2016年4月4日月曜日

おがさわら丸のタイル画に描かれた植物たち


父島二見港に停泊する「おがさわら丸」。
小笠原諸島と本土を結ぶ唯一の貨客船である。



おがさわら丸の船内でひときわ目を引くのが美しい花々が描かれたタイル画。
一つ一つの花を見てみると、小笠原に自生する種と思われるものが含まれていることに気づく。




これだけ目立つタイル画のこと、どこかに描かれた植物の情報があるだろうと思い検索したが見当たらなかった。

自分なりに種同定することにした。



まずは左上。
ここには2種類のヤシ科と思われる植物が描かれている。

まず、左下の扇形の葉は、小笠原固有変種の「オガサワラビロウ Livistona chinensis var. boninensis」だと思われる。

次に、真ん中で存在を放つヤシ。候補としては小笠原固有種の「ノヤシ Clinostigma savoryanum」、それから自生はしないが広く植栽されている「ココヤシ Cocos nucifera」が思いつく。葉や幹の雰囲気はココヤシに近いが、それにしては大きな実(ココナッツ)が描かれていないのが不自然な気もする。
どちらの種かは判断付けがたいが、ここは固有種のノヤシということにしたい。


次に左下。

まず、白い花を多数付けた植物は固有種の「ヒメツバキ Schima mertensiana」だろう。ヒメツバキは小笠原村の花にも指定されており、小笠等諸島を代表する花木である。


次に、ヒメツバキの下に描かれた植物。葉裏と新芽が赤さび色であること、また葉の形状から判断すると「コバノアカテツ Planchonella obovata var. dubia」が妥当だと思う。
コバノアカテツはアカテツの変種で、小笠原諸島と沖縄の大東島に分布する。

次に、ヒメツバキの右隣に描かれた黄色の5弁花は、園芸植物として小笠原でも栽培される「アリアケカズラ Allamanda cathartica」だろうか。これについてはあまり自信はない。

最後に、右下に2個描かれた花は、小笠原固有種の「テリハハマボウ Hibiscus blaber」か広域分布種の「オオハマボウ Hibiscus tiliaceus」と思われる。絵からはどちらの種なのか判別できないが、小笠原なのだし固有種のテリハハマボウということにしておく。


右上。

まず、一番上に描かれた赤い花は、恐らく「デイコ Erythrina variegata var. orientalis」だろう。
デイゴ(デイコとも)は小笠原では「ビーデビーデ」と呼ばれて親しまれている花木。かつては固有種ムニンデイゴとされていたが、今では沖縄等で見られるデイゴと同種とされている。

次に、デイコの下に描かれたパイナップル様の植物は小笠原固有種の「タコノキ Pandanus boninensis」だろう。

それから、タコノキの右隣に描かれているのは、おなじみの「ハイビスカス Hibiscus rosa-sinensis」だろう。ちなみに、ハイビスカスの標準和名は「ブッソウゲ」という。

ここには他に、左に描かれた赤い花と、右上に描かれた玉状に咲いたピンク色の花?があるが、残念ながら検討がつかない。左の花はかなり特徴的な姿をしており、種判別は十分に可能だと思うのだが。



最後に右下。

まず、左側の赤い花は、先ほども登場したブッソウゲ(ハイビスカス)で良いだろう。

次に、右上の白い4弁花は小笠原固有種の「ムニンノボタン Melastoma tetramerum」でよいと思う。ムニンノボタンは小笠原諸島の中でも父島のみに分布、個体数が非常に少なく保護増殖が行われている。

最後に、ムニンノボタンの下の花は「ハハジマノボタン Melastoma tetramerum var. pentapetalum」だと思う。
ハハジマノボタンはムニンノボタンの変種で母島に固有。花弁は5枚で淡紅色を帯びる。タイル画に描かれたノボタンsp.は4弁花の点で異なるが、花色から判断すればハハジマノボタンが妥当だろうと判断した。



以下、タイル画に描かれた植物の種名をまとめる。

<固有(変)種>
・オガサワラビロウ
・ノヤシ
・ヒメツバキ
・テリハハマボウ
・タコノキ
・ムニンノボタン
・ハハジマノボタン

<広域分布種>
・コバノアカテツ
・デイゴ(人為的に持ち込まれたとする説もある)

<園芸種>
・アリアケカズラ
・ブッソウゲ
・不明種1
・不明種2

計13種

種同定にいくつか不安があるものの、描かれた植物の約半分は小笠原固有種ということになる。さらに、コバノアカテツとデイゴもかつては小笠原固有種とされていたことから、この2種も固有種として描かれたのかもしれない。タイル画のモチーフに小笠原ならではの植物が多く取り入れられていることをうれしく思った。
現おがさわら丸は今年夏をもって小笠原航路を引退し、新しい船にバトンタッチする。よって、このタイル画も今年で見納めになるかもしれなく、少し残念である。



<参考>
・豊田武司 2003. 小笠原植物図譜(増補改訂版). アボック社.
・豊田武司 2014. 小笠原諸島固有植物ガイド. ウッッズプレス.

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