
パースにおいては特に目立つ種の一つで、公園や道端のあちこちで繁茂していた。


本種を含むFumaria属のうち、日本には本種とカラクサケマン、セイヨウエンゴサクがヨーロッパ原産の帰化種として侵入しているらしい。

上で紹介した他にもノゲシ、ヨツバハコベ、タチイヌノフグリ、カラスムギの仲間、チチコグサの仲間などが見られた。

今回観察した道端の草、いわゆる雑草が日本で見られるものと同種なのか、それとも同属の別種なのかは、しっかりと種同定を行っていないので分からない。少なくとも、日本でもよく見かけるヨーロッパ原産の草たちが帰化しているのは間違いなさそうだ。
雑草として生えていたもののうちオーストラリア原産の種はマメカミツレくらいで、しかも本種は日本でも目立つ帰化種の一つである。パース市内の雑草はほぼ帰化植物で占められていると言ってよいと思う。

日本から遠く離れた地でも、同じ温帯域であれば市街地に現れる植物はそれほど変わらないことを実感した。むしろ、一部に在来種を含む日本の雑草群よりも、より帰化種の存在を強く感じた。

オーストラリアにおいて8~9月は春に当たる。日本においても春季の雑草にはヨーロッパ原産の帰化種が目立つ。
一方、日本では夏になるとセイタカアワダチソウやオオアレチノギクを始め、北米大陸や熱帯域からやってきた種が多くなる。パース市の夏季の雑草がどのようなものか気になるところである。



最後に西オーストラリアらしい植物をひとつ。

Kings Parkで見かけたCaladenia latifolia(ラン科)。
現地ではPink fairyと呼ばれている。


オーストラリア在来の植物についても写真を整理し次第紹介したい。




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2014年8月13日水曜日

8月5日 チリ産ミズゴケから発芽した植物 ②

8月5日


今年4月にホームセンターで購入した南米チリ産の乾燥ミズゴケから、イグサ属と思われる草本が発芽した。
(その時の記事→ チリ産乾燥ミズゴケから草本が発芽した

発芽から3カ月が経った現在、最も大きい個体で高さ20cmに達している。
成長したとはいえ幼植物に変わりはないため、現時点ではこの植物が何であるかははっきりとは分からない。


もうひとつ、ミズゴケ由来と思われるものが発生した。シダ植物の前葉体と思われるものである。(分かりづらいですが、黄色い円で囲った中のものです。)


この存在に気が付いたのは6月末頃のこと。
少しずつ成長をしているもののあまり動きがなく、本当にシダ植物の前葉体なのかすらはっきりとは分からない。

乾燥ミズゴケには2~3種(あるいはそれ以上)のシダ植物の破片が混入していた。
(→以前の記事 乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②
そのため出現した前葉体?は、これらのシダ植物のいずれかの胞子が発芽したものの可能性があると考えられる。
一方で、胞子は非常に細かいために風に乗って周囲から飛んでくることも考えられ、実は日本に自生しているシダの前葉体かもしれない。

前葉体からは、しばらくすると胞子体(通常目にするシダの姿)が現れてくるはずで、そうすれば正体が分かるのではないかと思う。







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2014年7月30日水曜日

7月28日 山陰海岸の植物

7月28日

海浜植物の調査で京都府の日本海側を訪れた。


山陰海岸を象徴する植物の一つがトウテイランVeronica ornata

ゴマノハグサ科(APG分類体系ではオオバコ科)の多年草で、春の雑草として有名なオオイヌノフグリと同属である。

漢字で「洞庭藍」と書き、その花色を中国の洞庭湖の水色の美しさに例えたのが由来だそう。
白い軟毛で覆われた草姿と淡紫の花色の対比が素晴らしい。





観葉植物のような草姿だがれっきとした在来種で、山陰海岸の一部(京都、鳥取、島根の隠岐)にしか自生しない日本固有種である。
日本のクワガタソウ属(Veronica)に似た種はないように思うが、大陸に目を向けるとVeronica incanaを始め、トウテイランとよく似た姿の種がいくつかある。山陰の一部に限られる特異な分布域から、氷期に大陸から渡ってきた祖先が日本で分化したものなのではないか、と思う。


※ちなみに、洞庭湖(どうていこ)は中国一の大河、長江から大量の水が流れ込む富栄養湖だそうで、水の透明度は低いという。むしろ、洞庭湖はその周辺を含めた景観の美しさで知られていたようである。トウテイランの花色を洞庭湖の水色に例えたというよりも、洞庭湖の景観のように美しい草である、という方が由来として適当な気がするがどうなのだろう。



コオニユリLilium leichtlinii

海岸の草原に生育。
山陰海岸では、コオニユリを始めキジカクシやユウスゲなど、草原性植物が多く見られる。

太平洋側の海岸を見慣れている自分としては、コオニユリでなくスカシユリ、キジカクシでなくクサスギカズラ、ユウスゲでなくハマカンゾウが出現するのが普通であり、それらに置き換わって草原性の植物が出現する山陰は興味深い。

ナナカマドSorbus commixta

一般に山地で見られることが多い落葉高木。
この地ではタブノキやトベラなど暖帯の海岸林構成種に混じって冷温帯(山地帯)に出現するナナカマドやアラゲナツハゼなどが見られる。


ケカモノハシIschaemum anthephoroides
海岸砂丘で一般的なイネ科の多年生草本。写真下に写っているのはハマゴウ。












本ブログは開設からちょうど3年を迎えました。
これまでに訪問いただいた皆様に感謝申し上げます。

これからも不定期ながら更新を続けて行きたいと思います。拙い内容ではありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いします。



参考
・日本の野生植物Ⅲ 合弁花類, 平凡社, 1992年8月1日 初版第22刷発行
・Wikipedia洞庭湖(どうていこ)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%9E%E5%BA%AD%E6%B9%96(2014年7月30日)





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2014年6月25日水曜日

ボウランの花に来た虫 -花粉を運ぶのはコガネムシ?-

6月25日

我が家のボウランLuisia teresが10日ほど前から開花している。

ボウランはラン科の多年生草本で、葉が多肉質で棒状の特異な姿をしていることからその名が付く。

花のアップ。

ラン科の花には6枚の花びら状のものが付くが、うち3枚が花弁、もう3枚がガク片である。
下部にべろんと伸びている赤紫色のものが唇弁と呼ばれる花弁、あとの花弁とガク片は黄緑色。中心にある丸いものはずい柱で、雄しべと雌しべが融合したもの。
先端には葯帽と呼ばれるフタが付いていて、その内側に花粉塊がある。
赤紫色の唇弁が独特の雰囲気を放つが、どちらかといえば地味な花であると思う。


ボウランの花を特徴づけるものがもう一つあり、それが独特の香りである。
生臭いが少しフルーティーな感じもあり、個人的にはバナナの皮の香りに最も近いと思っている。



あまり目立たない花姿と独特の香りを持つボウランのポリネーターは誰なのか。

6月19日にニクバエの一種と思われるハエがやってきた。
唇弁を舐めるような仕草を見せたり花の周りを歩き回ったりしたが、ずい柱のある奥へは潜り込まなかった。

このハエがボウランの送紛者(ポリネーターpollinator)と考えるのは少々難しいのではないかと思われた。
ボウランの花粉塊は軽く触っただけでは外れないことから虫が力強く花の奥にもぐり込む動作が必要と考えられ、ハエのように花を軽くなめる程度の動作では花粉塊が外れてハエの体に付着する可能性は低いと考えられるからだ。



6月25日

今度はコガネムシの一種のアオドウガネがやってきていた。
左目の上には花粉塊が付いていた。







唇弁を除く花弁が食害されたもの。左の花には花粉塊が見える。

有力なポリネーター候補と思われたアオドウガネだが、同時にボウランの花をひどく食害していた。









25日時点で30個余り咲いていた花のうち12個が食害された。食害部位で分類すると、
①花弁、ガク片のみが食べられ、ずい柱に変化なし・・・3個
②花弁、ガク片が食べられ、花粉塊があらわれたもの・・・5個
③花粉塊が外れたもの(ずい柱が一部食われたもの)・・・2個
④ずい柱を含めて全て食害されたもの・・・2個

となった。
花粉塊はアオドウガネに付着したものが1個、落下したものが1個だった。


この結果からどのようなことが考えられるのだろうか。

アオドウガネはポリネーターとして機能する可能性が高い一方、花を食害する存在でもある。しかし、一部を除いて結実に直接関わるずい柱(雌しべの部分)を損傷することはなかった。
このことから、ボウランは少しの食害を承知でアオドウガネを呼び寄せて花粉媒介を行わせている可能性があると思われる。

しかし、アオドウガネ一頭で10個以上の花が食われるというのは、さすがに代償が大きすぎるのでは、という疑問も浮かぶ。そもそも、今回のアオドウガネが純粋にボウランの香りに誘われてやってきたのか、それとも偶然照明に飛んできたものかも分からない。
また、ひとつだけ赤紫色をした唇弁も何らかの役割を果たしているように思えるが分からない。


住宅地における栽培下の結果ではあるが、ボウランが香りによってハエやコガネムシを呼んでいる可能性があること、またコガネムシの一種に食害を受けながらも花粉塊を付着させ、送粉を行わせている可能性があることが分かった。
自生地でのポリネーターが誰であるかは今のところ推測するしかないが、主に嗅覚に頼って生活し、花にもぐり込む力を持つコガネムシの仲間がそれにふさわしいのではないだろうか。



検索したところ、「怠け者の散歩道」というブログにカナブンが訪花したことが紹介されていました。やはり、コガネムシの仲間が花粉を運んでいる可能性が高いのでしょうか。(↓にリンクを貼りました)

”怠け者の散歩道 「自宅のラン:ボウランの花にやってきたカナブン」”http://ele-middleman.at.webry.info/201207/article_21.html (2014年6月25日現在)

追記 (2015年5月)
ボウランの訪花昆虫について、京大の末次健司さんとの共著で短報をまとめました。
「ボウランLuisia teres(ラン科)の訪花昆虫」という題です。本記事で書いた内容も一部含まれています。
掲載されたものが発行され次第、追って情報を書きます。

追記(2015年10月)
植物研究雑誌第90巻5号に、本記事で書いた観察結果を含む論文(題「ボウラン(ラン科)の訪花昆虫」)が掲載されましたので、ここに記します。
要約→http://www.tsumura.co.jp/kampo/plant/090/090_05.html#p359





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2014年6月10日火曜日

チリ産乾燥ミズゴケから草本が発芽した

6月8日

2ヶ月前に南米チリ産の乾燥ミズゴケに混入している植物を紹介した。
それほど大したものは入っていないだろうと思っていたが、南半球特有のナンキョクブナを始めとする様々な植物を確認することができて予想以上に興味深いものだった。

(以前の記事)
「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その①」 

「乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②」
            


観察し終えた乾燥ミズゴケは、本来の用途である園芸資材として鉢植えに使用しているが、そのミズゴケから草本がいくつも芽生えてきた。

5月7日

発芽に気づいて間もなくの頃。この段階では草丈は5mmにも満たない。

一見して単子葉類と分かる細長い葉。右側の葉の先端が茶色くなっているが、タネの殻が付いているのかもしれない。


6月8日

大分成長して、一番大きな株は葉が5枚、草丈3cmくらいになった。


全形。

ちょっと分かりづらいが、このポットに入れたミズゴケから5本ほど発芽している。
他の植木鉢のミズゴケから発芽したものを含めると、10株は超えると思う。





現在確認できる限りでは、発芽した植物は1種類のようだ。最初はどこかから風に乗って飛んできた種が発芽したのではないかと疑ったが、同一の種が、ミズゴケからのみ多数発芽したことから、チリ産のミズゴケ由来の植物で間違いないと思う。(違ったらすみません)


さて、この植物の正体は何だろうか。
ミズゴケ中に混じっていた単子葉類の植物は、

・カヤツリグサ科のUncinia属の不明種  Uncinia sp. ※
・イグサ科のイグサ属(Juncus)の不明種 Juncus sp.1
・同じくイグサ属と思われる不明種           Juncus sp.2  

の3種である。このうち、Juncus sp.1がミズゴケに特に多く混入していた。
このことから、発芽した草本はJuncus sp.1ではないかと思っている。

(※「sp.」というのは「~の一種」という意味で、「Juncus sp.」なら「イグサ属の一種(種類不明)」という意味になります。「sp.」は特定の種類を表すものではないので注意です。)


今回、チリ産ミズゴケに混じっていたと思われるタネから草本が芽生えてきた。何も特別なミズゴケではなく、普通にホームセンターで購入した150g入り乾燥ミズゴケ、そのうち10g程度から複数本が発芽したのである。
このことから、輸入ミズゴケから何らかの草が芽生えてくる、というのはそれほど珍しい現象ではないと思われる。
「ミズゴケに混入する雑草種子を殺すために熱湯消毒した方がいい」、という記述がネット上に散見されることからもそれが伺える。

その中で一つ興味深いブログ記事を見つけた。↓

    ”遊ぶ大人の非常識 by きのこ組  「乾燥水苔から発芽?!」

    イグサ科、それからイネ科と思われる草本が発芽・成長した、とのことである。


僕の購入したミズゴケから発芽した草本はこれと同じものだろうか、それとも違う種類なのだろうか。開花・結実するまで何とか育てて確認したい。


地球の裏側の植物が生えてきた、ということは非常に興味深いものの、やはり外来種問題が気になってくる。つまり、輸入乾燥ミズゴケが外来種の侵入経路となる危険があるということである。

イグサ科イグサ属の外来種、と聞いて僕がピンと来るのはコゴメイ(Juncus sp.)である。在来のイグサによく似た外来種(帰化植物)で、茎の内部に隙間があることで区別されるという。近年になって帰化が確認された種で、現時点では種名不明、原産地不明である。
単なる空論だが、「コゴメイは輸入ミズゴケ由来だった」、としたら面白いな、と思っている。

では。


<参考>
・遊ぶ大人の非常識 by きのこ組  「乾燥水苔から発芽?!」
http://petamun.blog.so-net.ne.jp/2013-05-26-1(2014年6月10日)

・日本帰化植物写真図鑑第2巻, 編・著 植村修二/勝山輝男/清水矩宏/水田光雄/森田弘彦/廣田伸七/池原直樹, 発行 全国農村協会, 2010年12月24日 初版第1刷発行

・ 食虫植物のページ 植込み (水苔)  戻しから植込みまで
http://hiros-factory.sakura.ne.jp/carnivorous/Cultivation/Sarracenia/02/Cultivation-Sarracenia-02.htm
(2014年6月10日)

・食虫植物観察日記! ハエトリソウの植え替え方
http://blog.goo.ne.jp/atlastwarabimoti/e/7223189728ffb15f39862e13907ddcbd(2014年6月10日)


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