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2019年4月7日日曜日

辻堂砂丘の跡地で海浜植物を探す

辻堂浄化センター付近
4月初旬

藤沢市の辻堂西海岸を訪れた。
辻堂団地や辻堂海浜公園、大学施設などで構成されるこのエリアは、藤沢市民の私にとってなじみ深い場所である。







現在の風景からは想像し難いが、ここには1960年代初頭まで東西約2 km、南北約1 kmに及ぶ砂丘が広がっていた。
首都圏にありながら開発をまぬがれ、広大な砂丘が維持されていたのには、戦前の日本海軍や、1945~59年の在日米軍による軍事演習場としての利用がかかわっている。


左の写真は、1961年から1963年の間に撮影された航空写真(地理院地図 https://maps.gsi.go.jp より)。
この時は、まだ砂丘が広がっていた。撮影直後の1964年(1963年?)には辻堂団地の建設などが始まり、砂丘は国道134号線より海側をのぞいてほぼ姿を消した。



砂丘時代から環境が大きく変化した当地にて、砂丘(砂浜)を生育地とする”海浜植物”を探して歩いた。


ハマヒルガオ Calystegia soldanella (L.) R.Br. (ヒルガオ科)

点々と見かけた。花がきれいな植物なので、植栽個体も含まれているかもしれない。

ハマアオスゲCarex fibrillosa Franch. et Sav. (カヤツリグサ科)

法面緑地や道路脇などに多く見られた。

テリハノイバラRosa luciae Rochebr. et Franch. ex Crèp. (バラ科)

道路脇やわずかに残った砂丘に生えていた。
海浜植物というわけではないが、砂丘後背にもよく生える。






なお、岡ほか(2009)によればカヤツリグサ科のビロードテンツキFimbristylis sericea (Poir.) R.Br.もあるらしいが、今回は見つけられなかった。


ハマアオスゲとビロードテンツキ、テリハノイバラは国道よりも海側の砂丘ではほとんどみられない(と思う)。これらの植物は砂の動きが少なく安定した立地(半安定帯や安定帯と呼ばれる)に特徴的であり、砂の動きが激しい海側の砂丘では生育が難しいのだろう。
すなわち、いくつかの海浜植物にとって砂丘跡地が重要な生育場所であるのかもしれない。

近いうちに詳しく調査してみたい。


<参考>
・Wikipedia 辻堂団地(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%BB%E5%A0%82%E5%9B%A3%E5%9C%B0)
・追憶。~私の辻堂団地~
(http://tsujidodanchi.web.fc2.com/index.html)
・Wikipedia 在日米海軍辻堂演習場
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E6%97%A5%E7%B1%B3%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E8%BE%BB%E5%A0%82%E6%BC%94%E7%BF%92%E5%A0%B4)
・植物和名-学名インデックス YList
(http://ylist.info/index.html)
・神奈川県レッドデータ生物報告書(1995年) 植物篇 ブロック別の概要
(http://nh.kanagawa-museum.jp/research/archives/reddata1995/plant_block.html)
・早坂大亮, 藤原一繪 2006.神奈川県湘南海岸に現存する海浜植物群落の成立要因. 日本緑化工学会誌, 32(2), 346-354.
・岡 浩平, 宮﨑真司, 小堀洋美 2009. 湘南海岸沿岸域における砂丘の開発が海浜植生に及ぼす影響. 景観生態学,14(2), 119-128.

2019年2月5日火曜日

2月5日 大学

大学構内にて。

中庭のアマナAmana edulisが出芽していた。

ノゲシSonchus oleracuesは昨年末頃から開花が続いている。
ここ数年は学内の草刈り管理が強いためか、一年草(越年草)が増えている気がする。



講義棟の壁にはフユシャクの一種が付いていた。


開花していた植物・・・コハコベ、ミドリハコベ、ナズナ、イヌコウジュ、ノゲシ

見かけた鳥・・・キジバト、ハシブトガラス、ムクドリ、ツグミ、スズメ

2018年12月18日火曜日

富士五湖の湖畔にて カヤツリスゲなど

2018年8月下旬

研究室メンバーの植物観察会で、富士五湖の河口湖を訪れた。










河口湖は富士河口湖町の市街地に接し、富士五湖中で最も開発が進んでいる感があるが、湖畔は様々な湿生植物の生育地になっている。中でも、日本での分布が北海道と富士五湖に限られるスゲ属の一種、カヤツリスゲ(国RLで絶滅危惧IB類)は貴重かつ特徴的な存在だろう。


湖畔で目立つ植生はヨシ群落。しかし、カヤツリグサ科の一年草などで構成される、植生高の低い植物群落も成立している。
この群落の立地は、ヨシ群落よりも湖面からの比高(湖抜?)が高く、増水時のみに水に浸かる環境であるようだ。波打ち際ゆえに冬場の波による攪乱や新たな土砂の堆積を受けやすく、一年草の生育に適した環境になっているのかもしれない。

メアゼテンツキFimbristylis velata R.Br.(カヤツリグサ科テンツキ属)

ウシノシッペイHemarthria sibirica (Gandog.) Ohwi
(イネ科ウシノシッペイ属)

ヒロハノコウガイゼキショウ?
(イグサ科イグサ属)

コウガイゼキショウの仲間は種同定に苦労する。
葉が多管質の種のようなので、ヒロハノコウガイゼキショウかコウガイゼキショウだろうか。

アオヒメタデ?
(タデ科イヌタデ属)

湿地生のイヌタデ属も、種数が多く種同定に悩むグループ。
標本は採ったが種同定はまだしていない。











様々な湿生植物が出現し、種同定に迷いながらも楽しい観察が続いたが、カヤツリスゲは見つからない。
河口湖とはいえ発見するのは難しいのだろうか、と思いながら、場所を移して探索を続けた。

しばらくして、土手の刈り取り草地とヨシ群落の境界付近でミコシガヤCarex neurocarpa Maxim.を見つけた。
ミコシガヤは河川氾濫原のように攪乱されやすい立地を好み、スゲ属の中ではやや雑草的な性格を持つ。短命な多年草と言われるカヤツリスゲと生育立地が似ているのでは、と考え、期待が高まる。

さらに探索すること約5分、ついにカヤツリスゲを見つけた。生育立地が似ていると予想したミコシガヤと一緒に生えていた。
帰路に着きかけていた同行者を呼び戻し、観察を再開した。

カヤツリスゲCarex bohemica Schreb.はカヤツリグサ科スゲ属の一種。和名が示すように、カヤツリグサ属を思わせる花序を持つ。シノニム(現在採用されていない学名)もCarex cyperoides Murrayであり、「カヤツリグサ(属)っぽいスゲ」の意味になる。
日本での分布は限られるがユーラシアに広く生育していて、学名の種小名「bomemica」はボヘミア(チェコ中西部)を指しているものと思われる。

図鑑で河口湖産のカヤツリスゲの写真を見て以来、実物をずっと見てみたいと思っていた。実物に対面でき、とても嬉しかった。

ちなみに、カヤツリスゲと混生していたミコシガヤの分布域は、日本の本州以南を含む東アジアに限られる。富士五湖は日本で、もしかすると世界で唯一、カヤツリスゲとミコシガヤが一緒に暮らす場所なのかもしれない。


<参考文献>
勝山輝男 2015. 日本のスゲ 増補改訂. 文一総合出版

2017年11月24日金曜日

江の島にて 秋の植物観察

11月19日

某植物観察グループの観察会で江の島を訪れた。
江の島は幼い頃から何度となく通ったなじみ深い場所だが、ここ最近は訪れる機会がなかった。今回は約3年ぶりの訪問である。

先月の台風21号の影響は未だ色濃く、岩屋への歩道が閉鎖されていたほか、海辺では大破したボートも見られた。

イソギクChrysanthemum pacificum NakaiとツワブキFarfugium japonicum (L.) Kitam.(ともにキク科)

「山二つ」の道脇で花期を迎えていた。

ハマコンギクAster microcephalus (Miq.) Franch. et Sav. var. littoricola (Kitam.) Nor.Tanaka(キク科)

ノコンギクの海岸型変種で、葉が丸みを帯びて分厚く、光沢がある。別名エノシマヨメナ。ノコンギクとの区別に迷う個体も多かった。

ホウライカズラGardneria nutans Siebold et Zucc.(マチン科)

神奈川県植物誌2001によれば、神奈川県内では沿海地を中心に点々と分布するらしい。江の島での自生地は限られる。

ユキヨモギ?Artemisia momiyamae Kitam. ?(キク科)

葉の表面に白毛を密生するヨモギを見つけた。葉の裂片が広いなどの特徴を併せ持っており、ユキヨモギではないかと思うが自信はない。ヨモギとの間に雑種のイナムラヨモギを形成することが知られていて、島内でもどっちつかずの個体を多く見かけた。

モチノキIlex integra Thunb.(モチノキ科)

江の島の照葉樹林の主要構成種の一つ。
今年は成り年なのか、多くの個体が果実をたわわに付けていた。

イブキ(ビャクシン)Juniperus chinensis L.(ヒノキ科)

南向きの斜面にぽつりと生えていた。

ハチジョウススキMiscanthus condensatus Hack.(イネ科)

①ススキよりも葉の幅が広い、②葉の裏面が白色を帯び、③葉の縁がざらつかない、④葉舌が無毛、などが特徴。①②の特徴を持つが葉の縁が明らかにざらつき葉舌が有毛、というものはエノシマススキ(ススキとの雑種)と判断される。
江の島で見られるのは大半がエノシマススキのようで、ハチジョウススキは少ない。島内をくまなく歩いたところ、東側の崖地や空き地の一角にて、ハチジョウススキの特徴を一通り有する個体が小集団を作っているのを見つけた。

ハマヒサカキEurya emarginata (Thunb.) Makino(サカキ科)

花期を迎えていた。花の香りは都市ガスなどに形容される独特なもので、私はたくあんなどの漬け物臭を連想する。島内に広く植栽されており、野生化した個体もみられた。






観察した植物一覧(計173種)

■シダ植物(24種)
アイアスカイノデ?、アスカイノデ、イヌワラビ、イノモトソウ、イワガネゼンマイ、オオイタチシダ、オオバノイノモトソウ、オニヤブソテツ、オリヅルシダ、カニクサ、クマワラビ、コバノヒノキシダ?、タチシノブ、タマシダ(植栽)、トラノオシダ、ノキシノブ、ヒトツバ、ヒメオニヤブソテツ、ベニシダ?、ホウライシダ、ホシダ、ホラシノブ、マメヅタ、ミゾシダ
■裸子植物(4種)
クロマツ、ビャクシン、イヌマキ(植栽)、イチョウ(植栽)
■被子植物(8+31+106=145種)
・ウマノスズクサ科:オオバウマノスズクサ
・クスノキ科:ヤブニッケイ、タブノキ、シロダモ、ハマビワ(植栽、逸出)
・コショウ科:フウトウカズラ
・ドクダミ科:ドクダミ
・マツブサ科:サネカズラ
(■単子葉植物)
・イヌサフラン科:ホウチャクソウ
・イネ科:ヤマカモジグサ、キボウシノ、メダケ、アズマネザサ、エノシマススキ、ハチジョウススキ、セイバンモロコシ(外)、チガヤ、ケチヂミザサ、ヨシ
・カヤツリグサ科:ヒメカンスゲ、ヒゲスゲ、ナキリスゲ、イソアオスゲ、ホンモンジスゲ?
・キジカクシ科:ヤブラン、ノシラン、ハラン、オモト(逸出)
・サトイモ科:ウラシマソウ
・サルトリイバラ科:トゲナシサルトリイバラ
・ツユクサ科:ツユクサ、ノハカタカラクサ(外)、ヤブミョウガ
・ヒガンバナ科:スイセン(植栽)
・ヤマノイモ科:ヤマノイモ、オニドコロ
・ユリ科:スカシユリ、シンテッポウユリ
・ラン科:ツチアケビ
(■真正双子葉)
・アオキ科:アオキ
・アカネ科:オオアリドオシ、ハマサオトメカズラ
・アサ科:エノキ
・アジサイ科:ガクアジサイ(植栽個体多い)、マルバウツギ
・アブラナ科:ハマダイコン
・イラクサ科:イラクサ、ラセイタソウ、アオカラムシ、アオミズ
・ウコギ科:カクレミノ、ヤツデ、ハリギリ、キヅタ、セイヨウキヅタ(逸出)、カミヤツデ(逸出)
・オオバコ科:トウオオバコ、オオイヌノフグリ(外)
・カタバミ科:オオキバナカタバミ(外)、イモカタバミ?(外)、カタバミ
・キキョウ科:ホタルブクロ
・キク科:ツワブキ、ハマコンギク(ノコンギク含む?)、タイアザミ(イガアザミ含む?)、オニタビラコ、イソギク、ユキヨモギ(イナムラヨモギ含む?)、ヨモギ、ノゲシ、ガザニア(植栽)、セイヨウタンポポ(外)、コセンダングサ(外)、ハキダメギク(外)、アキノノゲシ
・キブシ科:エノシマキブシ
・キョウチクトウ科:テイカカズラ
・キンポウゲ科:センニンソウ
・グミ科:オオバグミ、マルバアキグミ
・クワ科:ヤマグワ、ヒメコウゾ、イヌビワ、イタビカズラ、オオイタビ
・ケシ科:キケマン
・サカキ科:ヒサカキ、ハマヒサカキ(植栽、逸出)
・サクラソウ科:マンリョウ、ハマボッス
・シソ科:オオムラサキシキブ、トウバナ、シチヘンゲ(ランタナ、逸出)、クサギ
・スイカズラ科:ハコネウツギ、スイカズラ
・スミレ科:タチツボスミレ、アカネスミレ?
・セリ科:ボタンボウフウ、アシタバ、ハマウド、ツボクサ
・タデ科:イヌタデ、ミズヒキ、ツルソバ、スイバ属の一種
・ツヅラフジ科:アオツヅラフジ、オオツヅラフジ
・ハマミズナ科:ツルナ
・ツバキ科:ヤブツバキ、サザンカ(植栽)
・トウダイグサ科:アカメガシワ
・トベラ科:トベラ
・ナス科:クコ、イヌホオズキ?、タマサンゴ(逸出)、ヒヨドリジョウゴ
・ニシキギ科:マサキ
・ニレ科:ムクノキ
・バラ科:カジイチゴ、シャリンバイ、ソメイヨシノ(植栽)、ヘビイチゴorヤブヘビイチゴ
・ヒユ科:ホソバアカザ?
・ヒルガオ科:セイヨウノアサガオ(逸出)
・ブドウ科:エビヅル、ノブドウ、ツタ、ヤブガラシ
・ブナ科:コナラ、スダジイ、マテバシイ(植栽)
・ベンケイソウ科:タイトゴメ、オカタイトゴメ(外)
・マチン科:ホウライカズラ
・マメ科:クズ、ヤハズエンドウ、フジ
・ミカン科:カラスザンショウ
・モクセイ科:オオバイボタ
・ユキノシタ科:ユキノシタ
・ユズリハ科:ヒメユズリハ
・レンプクソウ科:ニワトコ

2017年9月23日土曜日

館山市にて ミズキンバイの観察

9月22日

館山市某所。
学生実習の一環で、用水路に生育する植物を観察した。

用水路を覆うように生えていたのはミズキンバイLudwigia peploides subsp. stipulacea(アカバナ科チョウジタデ属)。

チョウジタデは全国的に稀な種で、国のRDBで絶滅危惧Ⅱ類。千葉県内には点々と分布があるようだ。
隣にはタコノアシやガマも生えていた。

砂丘後背地にあたる低標高地には水田や休耕田がみられる。
少し前までは複数の休耕田でミズキンバイがみられたようで、僕が6年前に館山を訪れた際も休耕田で本種を観察している。しかし、現在では植生遷移が進んでヨシやガマ、シロバナサクラタデなどが繁茂し、ミズキンバイは地上からほとんど姿を消している(地中に埋土種子があるかもしれない)。


休耕田から流れ出る用水路は大型草本に覆われないため、ミズキンバイの生育地として辛うじて機能しているようだ。

ミズキンバイの浮葉。

ガの幼虫に激しく食害されているのが目立った。種類が分からなかったので、幼虫を飼育して確認してみようと思う。


2017年1月18日水曜日

ワダンのタネ

1月17日

房総半島南部にてワダンの花序を採取し、タネを観察した。

ワダンCrepidiastrum platyphyllumはキク科アゼトウナ属の多年草。
分布域はかなり狭く、関東南部沿岸(千葉県~神奈川県)と伊豆諸島に限られている。かつては静岡県伊豆半島にも分布していたらしい。



キク科に属する植物のタネ(正確には痩果と呼ばれる果実)には冠毛、いわゆる綿毛が付いていることが多い。この冠毛によってキク科植物のタネは風に乗り、遠方へ運ばれる。





ワダンのタネにも冠毛が付いているが、冠毛はタネ本体とほぼ同長なため滞空時間をかせぐには不十分なようだ。実際、高所から手を離すとかなりの速度で落下し、タンポポのタネがふわふわと落下するのとは随分異なっていた。

ワダンの分布域の狭さには、タネの風散布能力の低さが一因として関わっているのかもしれない。
もっとも、海水に浮かんだり動物に付着したりすることでタネが運ばれる可能性も考えられるので、風散布能力=ワダンの種子散布能力ではないだろう。



2016年10月 三浦半島にて

花期の姿。

2016年10月15日土曜日

三浦半島で見つけたクサトベラとグンバイヒルガオ

10月14日 三浦半島某所

海岸で植物の調査をしていた時のこと。

砂浜のネコノシタ群落の中に、見慣れない植物を見つけた。

近づいてみると、驚いたことにクサトベラScaevola taccada(クサトベラ科 Goodeniaceae)だった。

クサトベラは南西諸島や小笠原諸島の海岸ではよく見られる低木だが、その北限は屋久島や種子島とされる。
今回見つけた個体は、黒潮に乗って流れ着いた種子が発芽したものだろう。背丈は約20 cmあった。

本種の記録は、私が少し調べた限りでは神奈川県はおろか本土4島のいずれでも確認できなかった。
神奈川県で生えるくらいなら、九州や四国、紀伊半島などで記録があってもよさそうなものだが、種子が漂着して発芽にこぎつけるのは難しいのだろうか。
もう少し文献を確認したら、何かしらの形で報告しようと思う。


クサトベラから少し離れた所にはグンバイヒルガオIpomoea pes-caprae(ヒルガオ科 Convolvulaceae)も生えていた。

グンバイヒルガオもやはり南方系の海岸植物で、神奈川県では定着(開花・結実)していない。しかし、神奈川を含む本土各地で実生が見つかっており、私も京都府で見たことがある(過去記事)。

クサトベラと比較すると、グンバイヒルガオの種子は発芽しやすいのだろうか。というよりも、南方系の海岸植物のうち、グンバイヒルガオのように頻繁に実生が確認される種の方が少なく、グンバイヒルガオが異端児のような気がする。

追記(2019年3月)
神奈川自然誌資料(神奈川県立生命の星・地球博物館の紀要)に報告が載りました(http://nh.kanagawa-museum.jp/files/data/pdf/nhr/40/nhr40_019_023tetsu.pdf)。
「三浦市南部における3種の熱帯・亜熱帯性海岸植物の生育状況」というタイトルです。

2016年9月16日金曜日

9月6日 浅間山公園

9月6日

久しぶりに、府中市の浅間山(せんげんやま)公園を訪れた。


ノガリヤス
Calamagrostis brachytricha (イネ科Poaceae)

雑木林でよく見かけるイネ科草本。




イヌアワ
Setaria chondrachne(イネ科 Poaceae)

見た目からはあまり想像が付かないが、エノコログサ(ネコジャラシ)と同属。
やや分布が局所的な種だと思うが、浅間山では多い。

ヒヨドリバナ
Eupatorium makinoi(キク科 Asteraceae)

関西のものと比較するとやや間延びしているように感じた。ヒヨドリバナは種内に複数の異なる倍数体(2倍体とか4倍体とか)を含んでおり、これが形態の違いに影響している、というのをどこかで目にした気がするが、確認中。

シラヤマギク
Aster scaber(キク科 Asteraceae)

関東の雑木林の常連。山地のススキ草原にもよく出現する。
キンミズヒキ
Agrimonia pilosa(バラ科 Rosaceae)

林内の道ばたによく生える。果実上部には先端がカギ状に曲がったトゲが付き、これで動物にくっついて運ばれる。いわゆるひっつき虫の一種。

ゴンズイ
Euscaphis japonica(ミツバウツギ科 Staphyleaceae)

赤色の果実と、中から顔をのぞかせる黒光りした種子の対比が美しい。

沖縄にも生育する南方系の落葉樹。実が付いていないと目立たないが、その気になって探すと林内に意外と生えていることに気がついた。

ウド
Aralia cordata(ウコギ科 Araliaceae)

春の味覚としておなじみのウド。
ルリタテハ
Kaniska canace(タテハチョウ科)

近くに寄っても逃げなかった。









他に見かけたおもな植物

ケチヂミザサ、アブラススキ、アキノエノコログサ、ツユクサ、ヤマニガナ、サジガンクビソウ


植物の学名はYList(http://ylist.info/index.html)に、昆虫の学名は日本産昆虫学名和名辞書(http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/dji/index-j.html)に従った。







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2016年4月21日木曜日

三浦にて 海岸の植物観察

4月中旬。

三浦半島の海岸部を訪れた。


神奈川県東部に位置する三浦半島は、横浜や東京都心に近接しており宅地開発が著しい。また、三浦大根やキャベツ、スイカなどで知られるように、平坦地には耕作地も広がる。

その一方で、海岸部や丘陵地には今でもかろうじて自然が残っている。特に、海岸に広がる草原には房総半島と三浦半島、伊豆半島に固有の植物たちが生育しており、全国的に見ても興味深い場所である。


ヒロハクサフジ Vicia japonica var. japonica(マメ科)。

別名ハマクサフジのとおり、海岸部に主に生育する。北日本が分布の中心。
神奈川県では三浦半島に多く、他の地域ではほとんど見られない。
ハマエンドウLathyrus japonicus  subsp. japonicus(マメ科)と
オオジシバリIxeris japonica(キク科)。









ハマエンドウは、砂浜を主な生育立地とする海岸植物。園芸植物のスイートピーとは同属。
神奈川県植物誌によれば、神奈川県では「海岸線に分布し普通」らしい。しかし、湘南地域の海岸では開発が進み、絶滅状態の場所も多いと思う。三浦半島では今のところ健在のようである。

オオジシバリは内陸にも広く生育するが、海岸でもしばしば見かける。

ミヤコグサLotus corniculatus var. japonicus(マメ科)。

内陸にも生育するが、海岸付近の芝地などで特にまとまって生育しているように思う。


カントウタンポポTaraxacum platycarpum subsp. platycarpum(キク科)。

関東地方を中心に分布する在来タンポポ。近年はセイヨウタンポポに押され気味といわれるが、海岸近くの芝地では本種が優勢だった。



人里に生えるイメージが強いタンポポだが、海岸も案外重要な生育場所なのだろうか。

ところで、千葉県の海岸にはボウシュウタンポポなる種が生えているらしい(本種が記述されている千葉県植物誌を見ていないので、詳細は未把握)。
房総半島と三浦半島に共通して分布する植物は多いが、ボウシュウタンポポはひょっとしたら三浦にも生育しているのだろうか。

ヒゲスゲ Carex wahuensis(カヤツリグサ科)。

がっしりとした姿のスゲ。主に海岸部に生育し、三浦半島の岩礁海岸ではどこでも普通に見かけた。


トベラ Pittosporum tobira(トベラ科)。

海岸近くの低木林の主要構成種。
ありふれた樹木だが、花は美しく香りも良い。
ケナシヒメハギ Polygala japonica forma. nudicaulis(ヒメハギ科)。

ヒメハギは内陸に広く生育する多年草であり、ケナシヒメハギはこれの海岸型品種に当たる。茎葉が無毛で光沢を持つことが特徴である。




本品種は近田文弘氏によって近年記載されたものであり、神奈川県植物誌2001や主要な図鑑には名前が出ていない。
僕自身、最近入手した「伊豆須崎 海岸草木列伝」で初めてその存在を知った。

ところで、ケナシヒメハギを観察したのとは別の海岸では、茎に毛がある個体も見つけた。これはいわゆる”ふつうの”ヒメハギに当たるのだろうか。また、茎が有毛の個体でも葉がやや分厚く光沢を持っているものもあった。




ヒメハギとケナシヒメハギははっきりと二分できるものではなく、形態は連続的に変化しているのではないかと思う。


テリハニオイタチツボスミレ Viola obtusa var. nuda(スミレ科)?

テリハニオイタチツボスミレ(別名ケナシニオイタチツボスミレ)は、花柄に毛が無いことでふつうのニオイタチツボスミレと区別される。
今回観察した個体はいずれも花柄が無毛であり、テリハニオイタチツボにあたると思われた。

悩ましいことに、神奈川県植物誌2001によれば、ニオイタチツボスミレにはハマニオイタチツボスミレV. obtusa var. lucidaという海岸型の変種もあるらしい。ハマニオイ~は、花柄が無毛なことに加えて葉に光沢があること、花の色がより濃いことなどが特徴らしい。
僕が観察した個体はテリハニオイタチツボなのか、それともハマニオイタチツボなのか、図鑑の記述を見ただけでは判断ができない。


ヒメハギやニオイタチツボスミレに限らず様々な植物で、海岸特有の変種や品種が報告されている。これら海岸型変種・品種は、典型的な個体は内陸のものと形態(例えば茎葉の毛の有無、葉の光沢の有無や厚さ)が明らかに異なるのだが、それに混じって中間型と思われるものも生育しており、種同定の際の悩みの種である。



<参考>
神奈川県植物誌調査会 2001. 神奈川県植物誌2001. 神奈川県立生命の星・地球博物館. (各種の特徴、ハマニオイタチツボスミレについて)
近田文弘 2007. 伊豆須崎 海岸草木列伝. トンボ出版. (ケナシヒメハギについて)
Konta F. , Matsumoto S. 2006.  New or Interesting Angiosperms from Suzaki, Shimoda City, Central Japan.  Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany 32: 35-45.
邑田 仁・米倉浩司 2012. 日本維管束植物目録. 北隆館. (学名を引用)