2016年11月18日金曜日

白浜神社のアオギリ群落 (静岡県下田市)

11月中旬


伊豆半島南部の下田市に位置する、白浜神社(正式名:伊古奈比咩命神社 白濱神社とも)を訪れた。
この神社の境内には国指定天然記念物の「青桐(アオギリ)樹林」がある。

境内の大部分は、スダジイやイヌマキ、ヤブツバキなどを主体とする常緑広葉樹林で覆われている。林床にはホソバカナワラビやフウトウカズラが多い。

その一方で、落葉樹のアオギリが群落を形成している場所も多く見られた。



アオギリFirmiana simplex はアオイ科 (Malvaceae)の落葉高木。
街路樹や公園樹として植えられているのをよく見かける。

街路樹として用いられているのは中国産と思われるが、日本にも自生しているとされる。琉球植物誌(初島 1975)や千葉県植物誌((財)千葉県史料研究財団 編 2007)などを参考にすると、自生品は葉裏が無毛の品種「ケナシアオギリ」である。一方、中国産のアオギリの葉裏には毛が密生しているという。
また、宮崎(1991)によれば、日本におけるケナシアオギリの生育立地は、海岸の風衝低木林と考えられるという。

白浜神社のアオギリは確認した限りでは全てケナシ型であり、また立地は海岸近くの森林(但し、高木層は10 m以上に発達し、低木林ではない)である。とすると、自生個体群と判断してよいのだろうか。

ボート型の果実と種子。

実生も多く見られた。
暗い林床にも実生はあったものの、順調に成長している個体は林縁や道沿い、林冠ギャップといった明るい場所に集中しているように思われた。
そのような場所では先駆樹種のクサギやカラスザンショウなどと混生していることも多く、アオギリもこれらの種と類似した生態を持つのかもしれない。


参考
・(財)千葉県史料研究財団 編 2007. 千葉県の自然史 別編4 千葉県植物誌.
・初島住彦 1975. 琉球植物誌.
・宮崎 卓 1991. アオギリ雑考. FLORA KANAGAWA No.30: 302-303.









2016年10月15日土曜日

三浦半島で見つけたクサトベラとグンバイヒルガオ

10月14日 三浦半島某所

海岸で植物の調査をしていた時のこと。

砂浜のネコノシタ群落の中に、見慣れない植物を見つけた。

近づいてみると、驚いたことにクサトベラScaevola taccada(クサトベラ科 Goodeniaceae)だった。

クサトベラは南西諸島や小笠原諸島の海岸ではよく見られる低木だが、その北限は屋久島や種子島とされる。
今回見つけた個体は、黒潮に乗って流れ着いた種子が発芽したものだろう。背丈は約20 cmあった。

本種の記録は、私が少し調べた限りでは神奈川県はおろか本土4島のいずれでも確認できなかった。
神奈川県で生えるくらいなら、九州や四国、紀伊半島などで記録があってもよさそうなものだが、種子が漂着して発芽にこぎつけるのは難しいのだろうか。
もう少し文献を確認したら、何かしらの形で報告しようと思う。


クサトベラから少し離れた所にはグンバイヒルガオIpomoea pes-caprae(ヒルガオ科 Convolvulaceae)も生えていた。

グンバイヒルガオもやはり南方系の海岸植物で、神奈川県では定着(開花・結実)していない。しかし、神奈川を含む本土各地で実生が見つかっており、私も京都府で見たことがある(過去記事)。

クサトベラと比較すると、グンバイヒルガオの種子は発芽しやすいのだろうか。というよりも、南方系の海岸植物のうち、グンバイヒルガオのように頻繁に実生が確認される種の方が少なく、グンバイヒルガオが異端児のような気がする。

2016年9月16日金曜日

9月6日 浅間山公園

9月6日

久しぶりに、府中市の浅間山(せんげんやま)公園を訪れた。


ノガリヤス
Calamagrostis brachytricha (イネ科Poaceae

雑木林でよく見かけるイネ科草本。




イヌアワ
Setaria chondrachne(イネ科 Poaceae

見た目からはあまり想像が付かないが、エノコログサ(ネコジャラシ)と同属。
やや分布が局所的な種だと思うが、浅間山では多い。

ヒヨドリバナ
Eupatorium makinoi(キク科 Asteraceae

関西のものと比較するとやや間延びしているように感じた。ヒヨドリバナは種内に複数の異なる倍数体(2倍体とか4倍体とか)を含んでおり、これが形態の違いに影響している、というのをどこかで目にした気がするが、確認中。

シラヤマギク
Aster scaber(キク科 Asteraceae

関東の雑木林の常連。山地のススキ草原にもよく出現する。
キンミズヒキ
Agrimonia pilosa(バラ科 Rosaceae

林内の道ばたによく生える。果実上部には先端がカギ状に曲がったトゲが付き、これで動物にくっついて運ばれる。いわゆるひっつき虫の一種。

ゴンズイ
Euscaphis japonica(ミツバウツギ科 Staphyleaceae

赤色の果実と、中から顔をのぞかせる黒光りした種子の対比が美しい。

沖縄にも生育する南方系の落葉樹。実が付いていないと目立たないが、その気になって探すと林内に意外と生えていることに気がついた。

ウド
Aralia cordata(ウコギ科 Araliaceae

春の味覚としておなじみのウド。
ルリタテハ
Kaniska canace(タテハチョウ科)

近くに寄っても逃げなかった。









他に見かけたおもな植物

ケチヂミザサ、アブラススキ、アキノエノコログサ、ツユクサ、ヤマニガナ、サジガンクビソウ


植物の学名はYList(http://ylist.info/index.html)に、昆虫の学名は日本産昆虫学名和名辞書(http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/dji/index-j.html)に従った。







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2016年7月25日月曜日

和歌山にて海岸植物の観察

7月17日



和歌山県西部の海岸部を訪れた。

目的地は御坊(ごぼう)市のとある川の河口。

一番の目当てはハマボウ Hibiscus hamabo (アオイ科 Malvaceae)だった。

ハマボウは日本の神奈川~奄美大島と韓国の済州(チェジュ)島に分布する落葉低木。ほぼ日本固有の樹木である(分布域が日本+済州島の植物は他にもいくつかあったと思う)。北限は島根県の隠岐諸島である。


ハマボウの生育する地面。泥地だが石やレキが多い。



アイアシ Phacelurus latifolius (イネ科 Poaceae)も一緒に生えていた。
本種も河口の湿地でよく見られる植物だ。

周囲で目立っていた他の植物はヨシ、アキニレ、エノキなど。

ハマボウを見たあとはさらに南下し、白浜町の有名な観光地へ。

思いのほか沢山の植物を見ることができた。




ユウスゲ Hemerocallis citrina var. vespertina (ススキノキ科 Xanthorrhoeaceae)。

昼間にもかかわらずよく咲いていた。曇天だったからかもしれない。
紀伊半島の海岸部では、ハマカンゾウよりもユウスゲが優勢なのだろうか。

ヒトモトススキ Cladium jamaicense subsp. chinense (カヤツリグサ科 Cyperaceae)。

海岸部の湿地に生育する大型の草本。ここでは段丘上の窪地に群生していた。





ほかに確認したおもな植物。
草本
ヒメヤブラン、クサスギカズラ、ヤリテンツキ?、(ハチジョウ?)ススキ、アゼトウナ、ハマアザミ
木本
クロマツ、ウバメガシ、テリハノイバラ、シャリンバイ、ナワシログミ、トベラ、ハマヒサカキ


出かけに付き合ってくれた友人たちに感謝。






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2016年7月14日木曜日

サン・クリストバルの丘の植物と植生(Plants and vegetation of San Cristóbal Hill, Santiago, Chile)

6月22日

南米チリの首都サンティアゴに位置し、観光地として有名なサン・クリストバルの丘((英)San Cristóbal Hill, (西)Cerro San Cristóbal)に登った。

山麓から頂上へは、ケーブルカーを使って登った。

サン・クリストバルの丘の標高は880 mでサンティアゴ市街との比高は約300 m。
この日は晴天で、市街地のビル群とアンデス山脈の対比を楽しむことができた。









サン・クリストバルの丘は木々に広く覆われ、一見すると自然豊かに見えるが、残念ながらその構成種の大半が外来種のようだ。

外来種の優占ぶりは相当なもので、本来の植生がどのようなものであったかを想像することが難しいほどだった。チリの森林植生は、外来種の侵入に対してぜい弱なのだろうか。

Pinus radiata ?(Pinaceae マツ科)

北米原産のP. radiata(ラジアータマツ)と思われる。

Eucalyptus sp. (Myrtaceae フトモモ科)の優占林。

オーストラリア原産のユーカリの一種。
所によって優占林を形成しており、オーストラリアの森に迷い込んだような錯覚を覚えるほどだった。

Olea europaea (オリーブ)(Oleaceae モクセイ科)

おなじみのオリーブも広く野生化していた。
オリーブの原産地は地中海沿岸。サン・クリストバルの丘が位置するチリ中部は地中海性気候に区分されており、本種の生育に適した気候なのだろう。

Flaxinus sp. (Oleaceae モクセイ科)

トネリコ属の一種。ヨーロッパ原産のセイヨウトネリコF. excelsiorだろうか。

Ligustrum sp. (Oleaceae モクセイ科)

ネズミモチ属の一種。本属は南米には分布しないので、外来種であることは間違いない。
Pittosporum tobira (トベラ) (Pittosporaceae トベラ科)

日本からもトベラが侵入。

Pittosporum sp. (Pittosporaceae トベラ科)

トベラ科の一種。日本のトベラと異なり小高木になる。オーストラリア原産のトベラの一種か?

Pyracantha sp. (Rosaceae バラ科)

日本でも園芸利用され、ときに逸出しているピラカンサの一種。原産はアジア~ヨーロッパなので、チリでも外来種。

バラ科の一種。

何となく見覚えのある樹木だが、今のところ種類不明。

Acacia sp. (Fabaceae マメ科)

アカシア属の一種。オーストラリア原産と思われるが不明。


これらの樹木の他に、キヅタの仲間やニセアカシアが野生化しているのを確認した。









次は、チリの在来種(だと思う)樹木。

Acacia sp. ? (Fabaceae マメ科)

チリには在来種のアカシア属もいくつかあるらしい。左写真の木は、もしかするとそれらのうちの一つかもしれない。

Schinus sp. (Anacardiaceae ウルシ科)

Schinus属はチリにも自生する。サン・クリストバルの丘に生育する高木の中で数少ない在来種(恐らく)である。

Tristerix sp. (Loranthaceae オオバヤドリギ科)

半寄生性の樹木。様々な樹種に寄生しており、個体数は多かった。

本属はチリに自生しており、写真のものも在来種と思われる。





種類不明。


写真の樹木を含め、いくつかの木は科名すら分からなかった。それらの中には在来種も含まれているのかもしれない。








続いて草本。草本も多くが外来種と思われた。

Senecio tamoides ? (Asteraceae キク科)

S. tamoidesだとすれば南アフリカ原産。つる性のキクで、低木を覆っていた。

Aloe arborescens (キダチアロエ) (Asphodelaceae ツルボラン科)

キダチアロエは日本でも広く栽培される。原産地は南アフリカ。

なお、本種の科名をツルボランとしたが、これはAPGⅣに従っている。APGⅢではススキノキ科(Xanthorrhoeaceae)。

Fumaria sp. (Papaveraceae ケシ科)

本属の数種が日本にも帰化している(例えばカラクサケマン)。2年前に訪れた西オーストラリアでも広く帰化していた。

本属は地中海沿岸を原産とする種が多い。

Polygonum sp. (Polygonaceae タデ科)

ミチヤナギの仲間。いずれの種も北半球に分布するようなので、チリでは外来種である。

Lamium amplexicaule(ホトケノザ) 、
Stellaria sp. (ハコベ属の一種)、
Capsella sp. (ナズナ属の一種)

おなじみのホトケノザも生えていた。その周りにはハコベやナズナの仲間も生えていたが、種名は分からない。
3種ともチリでは外来種と考えられる。

Puya sp. (Bromeliaceae ブロメリア科)

ガレ場に生えていた。チリにはP. chilensisをはじめいくつかの種が自生しており、写真の種も在来種かもしれない。









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