2012年10月31日水曜日

クヌギクチナガオオアブラムシとクロクサアリ

10月27日
学内のクヌギの幹をふと見てみたら、黒光りしたアリが集まっていた。触るとサンショウに似たにおいを発した。恐らくクロクサアリLasius spathepusであろう。類似種にクサアリモドキという種があり、腹柄節(ふくへいせつ)という、腹部と胸部の間にある突起の形で見分けるそうだ。この日はそれを確認できなかったので、また今度観察してみたい。


アリたちが集まるクヌギの幹のくぼみには大柄なアブラムシがいた。

クヌギクチナガオオアブラムシ
Stomaphis japonica というアブラムシであるらしい。大きなものは体長4~5mmくらいはありそうな大柄のアブラムシである。
アブラムシを捕まえて観察してみようと枝でつついたら、クロクサアリが激しく攻撃してきた。日本産アリ類画像データベース(http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/J/Taxo/F80613.html)を参考にすると、クロクサアリはこのアブラムシの出す蜜(甘露)を定常的な餌源としているそうで、その存在は大きいのだろう。

さて、アリの隙間をぬってアブラムシを幹から離そうと繰り返しつついたが、頭を中心に回転して動くだけで全く離れる気配がなかった。大抵のアブラムシは群れをつついた瞬間にポロポロと落ちる個体がいるものだが、この種にはそのような行動は全く見られなかった。
後日調べてみると、クチナガオオアブラムシは自分の体長を超えるような長さの口吻(口)を持つそうだ。幹から樹液を吸うと考えると長い口吻が必要なのは確かにそうだな、と思う。いくらつついても頭を中心にして動き、決して幹から離れなかったのはこれが理由なのだろう。
口が長すぎて幹から離れられないのだとしたら、つまりは外敵に襲われても他のアブラムシのように落下したり歩いたりして逃げることができないということになる。もしもアリの庇護がなければテントウムシなどに容易に捕食されてしまうのではないかと思う。

クヌギの幹をくまなく見てみたが、アブラムシはクロクサアリがいる場所にしか見られなかった。もしかすると、アリがいない場所にもいたのかもしれないが、その数はかなり少ないのだと思う。 クロクサアリにとってアブラムシは重要な相手(エサをもたらす)だが、アブラムシなしでも他に様々なエサを食べることができるはずだ。一方、クチナガオオアブラムシはアリの保護なしでは恐らく天敵に対してあまりに無防備である。ほぼ完全にアリに生活を依存していると言っていいのかもしれない。 長い口吻を持つことで、普通のアブラムシには困難な樹木の幹からの吸汁ができるようになった代わりに、アリなしでは生きられなくなってしまったらしい不思議なアブラムシである。


追記
後日に幹から離れたアブラムシを見つけたので別記事にしました。よろしければ見てください
こちら

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2012年10月22日月曜日

クヌギハケタマフシの生活史(自身の備忘録を兼ねて)

先日、虫こぶの一種のクヌギハケタマフシを紹介したが、日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)に詳しく解説があったのでまとめてみる。

クヌギハケタマフシは、クヌギハケタマバチNeuroterus vonkuenburgi Dettmer(1934)というタマバチ(小型のハチの一種)によってクヌギの葉裏に作られる虫えいである。ただし、クヌギハオオケタマフシという酷似した種類があるので同定には注意を要する。(正直、僕が見つけたのがどちらなのかは分からないです・・・)
形状はほぼ球形、上方に向かってわずかに細くなり、長短に凹みがある。表面には白色微毛、直径8mm、幼虫室の直径2.5mm。→(僕が虫こぶを割って出てきた繭のようなものは恐らくこの幼虫室である。)


このクヌギハケタマフシの生態は随分と変わっている。
クヌギハケタマフシクヌギハケタマバチの単性世代に形成されるもので、両性世代に形成されるものはクヌギハナカイメンフシという全く異なった見た目のものであるらしい。ちなみに、両性世代のクヌギハケタマバチはクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるからややこしい。
つまり、Neuroterus vonkuenburgi というタマバチは、単性世代はクヌギハケタマバチと呼ばれ、両性世代はクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるということである。

詳しく説明すると・・・

・9月下旬ごろから落下する虫えい(クヌギハケタマフシ)の内部で、11月にタマバチは羽化する。(和名を使うとややこしいのでタマバチで統一する。)
・虫えい内で越冬したタマバチは翌3月に出現、クヌギの花芽に産卵する。ちなみに、この時羽化するのはメスだけで、交尾を経ず産卵を行う。そのため、単性世代と呼ばれる。
・萌芽と同時に雄花に虫えいが出現する。(クヌギハナカイメンフシ)
・5月下旬~6月上旬に虫えいからタマバチが羽化する。この時は雌雄両方が羽化し、交尾を経てクヌギの若葉の裏面に産卵する。そのため、両性世代と呼ばれる。
・7月中旬ごろから葉裏に虫えい(クヌギハケタマフシ)が出現する。

と、いうことになる。
同じタマバチによって、2種類の虫こぶが作られるというわけだ。図鑑によれば、本種に限らずタマバチのかなりの種が時期によって単性世代、両性世代を持ち、異なる虫こぶを形成するとのことである。


追記
関連する記事を書いているので、リンクを貼ります。よければご覧下さい。
「クヌギハケタマフシ」 (2012年10月)
「虫こぶからハチが羽化しました(クヌギハケタマバチ?)」 (2012年11月)
「クヌギハケタマフシから羽化したハチ(その2)」 (2013年4月)

参考
日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)

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2012年10月17日水曜日

クヌギハケタマフシ


10月11日
大学構内のクヌギの下に大量に落ちていた。クヌギに見られる虫こぶは何種類かあるそうだが、特徴からしてクヌギハケタマフシだと思う。

クヌギハケタマフシは、クヌギハケタマバチという小さなハチによって形成されるもの。大きさは5mm~8mm位のほぼ球形で、一か所がへこんでいる。ピンク色をして、全体に産毛が密生している。
元はクヌギの葉に付いているものだが、この時期になると自然に落下するらしい。虫こぶはいつまでも葉っぱにくっついているイメージがあるが、このタマバチの仲間の虫こぶは落下する性質があるのだろうか。そして、葉っぱから外れることでどのようなメリットがあるのだろうか。気になる。

一つを割ってみると、中から幼虫が出てきた。丸まっていてよく分からないが、体長は3mmくらいのようだ。


慎重に割ったら、今度は繭と思われるものが出てきた。これも大きさは3mm程度。中には幼虫が入っているのだろう。随分と硬質で、しかしみずみずしさのある繭である。恐らく、タマバチの幼虫が自ら作り出したのではなく、虫こぶの組織の一部なのではないかと思う。

いくつかを容器に保管してみた。果たして、うまく羽化してくれるのだろうか。



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2012年10月1日月曜日

迎賓館前にてヤマトタマムシ


9月29日 迎賓館赤坂離宮の目の前の道路にヤマトタマムシが転がっていた。既に死んでいた。 近くにはエノキがあったり、都心にしては比較的緑の多い場所である。

迎賓館前のユリノキ並木
環境さえ整っていれば、東京のど真ん中でも見られるようだ。何だかうれしくなった。









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