2014年9月21日日曜日

植物検疫 オーストラリアから日本への持ち込み

※2018年12月記
植物防疫法の改正に伴い、情報を更新します。端的に言えば、この記事で書いた方法では植物を海外から日本に持ち込めなくなった、ということになります。
記事の内容は、一旅行記として楽しんでいただくに留めてもらえると幸いです。

最近になり、植物防疫法が厳しくなったようです。植物防疫所の”海外からの植物の持込みに関するご質問”(http://www.maff.go.jp/pps/j/trip/oversea/faq/index.html#imp_faq)などに説明がありますが、要約すれば、「海外から植物を持ち込みたい場合は、帰国前に必ず輸出国政府(植物を持ち出す国)の植物防疫機関で検査を受け、検査証明書を発行してもらう必要があり、証明書がなければ廃棄処分になる」ということになります。
ただし、以前から検疫の対象外だったもの(害虫がいないことが明らかな木製品など)については今まで通り、検疫の必要はないようです。

なお、私は法改正後に植物を持ち込んだ経験がないため、詳しい説明は避けます。
詳しくは植物防疫所のwebサイトをご覧ください(http://www.maff.go.jp/pps/)。


以下、元記事


9月18日

約3週間のオーストラリア旅行を終えて帰国しました。
旅行中も更新を続けていく予定でしたが、忙しさとパソコンの不調で滞ってしまいました。これから少しずつ書いていきます。


西オーストラリア州パース郊外の園芸店(nursery)の種子販売コーナーにて。


左右の大きな棚が野菜の種子で、その間のコーナーが西オーストラリア原産の植物の種子。。
山野草店を除く日本の園芸店で見られる在来の野草というと、せいぜいキキョウやリンドウ、それからオミナエシやカワラナデシコといったところだろうか。それと比較すると非常に大きな売り場だった。

以前からオーストラリアの植物に関心があった僕は、いくつか購入した。


購入したのは
Xanthorrhoea preisii(ススキノキ科) 和名ススキノキ Grass Tree。
Nothofagus cuninghamii(ナンキョクブナ科) 和名ナンキョクブナ(の一種) Myrtle Beech。
Swainsona formosa(マメ科) Sturt (Desert) Pea。
Rhodanthe chlorocephala(キク科) Everlastings。

その他に※市街地で採取したもので
Schinus areira (S. molle var. areira)(ウルシ科) ピンクペッパー、コショウボクと呼ばれる仲間。南米原産
Tipuana tipu(マメ科、ジャケツイバラ科) Rose woodとして木材利用される。南米原産。
以上が種子。

・Melilotus sp.(マメ科) 日本にも同属のシナガワハギなどが帰化。
・Trifolium tomentosum(マメ科) 日本にも同種と思われるものが帰化していて和名フウセンツメクサ。
・Erodium sp.(フウロソウ科) 日本にも同属でツノミオランダフウロなどが帰化。
・Cotula sp.(キク科) 日本には同属でオーストラリア原産のマメカミツレが帰化。
これらは土のついた根を切り取って乾燥標本にした。

(※オーストラリアでは動植物の採取は国立公園や自然保護区などにおいて厳しく規制されているが、市街地の道端などではその限りではないらしい。もっとも、市街地であっても在来種が生えていることはあり、種ごとによって扱いが異なるのかは分からない


ところで、海外から日本に植物を持ち込む際は生の植物体、乾燥植物、種子のいずれの場合も植物検疫での申告が必要となる。植物検疫を受けるのは初めての経験で、若干緊張をしながら準備を進めた。
主に参照したのは日本の植物検疫所のホームページ、それからCITES(日本ではワシントン条約として知られる)のホームページ。

まずは、各植物種(もしくは属)が規制対象になっているかを検疫所の「輸入条件に関するデータベース」から検索。
上記6種のうち4種は通常検査でOK。RhodantheTipuanaはリストに表示されなかった。
 
次に、CITESのページでリストにかかる種がないかを検索。該当種はなく一安心。
(ちなみに、普通に園芸店で売られる植物の中にも、例えばドラセナ(Dracaena)やエアープランツの一種Tillandsia xerographicaのようにCITESの指定種が含まれており、これらは国内移動は可能でも国間での移動には許可証が必要。お店で買ったものなら問題なく日本に持ち込めるわけではない。)

僕が悩んだのは、植物検疫のリストに載っていない植物があったこと、それから事前にオーストラリアの検疫所で検査を受けて検査証明書をもらう必要があるのか、それとも必要ないのか、ということの2点。
まずリストに載っていない植物については情報がないので、とりあえず持ちこむことにした。

それから検査証明書についてはページによって記述が異なっていた。
「輸入条件に関するデータベース」で各種について検索すると、条件のひとつに”輸出国政府機関が発行した検査証明書があること”、と記述されていた。一方、「旅行者(携行品)・郵便物」のページには証明書が必須である、とは書かれていなかった。自分の場合は旅行者携行品に当たると考え、現地の検疫所を訪れることなく日本の空港に向かうことにした。

関西国際空港に入港。入国審査を終え、荷物を受け取ってから植物検疫コーナーに向かう。
検疫を受ける前には、事前に申告書に持ちこみ品目の種類と個数を書き、それを検疫コーナーに持っていく必要がある。
植物に関するものは念のため検疫を受けた方がよいだろうと、木製品のブーメランとディジュリドゥも持っていくことにした。

植物検疫担当の方は1名。他に検査を受けている人はおらず、並ぶことなく検査開始。

まず、木製品については持ってきたものについては検査対象外とされた。
次に検査官は種子の袋をカッターでひとつずつ開封し、中を確認。採取した種子や乾燥標本はティッシュや紙に挟んでいたので、それも開封して中を確認。中を確認ののち、切り口に「植物検疫 Plant Quarantine」とプリントされたシールで封をし、まとめて入れておいたビニール袋に検査合格証印を押した紙を貼られて終了。
10分程度で検査は終わった。


検査中に科名や属名を聞かれたので、事前にメモした紙を見ながら回答。その他に、特定外来生物に当たるような種はないかと聞かれたので、ないと回答。 

検査終了後、入国前に悩んでいた2点について質問。
まず、データベースに載っていない種については、通常検査でOKな種と同じ扱いでよいとのこと。
検疫では日本の農林業に悪影響を及ぼす病虫害の侵入を防ぐのが主な目的であるから、「許可された植物しか持ち込めない」ではなく、「何らかの形で規制された植物は持ちこんではいけない」と考えた方が適当なのだろう。(ちなみに、植物検疫所のデータベースにはCITESは反映されていないようなので、注意が必要である)

それから、現地国の検査証明書については本来どんな場合であっても必要なのだが、商業・研究利用目的でない旅行者の少量の携行品(お土産など)であれば、証明書はなくても大丈夫、とのことだった。

検疫を終えると次は税関。検査を受けた植物を見せる。
税関では麻薬取り締まりなど異なる観点から検査を受ける。コショウボクのタネが袋越しに大麻の種子などに見えたのか開けて見せるように指示されるが、他は問題なく終了。趣味でタネを持ってきた、と言うと、変わったやつだなという風な顔をされた。
以上で全ての検査が完了。


検疫官の皆様、日々のお仕事お疲れ様です。


参考
・植物検疫所 ホームページ
http://www.maff.go.jp/pps/index.html (2014年9月21日現在)

・CITES ホームページ(英語)
http://www.cites.org/ (2014年9月21日現在)


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