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2021年4月27日火曜日

2021年4月7日、11日 吉井川沿い(和気町)

 

4月7日、11日

岡山三大河川の一つである吉井川(和気町内)を訪れた。11日が職場の観察会当日で、7日はその下見だった。

土手にはカンサイタンポポTaraxacum japonicum とキビシロタンポポTaraxacum hideoi (ともにキク科タンポポ属)が生えていた。カンサイタンポポの個体数は圧倒的が多く、外来タンポポも少なかった。

近くにはカナビキソウThesium chinense(ビャクダン科カナビキソウ属)も生えていた。

この場所で見られた主な植物は、アオスゲ、メアオスゲ、スズメノヤリ、フシゲチガヤ、シバ、ヤハズエンドウ、カスマグサ、スズメノエンドウ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、スイバ、スミレ、ヘラオオバコ、オオイヌノフグリ、オオキンケイギク、ヨモギ、ノヂシャなど。

ノニガナIxeris polycephala
(キク科ノニガナ属)

湿地生の植物だと思うが、ここでは道路のすき間にばかり生えていて、河原ではほとんど見かけなかった。

土手の下部は湿り気があり、オドリコソウLamium album var. barbatum(シソ科オドリコソウ属)やイタドリ、ハナウドといった中~大型の多年草が生えていた。


ハナウドHeracleum sphondylium var. nipponicum
(セリ科ハナウド属)

岡山では「うどな」と呼び、山菜にするとのこと。

河原に降りた。河川中流域らしく石河原である。


石河原はさまざまな岩石で構成されている。左上は流紋岩で他は(確か)花崗岩。ともに観察地周辺に分布し、山々を構成している。

変斑レイ岩(おそらく)。観察地よりも上流(北)に分布し、河川の運搬でここまでたどり着いたのだそうだ。変斑レイ岩の他にも、上流から運ばれてきた様々な岩石を見ることができた。



川岸には一年草や越年草が多くみられた。
これはヤナギタデPersicaria hydropiper(タデ科イヌタデ属)。

ミゾコウジュSalvia plebeia
(シソ科アキギリ属)

他に見られた主な植物はヤマアゼスゲ、ヨシ、ツルヨシ、クサヨシ、ヤナギ属の一種、ナヨクサフジ、オヘビイチゴ、トキワハゼ、ツボスミレ、メリケンムグラ、メハジキ、マツバウンラン、カラシナなど。
流れがゆるやかな場所では、外来種のコゴメイJuncus polyanthemus(イグサ科イグサ属)が群落を作っていた。

対岸には河原はほとんどなく、川岸まで落葉樹林が成立している。美しい新緑はエノキCeltis sinensis(アサ科エノキ属)で、展葉していない高木は恐らくケヤキZelkova serrata(ニレ科ケヤキ属)。

ニホンアマガエル。

観察会は動物、植物、地質の合同だったので、色々な興味を持つ方たちと楽しい自然観察ができた。

ヤナギハムシ。

コオニヤンマの幼虫(ヤゴ)。

水中や水際ではヒラタドロムシの仲間の幼虫、トビケラやカワゲラ、カゲロウの幼虫や成虫を観察できた。

2017年8月27日日曜日

サリーナ島 Monte Fossa delle Felciの植生・植物

6月27日

エオリア諸島第2の面積と人口を持つサリーナ島(Salina)。島の名前は南東部にある塩湖に由来する。

島はMonte Fossa delle Felci (標高968 m、以下Monte Fossa)とMonte dei Porri(標高886 m)の2つの火山で構成され、うちMonte Fossaはエオリア諸島最高峰である。2火山が並ぶ姿は日本の伊豆諸島の八丈島を彷彿とさせる。
両火山は一万年以上にわたって噴火活動を休止しており土壌が発達している。さらに、高標高域では乾季でも雲霧がかかりやすく水分条件が比較的良好なようだ。これらの理由からサリーナ島には諸島内で最も発達した森林植生がみられる。

今回、サリーナ島に滞在できるのは5時間程度に限られていたため、Monte Fossaのみ登った。

島内最大の集落Santa Marina Salinaで水や昼食を買い、登山口を目指す。
Monte Fossa登山で一般に知られるのは島中部の教会(Valdichiesa Church)の脇から登るルート。Santa Marina側からの登山口はガイドブックに載っていなかったため、インフォメーションセンターで道を教えてもらった。


道中で地元の人にもルートを教えてもらい(英語が堪能な方だった)、無事に登山口に到着。

登山口から1 km強は砂利道が続く。

道端に咲いていたDelphinium sp.(キンポウゲ科 Ranunculaceae)。

砂利道の終点から左に曲がり、本格的な山道に入った。

道沿いには樹高3~5 mの低木林が広がる。

Erica arborea L.? (ツツジ科 Ericaceae)
低木林の主要構成種。

右側に写る複葉の樹木はトネリコの仲間Fraxinus sp. (モクセイ科 Oleaceae)で、本種もよくみられた。

イチゴノキArbutus unedo L. (ツツジ科 Ericaceae)

Erica arborea?と並んでよく見かけたのがイチゴノキ。日本でも庭園樹として近年利用される。
Ericaよりも低木の性質が強いらしく、Ericaが高木層、イチゴノキが低木層の林分もみられた。

Sorbus domestica L. (バラ科 Rosaceae)

日本のナナカマドと同属だが果実が大きく径2~3 cmもある。

尾根部は乾燥が著しく、樹高1.5 m以下の灌木林がみられた。主要構成種はErica arborea?やCistus sp. (ハンニチバナ科 Cistaceae)、Daphne gnidium L.(ジンチョウゲ科Thymelaeaceae)など。

Daphne gnidium
ジンチョウゲ属

ジンチョウゲの仲間らしく、花には芳香があった。

ワラビPteridium aquilinum (コバノイシカグマ科Dennstaedtiaceae)

日本でもおなじみのワラビは分布域が広く、イタリアにも生えている。

標高600 mを超える辺りから木々の樹高が6~7 mと高くなった。
森林の主要構成種は相変わらずErica arborea?とイチゴノキだが、つる植物や林床の草本が豊富だ。雲霧により水分条件が良好なためだろうか。

Dioscorea communis (L.) Caddick & Wilkin (ヤマノイモ科 Dioscoreaceae)

液果を付ける変わったヤマノイモの仲間で、ヨーロッパに広く分布。Tamus属に分類する説もある。





本種の他に生えていたつる植物は、Rubia sp.? (アカネ科 Rubiaceae)、Smilax aspera (サルトリイバラ科 Smilacaceae)、Lonicera sp. (スイカズラ科 Caprifoliaceae)など。

Blackstonia perfoliata (L.) Huds. (リンドウ科 Gentianaceae)

林床によく見られた草本。日本でみられるリンドウ科の植物とは大きく異なる姿(無柄の葉が対に付く点は似てるかも)で、当初は何科かすら見当がつかなかった。

Luzula sp. (イグサ科 Juncaceae、中央)と、Viola sp. (スミレ科 Violaceae、下のハート型の葉)

Luzula(スズメノヤリ属)の草本は、シチリア本土でも山地に上がると生育していた。

枝に着生した地衣類が雲霧のかかりやすさを物語る。

標高750~900 m辺りでは白い幹の目立つPopulus tremula L.、Alnus cordata (Loisel.) Duby、ヨーロッパグリCastanea sativa Mill.が高木層(約10~15 m)を形成し、亜高木層がErica arborea?とイチゴノキからなる森林が発達していた。



これらの種のうち、Alnus cordataは元々エオリア諸島に分布せず、植林のために持ち込まれた(ウェブサイト参照)。他2種も植栽由来のように思われたが確実な情報に当たれていない。
山頂付近の森林は植林によって林相が変化していると思われるため、本来の植生がどのようなものであったかを想像するのは難しい。

Populus tremula (ヤナギ科 Salicaceae)

葉が落ちていた。日本のヤマナラシに少し似ている。

Alnus cordata (カバノキ科 Betulaceae)













山頂付近(標高約930 m)に着いた。眼下にはサリーナ島の名の由来である塩湖がを望む。

山頂付近の尾根には低木林が広がる。構成種にはワラビやErica arborea?、Cistus属など低標高域の灌木林との共通種も多いが、植生高は2 m前後に達し、同種でも葉サイズが大きい。

レダマSpartium junceum L.(マメ科 Fabaceae)

エニシダの仲間Cytisus sp.も生育していた。

Cistus sp. (Cistaceae ハンニチバナ科)

Cistusは写真の白花と桃色花の2つがみられた。別種だと思うが種名は確認できていない。

Epilobium sp. (アカバナ科 Onagraceae)

アカバナの仲間も生育していた。アカバナ属の多くは湿性地を好んで生えるが、本種も山頂付近の水分条件の良好さを示しているのだろうか。

Centaurium sp. (リンドウ科 Gentianaceae)

林内から山頂付近の裸地に至るまで、あちこちに生えていた。Centaurium属は日本にもベニバナセンブリとハナハマセンブリが帰化し、そのどちらかかもしれない。

避難小屋隣のベンチで昼食。

山頂(火口縁)を歩くと眺望の良い場所に出られるらしかったが、船の出航時間の関係で、食後はやむなく下山した。





気温30℃を超える中での高低差約900 mの登山はかなりハードで、持参した2Lの水は登山口到着前に底をついた。


<参考サイト>
・Flora Italiana, Checklist Flora per Regione
http://luirig.altervista.org/flora/taxa/regioni.php (2017年8月閲覧)
・World Helitage Datasheet, ISOLE EOLIE (aeolian islands)
https://yichuans.github.io/datasheet/output/site/isole-eolie-aeolian-islands/ (2017年8月閲覧)

2017年7月31日月曜日

ブルカノ島 Fossa di Vulcanoの植生

6月26日

リパリ島からハイドロフォイルに10分ほど乗ると、エオリア諸島最南のブルカノ島(Vulcano)に着く。
ブルカノ島にはいくつかの火山があるが、港の南にあるのがブルカノ山(Fossa di Vulcano)。標高は391 mに過ぎないが、異様ともいえるほどの存在感を放っている。直近の噴火は1888年から1890年にかけておこった。

港から舗装路を20分ほど歩くと登山口に到着。

看板には噴気孔に近づくな、と書いてある。麓までかすかに火山ガス(硫化水素)の匂いが漂ってくる。

山麓から標高150 m付近には、Genista sp. ?(マメ科ヒトツバエニシダ属?)が優占し、Cistus sp. (ハンニチバナ科ゴジアオイ属)やキク科の?木本が混生する低木群落が広がる。

ストロンボリ島の標高約250 m以上とよく似た植生。

Genista sp. ?

キク科?の低木(Asteraceae sp. ?)

確認中。

低木群落は越年草を中心とした草本もまじえている。
日本でもおなじみのコバンソウBriza maxima L. (イネ科コバンソウ属)もみられた。

Citrullus colocynthis (L.) Schrad.(ウリ科スイカ属)は緑を保っていた数少ない草本の一つ。

スイカのミニチュア版のような実を付けていた。

標高が150 mあたりからは木本が姿を消し、荒涼とした風景になった。
灰色の部分は火山灰や火山礫(レキ)で覆われている。
しかしながら、岩盤が露出している場所では標高200 m付近まで木本が生育していた。
火山灰・礫で覆われた場所と比較すると基盤が安定しており、水も得やすいことから木本が生育できるのかもしれない。
Gran Cratereと呼ばれる火口の縁に到着。あちらこちらから噴気が上がり、硫黄の結晶が析出して黄色く見える。

道を外れると、強い硫化水素臭を感じることもあった。

山頂周辺は一見すると無植生に見えるが、小型の越年草が群落を作っている。

Aira sp.(イネ科ヌカススキ属)

本種が優占していた。
日本にはヌカススキとハナヌカススキが帰化しているが、そのどちらかかもしれない。

キク科の越年草?(Asteraceae sp.2 ?)

キク科と思われる小型の草本。これも多く生えていた。

山頂付近は越年草の天下となっていたが、木本もわずかに定着し始めていた。
写真はCistus sp.

Genista sp. ?もみられた。












噴火から130年弱がたっているにも関わらず、ブルカノでの植生遷移はまだまだ初期段階で、日本の火山と比較すると遷移のスピードはかなり遅いように思えた。例えば、日本の桜島では大正噴火で形成された溶岩上に、既にクロマツ林が成立している。

ブルカノは地中海性気候下に位置することから夏期の乾燥ストレスが強く、木本の侵入が容易ではないのだろう。噴出し続ける火山ガスや地熱も何らかの影響を与えているのかもしれない。

山頂付近に落ちていたヤギの糞。

不毛に見えるこの場所でたくましく生活しているようだ。
山頂から北側を向くと、リパリ島、サリーナ島、パナレア島が見えた。








■参考
http://volcano.oregonstate.edu/oldroot/volcanoes/volc_images/europe_west_asia/vulcano.html(2017年7月閲覧)