2017年8月27日日曜日

サリーナ島 Monte Fossa delle Felciの植生・植物

6月27日

エオリア諸島第2の面積と人口を持つサリーナ島(Salina)。島の名前は南東部にある塩湖に由来する。

島はMonte Fossa delle Felci (標高968 m、以下Monte Fossa)とMonte dei Porri(標高886 m)の2つの火山で構成され、うちMonte Fossaはエオリア諸島最高峰である。2火山が並ぶ姿は日本の伊豆諸島の八丈島を彷彿とさせる。
両火山は一万年以上にわたって噴火活動を休止しており土壌が発達している。さらに、高標高域では乾季でも雲霧がかかりやすく水分条件が比較的良好なようだ。これらの理由からサリーナ島には諸島内で最も発達した森林植生がみられる。

今回、サリーナ島に滞在できるのは5時間程度に限られていたため、Monte Fossaのみ登った。

島内最大の集落Santa Marina Salinaで水や昼食を買い、登山口を目指す。
Monte Fossa登山で一般に知られるのは島中部の教会(Valdichiesa Church)の脇から登るルート。Santa Marina側からの登山口はガイドブックに載っていなかったため、インフォメーションセンターで道を教えてもらった。


道中で地元の人にもルートを教えてもらい(英語が堪能な方だった)、無事に登山口に到着。

登山口から1 km強は砂利道が続く。

道端に咲いていたDelphinium sp.(キンポウゲ科 Ranunculaceae)。

砂利道の終点から左に曲がり、本格的な山道に入った。

道沿いには樹高3~5 mの低木林が広がる。

Erica arborea L.? (ツツジ科 Ericaceae)
低木林の主要構成種。

右側に写る複葉の樹木はトネリコの仲間Fraxinus sp. (モクセイ科 Oleaceae)で、本種もよくみられた。

イチゴノキArbutus unedo L. (ツツジ科 Ericaceae)

Erica arborea?と並んでよく見かけたのがイチゴノキ。日本でも庭園樹として近年利用される。
Ericaよりも低木の性質が強いらしく、Ericaが高木層、イチゴノキが低木層の林分もみられた。

Sorbus domestica L. (バラ科 Rosaceae)

日本のナナカマドと同属だが果実が大きく径2~3 cmもある。

尾根部は乾燥が著しく、樹高1.5 m以下の灌木林がみられた。主要構成種はErica arborea?やCistus sp. (ハンニチバナ科 Cistaceae)、Daphne gnidium L.(ジンチョウゲ科Thymelaeaceae)など。

Daphne gnidium
ジンチョウゲ属

ジンチョウゲの仲間らしく、花には芳香があった。

ワラビPteridium aquilinum (コバノイシカグマ科Dennstaedtiaceae)

日本でもおなじみのワラビは分布域が広く、イタリアにも生えている。

標高600 mを超える辺りから木々の樹高が6~7 mと高くなった。
森林の主要構成種は相変わらずErica arborea?とイチゴノキだが、つる植物や林床の草本が豊富だ。雲霧により水分条件が良好なためだろうか。

Dioscorea communis (L.) Caddick & Wilkin (ヤマノイモ科 Dioscoreaceae)

液果を付ける変わったヤマノイモの仲間で、ヨーロッパに広く分布。Tamus属に分類する説もある。





本種の他に生えていたつる植物は、Rubia sp.? (アカネ科 Rubiaceae)、Smilax aspera (サルトリイバラ科 Smilacaceae)、Lonicera sp. (スイカズラ科 Caprifoliaceae)など。

Blackstonia perfoliata (L.) Huds. (リンドウ科 Gentianaceae)

林床によく見られた草本。日本でみられるリンドウ科の植物とは大きく異なる姿(無柄の葉が対に付く点は似てるかも)で、当初は何科かすら見当がつかなかった。

Luzula sp. (イグサ科 Juncaceae、中央)と、Viola sp. (スミレ科 Violaceae、下のハート型の葉)

Luzula(スズメノヤリ属)の草本は、シチリア本土でも山地に上がると生育していた。

枝に着生した地衣類が雲霧のかかりやすさを物語る。

標高750~900 m辺りでは白い幹の目立つPopulus tremula L.、Alnus cordata (Loisel.) Duby、ヨーロッパグリCastanea sativa Mill.が高木層(約10~15 m)を形成し、亜高木層がErica arborea?とイチゴノキからなる森林が発達していた。



これらの種のうち、Alnus cordataは元々エオリア諸島に分布せず、植林のために持ち込まれた(ウェブサイト参照)。他2種も植栽由来のように思われたが確実な情報に当たれていない。
山頂付近の森林は植林によって林相が変化していると思われるため、本来の植生がどのようなものであったかを想像するのは難しい。

Populus tremula (ヤナギ科 Salicaceae)

葉が落ちていた。日本のヤマナラシに少し似ている。

Alnus cordata (カバノキ科 Betulaceae)













山頂付近(標高約930 m)に着いた。眼下にはサリーナ島の名の由来である塩湖がを望む。

山頂付近の尾根には低木林が広がる。構成種にはワラビやErica arborea?、Cistus属など低標高域の灌木林との共通種も多いが、植生高は2 m前後に達し、同種でも葉サイズが大きい。

レダマSpartium junceum L.(マメ科 Fabaceae)

エニシダの仲間Cytisus sp.も生育していた。

Cistus sp. (Cistaceae ハンニチバナ科)

Cistusは写真の白花と桃色花の2つがみられた。別種だと思うが種名は確認できていない。

Epilobium sp. (アカバナ科 Onagraceae)

アカバナの仲間も生育していた。アカバナ属の多くは湿性地を好んで生えるが、本種も山頂付近の水分条件の良好さを示しているのだろうか。

Centaurium sp. (リンドウ科 Gentianaceae)

林内から山頂付近の裸地に至るまで、あちこちに生えていた。Centaurium属は日本にもベニバナセンブリとハナハマセンブリが帰化し、そのどちらかかもしれない。

避難小屋隣のベンチで昼食。

山頂(火口縁)を歩くと眺望の良い場所に出られるらしかったが、船の出航時間の関係で、食後はやむなく下山した。





気温30℃を超える中での高低差約900 mの登山はかなりハードで、持参した2Lの水は登山口到着前に底をついた。


<参考サイト>
・Flora Italiana, Checklist Flora per Regione
http://luirig.altervista.org/flora/taxa/regioni.php (2017年8月閲覧)
・World Helitage Datasheet, ISOLE EOLIE (aeolian islands)
https://yichuans.github.io/datasheet/output/site/isole-eolie-aeolian-islands/ (2017年8月閲覧)

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