2012年10月22日月曜日

クヌギハケタマフシの生活史(自身の備忘録を兼ねて)

先日、虫こぶの一種のクヌギハケタマフシを紹介したが、日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)に詳しく解説があったのでまとめてみる。

クヌギハケタマフシは、クヌギハケタマバチNeuroterus vonkuenburgi Dettmer(1934)というタマバチ(小型のハチの一種)によってクヌギの葉裏に作られる虫えいである。ただし、クヌギハオオケタマフシという酷似した種類があるので同定には注意を要する。(正直、僕が見つけたのがどちらなのかは分からないです・・・)
形状はほぼ球形、上方に向かってわずかに細くなり、長短に凹みがある。表面には白色微毛、直径8mm、幼虫室の直径2.5mm。→(僕が虫こぶを割って出てきた繭のようなものは恐らくこの幼虫室である。)


このクヌギハケタマフシの生態は随分と変わっている。
クヌギハケタマフシクヌギハケタマバチの単性世代に形成されるもので、両性世代に形成されるものはクヌギハナカイメンフシという全く異なった見た目のものであるらしい。ちなみに、両性世代のクヌギハケタマバチはクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるからややこしい。
つまり、Neuroterus vonkuenburgi というタマバチは、単性世代はクヌギハケタマバチと呼ばれ、両性世代はクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるということである。

詳しく説明すると・・・

・9月下旬ごろから落下する虫えい(クヌギハケタマフシ)の内部で、11月にタマバチは羽化する。(和名を使うとややこしいのでタマバチで統一する。)
・虫えい内で越冬したタマバチは翌3月に出現、クヌギの花芽に産卵する。ちなみに、この時羽化するのはメスだけで、交尾を経ず産卵を行う。そのため、単性世代と呼ばれる。
・萌芽と同時に雄花に虫えいが出現する。(クヌギハナカイメンフシ)
・5月下旬~6月上旬に虫えいからタマバチが羽化する。この時は雌雄両方が羽化し、交尾を経てクヌギの若葉の裏面に産卵する。そのため、両性世代と呼ばれる。
・7月中旬ごろから葉裏に虫えい(クヌギハケタマフシ)が出現する。

と、いうことになる。
同じタマバチによって、2種類の虫こぶが作られるというわけだ。図鑑によれば、本種に限らずタマバチのかなりの種が時期によって単性世代、両性世代を持ち、異なる虫こぶを形成するとのことである。


追記
関連する記事を書いているので、リンクを貼ります。よければご覧下さい。
「クヌギハケタマフシ」 (2012年10月)
「虫こぶからハチが羽化しました(クヌギハケタマバチ?)」 (2012年11月)
「クヌギハケタマフシから羽化したハチ(その2)」 (2013年4月)

参考
日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)

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