2019年9月20日金曜日

羽後三崎のタブノキ林、エゾイタヤ‐ケヤキ林

9月中旬

羽後三崎の常緑林。直径70 cm前後のタブノキが林立。


山形、秋田県境に位置する羽後三崎(灯台名などは三"埼"と表記)を訪れた。鳥海山からの溶岩が海に達し形成された岩礁海岸である。

当地の気候は対馬海流の影響により、東北地方日本海側でもっとも温暖になっている。最寄りのアメダス(にかほ)における1月、2月の月平均はそれぞれ2.2℃と2.3℃。

植生配分を大まかに説明すると、一番海側にススキやオオヨモギ、スカシユリなどから構成される草原が発達し、その背後にエゾイタヤ、ケヤキ、カシワなどで構成される落葉林が成立する。そして、海風が遮られる風背地にはタブノキ1種が優占する常緑林が成立する。




タブノキの分布は青森県深浦町に達する(環境庁 1988)が、まとまった群落としては日本最北にあたるらしい(東北森林管理局/タブノキ)。

カシワQuercus dentata (Fagaceae ブナ科)

海岸林の最前線を占めていた。

エゾイタヤAcer pictum subsp. mono (Sapindaceae ムクロジ科)とケヤキZelkova serrata (Ulmaceae ニレ科)からなる林。
植物社会学的にはエゾイタヤ‐ケヤキ群集、あるいはエゾイタヤ‐シナノキ群集に位置づけられると思われる。
高木層の高さは10 m前後。亜高木層や低木層にはマユミやヤマグワ、ハシドイ、チシマザサなどのほか、常緑林の構成種であるタブノキ、ヤブツバキもみられた。

タブノキMachilus thunbergii (Lauraceae クスノキ科)が優占する常緑林。植物社会学的にはイノデ‐タブ群集に当たり、日本の常緑広葉樹林としてはもっとも北に達している。

高木層の高さは15 m前後で、タブノキ1種で構成される。亜高木層ではヤブツバキが、低木層ではウリノキが優占していた。
草本層にはジュウモンジシダやタツノヒゲ、タブノキの稚樹などがみられた。
常緑広葉樹林を特徴づける種は少なく、低木層以下はむしろ冷温帯の森林との共通性が高いようだ。

低木層と草本層の様子。
高密度で生えるタブノキの稚樹。
太平洋側の北限に近い唐桑半島(宮城県気仙沼市)でも似たような様相だった。

林縁に生えるカラスザンショウZanthoxylum ailanthoides (Rutaceae ミカン科)

林縁ではカラスザンショウやアカメガシワMallotus japonicusなど、暖温帯の林縁を特徴づける樹木がみられた。






<参考>
・環境庁 1988.  第3回自然環境保全基礎調査 植生調査報告書(秋田県).
・東北森林管理局webサイト 管内の樹木図鑑 タブノキ.(http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/sidou/jumoku/shubetu/tabu.html)2019年9月閲覧
・植物和名ー学名インデックス YList (http://ylist.info/index.html)2019年9月閲覧