2017年3月28日火曜日

沖縄島で観察したアカネ科樹木

3月上旬

とあるグループの観察会で沖縄島を訪れた。自身の頭の整理も兼ねて、観察した植物の一部を紹介する。

沖縄では本土で見かける機会の少ない分類群の樹木が多く見られるが、その一つにアカネ科が挙げられると思う。関東地方などではアリドオシを除くとヤエムグラやヘクソカズラ、アカネといった草本が目立つが、沖縄ではむしろ木本としての存在感が強い科である。
なお、本土においても暖地(紀伊半島、四国、九州など)に行けばクチナシやルリミノキやジュズネノキ、カギカズラ、シラタマカズラといったアカネ科樹木がかなり見られる。

シラタマカズラPsychotria serpens(ボチョウジ属)

本土でも紀伊半島南端や四国南部、九州には分布している。



ボチョウジPsychotria asiatica(ボチョウジ属)

ヒョウタンカズラCoptosapelta diffusa(ヒョウタンカズラ属)

果実がひょうたんに似た形をしているらしいが着いていなかった。

マルバルリミノキLasianthus attenuatus(ルリミノキ属)

沖縄を含む南西諸島ではルリミノキ属が多く見られる。マルバルリミノキは軟毛が密生すること、葉柄がほとんどないことなどが特徴。

タイワンルリミノキLasianthus hirsutus(ルリミノキ属)

マルバルリミノキに似るが、葉は明らかに大きく、ごわごわとした手触り。

リュウキュウルリミノキLasianthus fordii(ルリミノキ属)

オオシマアリドオシ(ビシンニゼジュズネノキ)Damnacanthus minutispinus

アリドオシD. indicusオオアリドオシD. indicus var. majorに似るが、葉腋のトゲがほとんど目立たない。なお、オオシマアリドオシはオオアリドオシやアリドオシと変種関係に当たる、とする説もある。現地で観察していると、これら3種の形態が連続的に見え、判別が難しかった。

コンロンカMussaenda parviflora(コンロンカ属)
美しい花をつけるつる性木本だが、時期柄葉っぱだけだった。托葉がよく目立つ。

アカミズキWendlandia formosana(アカミズキ属)

シロミミズDiplospora dubia(シロミミズ属)

新しい茎も白褐色を帯びるのが特徴の一つらしい。

ヘツカニガキSinoadina racemosa(ヘツカニガキ属)

落葉樹。ヘツカは鹿児島県の大隅半島の地名であり、本土でも暖地の一部に希産。

ヘツカニガキの葉











これらの他に、
リュウキュウアリドオシDamnacanthus biflorus
クチナシGardenia jasminoides
ハナガサノキGynochthodes umbellata
ケシンテンルリミノキLasianthus curtisii
ギョクシンカTarenna kotoensis var. gyokushinkwa

も見ることができたので、観察したアカネ科樹木は計16~18種となる。

学名および和名はY list(http://ylist.info/index.html)に従った。

2017年3月18日土曜日

ニュージーランドのマングローブ林

3月10日

ニュージーランド北島の海岸でマングローブ林を観察した。

北島北部~中部の沿岸部に見られるマングローブ林は、南半球で最も高緯度に成立しているものであり、総面積は約6,300haに達する(http://www.nrc.govt.nz/For-Schools/School-information-packs/Mangroves/ 参照 2017/03/11)。



なお、沖縄県のマングローブ林の総面積は約800ha
(http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/saisei/documents/saisei05.pdf 参照 2017/03/11)なので、それよりもはるかに大面積で成立していることになる。

マングローブ林を構成する樹木はヒルギダマシAvicennia marina subsp. australasica(キツネノマゴ科)ただ一種である。ヒルギダマシは日本でも先島諸島に分布しているが、それとは別亜種になるらしい。

日本においては最も温暖な先島諸島にしか分布しないヒルギダマシが、ニュージーランドでは南限のマングローブ林を構成するのは不思議な感じがするが、亜種間で耐寒性などの生理的特性に違いがあるのかもしれない。(なお、先島諸島よりも北に位置する沖縄島や屋我地島では本種が国内移入種として野生化している(大川・林2016)ことから、日本におけるヒルギダマシの自然分布の範囲はその耐寒性とは一致していないらしい。)

砂浜の至る所に漂着していたヒルギダマシの種子。胎生種子と呼ばれるもので、樹上で発芽したものが海流で散布される。

マングローブ林の後背地には草本からなる群落が成立していた。主要な構成種はアッケシソウ属のSalcocornia australisなど。

Salcocornia australis(ヒユ科アッケシソウ属)

Juncus sp.(イグサ科イグサ属)。

Plantago sp.(オオバコ科オオバコ属)
葉の形が独特なオオバコ。

他にもいくつかの植物を見かけたが、種判別はできていない。

隣接した干潟にはシギやチドリの仲間(オオソリハシシギ、ハシマガシチドリなど)が集まっていた。









<参考>
大川智史・林 将之 2016. ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑. 文一総合出版.
John Dawson & Rob Lucas 2012. Field Guide to New Zealand's Native Trees.  Craig Potton Publishing.
http://www.nrc.govt.nz/For-Schools/School-information-packs/Mangroves/ (参照 2017/03/11)
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/saisei/documents/saisei05.pdf (参照 2017/03/11)







2017年3月14日火曜日

ニュージーランドで見た蝉

3月上旬

ニュージーランド北島にて。
島の北西部の海岸部を訪れると、辺りはセミの声に包まれていた。

北島では、海岸部に限らず内陸の森林、さらには最大都市オークランドの市街地でも多くのセミの鳴き声を聞くことができた。聞いた限りでは比較的単調な鳴き方で、日本のセミで例えるとニイニイゼミやイワサキゼミなどに近い印象を受けた。

webサイト(リンク)を参考にすると、ニュージーランドには42種のセミが生息し、全て固有種らしい。日本のセミは35種1亜種とのこと(リンク先参照)なので、日本よりも種数が多いことになる。
一方、一段上の属レベルで見ると、日本のセミは15属に分類されるが、ニュージーランドでは5属と少ない。特に、Kikihia属は16種、Maoricicada属は19種を含み、属内での種分化が著しい。族レベルだと日本のセミは8族、ニュージーランドのセミは全てCicadettini(チッチゼミ)族に分類されるという。

族が共通し属のバリエーションが少ないためか、ニュージーランドのセミの多くは一見ではよく似ていて違いが分かりづらいと感じた。webサイトを軽く見ただけでは種判別ができなかった。

歩道の木柵で鳴いていた種。海岸沿いの低木林で鳴いていたのは、大半がこの種だと思われる。体サイズはツクツクボウシを一回り小さくしたくらい。

内陸のホテルの灯りに飛んできた種。体サイズは前種と同じくらい。胸部はミンミンゼミに似た配色で美しい。

森林内(Kauri Forest)の遊歩道で見かけた種。体サイズは前2種よりもかなり小さかった。全身が緑がかるのが特徴。




2017年2月18日土曜日

オオキバナカタバミの押し葉標本に生じた鱗茎

2月2日

藤沢市にて採集したオオキバナカタバミの押し葉標本(さく葉標本)。

オオキバナカタバミOxalis pes-capraeはカタバミ科の多年草で、南アフリカ原産の帰化植物。
関東南部では市街地や海岸部などでよく見かけ、近年分布が拡大している気がする。

乾燥気候の南アフリカを故郷とするためか、植物体は多肉質で乾きにくく、標本作りには約3週間を要した。

完成した標本の根元を見ると、大きさ1センチくらいのイモ(恐らく鱗茎)が3つ付いていた。
当初は付いていた記憶がないので、乾燥中に形成されたようだ。オオキバナカタバミがここまで生命力の強い植物だとは知らなかったので驚いた。


ほんの数週間で繁殖器官(鱗茎)を作れるということは、オオキバナカタバミは土中に残った茎の断片や、抜き取ったまま地面に放置した植物体などから増殖が可能ということになる。加えて本種は鑑賞目的で人為的に運ばれることもあるだろうし、今後も分布を拡大させるのではないかと思う。


2017年1月18日水曜日

ワダンのタネ

1月17日

房総半島南部にてワダンの花序を採取し、タネを観察した。

ワダンCrepidiastrum platyphyllumはキク科アゼトウナ属の多年草。
分布域はかなり狭く、関東南部沿岸(千葉県~神奈川県)と伊豆諸島に限られている。かつては静岡県伊豆半島にも分布していたらしい。



キク科に属する植物のタネ(正確には痩果と呼ばれる果実)には冠毛、いわゆる綿毛が付いていることが多い。この冠毛によってキク科植物のタネは風に乗り、遠方へ運ばれる。





ワダンのタネにも冠毛が付いているが、冠毛はタネ本体とほぼ同長なため滞空時間をかせぐには不十分なようだ。実際、高所から手を離すとかなりの速度で落下し、タンポポのタネがふわふわと落下するのとは随分異なっていた。

ワダンの分布域の狭さには、タネの風散布能力の低さが一因として関わっているのかもしれない。
もっとも、海水に浮かんだり動物に付着したりすることでタネが運ばれる可能性も考えられるので、風散布能力=ワダンの種子散布能力ではないだろう。



2016年10月 三浦半島にて

花期の姿。