2013年9月8日日曜日

鎌倉にて トキホコリ


9月6日

鎌倉のとあるお寺の境内にて。
トキホコリElatostema densiflorumが生えていた。

トキホコリはイラクサ科の一年生草本で、国のレッドデータで絶滅危惧Ⅱ類、神奈川県で絶滅危惧ⅠB類に指定されている。

僕の通う東京農工大学以外で初めて見ることができた。
トキホコリの「ホコリ」は「茂る」、とか「はびこる」、という意味だそうで、境内の半日陰で群生する姿はいかにもそれにふさわしかった。

目立つ草ではないし、お寺の方が本種の存在を気にしておられるのかは分からないが、今まで通りの管理が続く限り、これからも生き続けてくれるのだろう。





近くで咲いていた
センニンソウclematis terniflora


ネジバナSpiranthes sinensis
この時期に開花しているのは初めてみた。

ネジバナは通常のネジバナSpiranthes sinensis var. amoenaに対して秋咲きのものをアキネジバナS. sinensis var. amoena f. autumnusという品種に分けるそうだ。
これはアキネジバナに相当するのだろうか。








ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。

2013年8月31日土曜日

住宅地の真ん中で ハグロトンボ

8月31日


大学から帰る途中、小学校の脇を通る細道にハグロトンボが落ちていた。
家に帰って撮影

ハグロトンボは主にゆるやかな流水の周辺で生息する。
最寄りの川までは1キロ以上離れているが、今日の強風でここまで飛ばされて車にでも轢かれたのだろうか。










ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。

2013年6月26日水曜日

ハチジョウナナフシは単為生殖も行う

昨年八丈島を訪れた時にハチジョウナナフシEntoria sp.を採集した。(その時の記事はこちら

昨年12月末に羽化した成虫2匹は未だ健在(6月26日)で産卵を続けている。産卵自体は1月頃から始まっているから、かれこれ5カ月間産卵し続けているということになる。まだ正確に数えていないが、おそらく産卵数は2匹合計で500個を超えている。予想以上の寿命と産卵数だ。
(飼育の記録は別ブログ「てっちゃんの庭」で紹介しています)



ところで、「ナナフシのすべて」(岡田正哉著 トンボ出版)によれば、ハチジョウナナフシは両性生殖を行うという。実際、八丈島の生息地ではオス成虫の姿を見た。
しかし、今回捕まえてきたナナフシは羽化してみると2匹ともメスだった。オスがいなければ累代飼育ができないではないか、と残念に思った。

それでも、もしかすると単為生殖の可能性もあるかもしれないし、産卵数とかは記録しておかないともったいないな、と卵の保管は行うことにした。ナナフシの仲間はナナフシモドキやトゲナナフシなど単為生殖を行う種がかなり見られる。

虫かごに入れた卵が乾燥しないように、卵を載せたヨーグルトのフタの下に敷いたティッシュに水を補給し続けた。しかしカビの生える卵が増えてきたり、試しにいくつかの卵を割ってみても発育が進んでいる様子がなく、孵化はあきらめかけていた。


6月18日

いつものように虫かごの中を覗いてみると、なんと孵化が始まっていた。数日前から孵化は始まっていたようで、残念ながら既に餓死している個体もいた。
その後も少しずつ孵化が続き、26日現在6匹が健在である。

生物相手なら新発見はある意味当たり前のことなのだろうが、とりあえず「ハチジョウナナフシが単為生殖を行う」ことを初めて確認できたのだと思う。

その後インターネットでハチジョウナナフシや近縁?のアマミナナフシEntoria okinawaensisの生殖方式について調べた。ハチジョウナナフシについては「ナナフシのすべて」に書いてある以上のデータは出てこなかったが、アマミナナフシは案外飼育している方も多く、結構情報が出てくる。それによれば、アマミナナフシは両性生殖も単為生殖も両方行うそうだ。
ならば、ハチジョウナナフシが単為生殖を行っても何ら不思議はないだろう。


そもそも、僕の中ではハチジョウナナフシが固有の種なのか、また他の陸地と一度もつながったことのない海洋島である八丈島に自然分布していたのか、という疑問があった。
前回の記事では、トカラ列島と八丈島に分布する、ということから古い時代の非意図的な移入があったのではないか、などと勝手に想像してみた。今回も机上の空論ではあるがちょっと考えてみたい。

トカラ列島と八丈島のハチジョウナナフシが同じ種である、とすれば、一度もつながったことのない両地域で何らかの交流が起こったと考えなければならない。それは非意図的な人為によるものなのか、自然におこったものなのか、どちらなのかはDNAを調べて人の活動が関わるより前に分化したことが示されない限りは恐らく分からない。
飼育時に観察した限り、本種の産卵タイプは粘着型(粘着物で枝葉などに卵をくっつける)と落下型(地面にそのままポトリと落とす)の両方があるようである。
人為的移入だと仮定すると、「人が持ち込んだ枝や土に卵が入っていてそこから広がった」などと考えられるし、自然による分布拡大だと仮定すると、「卵がくっついていた枝葉や卵が挟まっていた朽ち木が台風後などに海に流され、それが流れ着いた」などと考えられると思う。(ちなみに、卵単体では全く水に浮かない。これは試してみたので確かである。)

一つ言えることは、本種が単為生殖を行えることから、偶然の移入による定着の可能性が両性生殖を行う種より格段に上がる、ということだ。極端にいえば、卵がたった1個島にたどり着いただけでも定着が可能になる。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年6月21日金曜日

塩生湿地の植物 青森にて


6月15日

青森県にて。
卒業研究として海岸の湿地を見て回る。そこで見た塩生地の植物を少し紹介。

ウミミドリGlaux maritima
日本では本州北部~北海道に分布。
白色の花弁に見えるものは萼片であり花弁はない。
草丈は大きいもので10cmくらい、群生していて可愛らしかった。


シバナTriglochin asiaticum
日本では北海道~九州に分布、とはいえ北方系の種であるそうだ。
写真は花茎。葉は分厚くて細い棒状になっている。
葉を少しちぎってかじってみたら、塩味とともにドクダミを思わせる香りが口に広がった。

ドロイJuncus gracillimus
日本では北海道~九州に分布。
泥地に生えることからこの名前がついたのだろうか。(今回見た感じでは塩生地に生えるのはほぼ間違いなさそうだったが、必ずしも泥地ではなかったようにも思う)
写真の真ん中の白いものが花(まだつぼみ)である。

ヒメキンポウゲHalerpestes kawakamii
北海道~千葉県にかけて分布する日本固有種。
別名はツルヒキノカサで、個人的にはこちらの名の方がインパクトがあって好きだ。
砂地を好むようで泥の多い湿地にはあまり見られなかった。

今回観察したうち、ヒメキンポウゲとシバナは環境省のRDBで絶滅危惧種に指定、ウミミドリとドロイも都道府県レベルでは各地で絶滅危惧に指定されている。
これらの種は南方に行くとそもそも分布が局限されていて、それが希少種扱いの理由のひとつかもしれないが、それ以上に問題なのが沿岸部の開発による生息地破壊だと思われる。

ちなみに、観察地はほぼ確実に2011年の東日本大震災時の津波を被っているが、その影響は特にないようだ。(震災前を見ていないから断定はできないが・・・)

参考
・日本の野生植物 平凡社 1983年


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年5月21日火曜日

江の島の海岸植物

5月17日

江の島(神奈川県藤沢市)にて植物観察をした。
小さい頃から何度も行ったことのあるなじみ深い場所であるが、植物に本格的に興味を持ち始めてから訪れたことがなかった。
平日にも関わらず観光客がひしめく江の島での植物観察は(精神的にも)あまり楽でなかったが、それでも様々な植物に出会えて満足。


岩屋近くの崖地にて。

写真が若干白飛びしていて分かりづらいが、中央にある大きな植物がボタンボウフウPeucedanum japonicum、その手前で開花しているのがハマボッスLysimachia mauritianaである。

他にもススキ(ハチジョウススキだろうか?)、イソギクなどが確認できた。写真を見た感じでは他にもいくつかの種類がありそうである。
そのすぐ隣にはタイトゴメSedum japonicumが群生していた。まだ開花はしていなかった。
こちらはイヨカズラVincetoxicum japonicum
海岸付近で見られるガガイモ科カモメヅル属の多年生草本。
ただし、ガガイモ科はAPG分類体系でキョウチクトウ科に統合されているから、キョウチクトウ科の草本であるとも言える。
確かに葉が対生だったり、果実・種子形態が似ていたり、どちらもちぎると乳液が出る種が多かったりと共通点は多い、と思う。

APG分類体系は、在来広く用いられてきた形態を分類基準とする新エングラー分類体系と異なり、DNA分析を基にしている。だから、APGによる分類は実際に観察した時の感覚とズレてしまうのではないかと少々心配していたが、実際観察してみると「確かに共通点あるなー」と納得してしまう。不思議なものだ。


キケマン
Corydalis heterocarpa

大学に入ってから高尾山などでミヤマキケマンを見る機会は何度もあったが、キケマン自体を見るのは初めてのように思う。







学名はBG Plant Yリスト植物名検索に従っています。
http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html



ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年4月29日月曜日

4月19日 鎌倉で着生ランを見る

4月19日
鎌倉のとあるお寺にて。他の方々が仏閣や見頃のボタンを見ている中、一人ビャクシンを見上げる。

カヤランThrixspermum japonicumが開花していた。
着生ランとしては普通種であるそうだが、実際に見たのは今回が初めてだった。

こちらはムギランBulbophyllum inconspicuum
幹や枝に相当量が着生していて、今にも枝から落ちそうなほどだった。

花期は6月頃だそうで、種を飛ばした後の果実だけが残っていた。





神奈川県植物誌2001によれば、両種とも県内での分布は限られているようだ。特にムギランは極端に産地が限られており、県のレッドリストで絶滅危惧IA類に指定されている。
寺の背後に山があるから、生育に適した湿度が保たれたりしているのかもしれないが、門を出れば交通量がそれなりにある道路である。今回見た限りではそこまで特殊な環境だとは思えず、逆になぜ他の場所では見られないのか、不思議である。それとも既に周囲の環境は着生ランの生育には不適であり、昔から着生していたものが木とともに残存しているだけなのだろうか。(目立つ種ではないからエビネやカンランのように乱獲で減ったとは考えにくいだろう)

鎌倉の寺社は歴史的建造物として非常に価値のあるものだが、それと並んで多くの植物たちの住処としての価値も大きいように思う。周囲が開発などで生育に不適な環境に変化していく中、まさに駆け込み寺として機能していると言えるかもしれない。 将来的には再び分布を広げてほしいものだ。



ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年4月22日月曜日

イワウチワを見に奥多摩へ

4月11日

インターネットで検索していたところ奥多摩でイワウチワという花が見られると知った。花期にはまだ間に合いそう、ということで早速行くことにした。


多摩川



スギ林の中を沢沿いに進む。少し尾根っぽくなっている所にはスギに交じってカラマツも見られた。かつて植林したのだろうか。

途中に咲いていたのはレンプクソウAdoxa moschatellina
他にヒトリシズカやヒトツバテンナンショウなどを観察しながら次第に標高を上げていき、尾根上の神社に着いた。

神社の周りを散策。ツガ、モミ、ヒノキ、アセビなどいかにも尾根らしい樹種が見られた。
斜面の下の方にイワウチワが開花しているのが見えたが、かなりの急斜面だったため残念ながら近くに行くことはできなかった。

神社の周りではヒカゲツツジRhododendron keiskei が開花していた。見たかった花のひとつである。

さらに先を進んだところでイワウチワ自生地に到着。既に盛りは過ぎていたようだが、何か所かで見ることができた。感動である。

イワウチワShortia unifloraはイワウメ科の多年生草本。漢字では岩団扇と書く。葉が団扇のような形をしている、というのが由来らしい。
多年生草本、とは書いたが、観察した感じでは根元は細いながら木化していたので低木とした方が良いのかもしれない。

アケボノスミレViola rossii
葉が展開する前に花を咲かせるようである。

カタクリErythronium japonicum
カタクリを見つけた頃から雲が広がり始めた。そのためかほとんどのカタクリは花を閉じかけていたが、一部はしっかりと開いていてくれた。

エンレイソウTrillium apetalon。湿り気のある場所でハシリドコロ、ヨゴレネコノメなどとともに多く見られた。

ところで日本の山地で見られる植物は北半球に同じ仲間が広く分布していることが多い。例えば、今回観察したエンレイソウやカタクリの仲間は北米大陸で種分化を起こして多様な種が見られるそうだ。機会があれば実際に行ってみたいものだ。


今回観察した植物。(科は新エングラー体系)
ヒノキ科 ・ヒノキ 
マツ科 ・アカマツ ・モミ ・ツガ
クルミ科 ・オニグルミ
ヤナギ科 ・ネコヤナギ ・バッコヤナギ?
カバノキ科 ・ヤシャブシ?
ブナ科 ・イヌブナ ・コナラ ・ミズナラ ・アラカシ ・シラカシ ・ウラジロガシ ・ツクバネガシ
イラクサ科 ・ウワバミソウ ・カテンソウ
ヤドリギ科 ・マツグミ
シキミ科 ・シキミ
クスノキ科 ・シロダモ ・クロモジ ・アブラチャン
フサザクラ科 ・フサザクラ
キンポウゲ科 ・ヤマトリカブト(葉) ・ニリンソウ ・アズマイチゲ ・セリバヒエンソウ ・ハンショウヅル(葉) ・サラシナショウマかレンゲショウマなどと思われる新芽もあった。
メギ科 ・メギ
アケビ科 ・アケビ
センリョウ科 ・ヒトリシズカ
ウマノスズクサ科 ・(カントウ)カンアオイ
ツバキ科 ・ヒサカキ
ケシ科 ・ミヤマキケマン ・ジロボウエンゴサク ・ヤマエンゴサク ・ムラサキケマン ・クサノオウ
アブラナ科 ・ミツバコンロンソウ ・ヒロハコンロンソウ ・コンロンソウ ・オランダガラシ ・オオバタネツケバナ  ・ユリワサビ ・ワサビ
ベンケイソウ科 ・ヒメレンゲ?
ユキノシタ科 ・ハナネコノメ ・ヨゴレネコノメ ・ツルネコノメソウ? ・ウツギ
バラ科 ・ユキヤナギ
ミカン科 ・ミヤマシキミ
カエデ科 ・ウリカエデ(花)
モチノキ科 ・イヌツゲ ・ソヨゴ
スミレ科 ・タチツボスミレ ・エイザンスミレ ・ナガバノスミレサイシン ・アケボノスミレ ・マルバスミレ ・ウモトスミレ ・アメリカスミレサイシン
キブシ科 ・キブシ
ウコギ科 ・タカノツメ
イワウメ科 ・イワウチワ
リョウブ科 ・リョウブ
イチヤクソウ科 ・イチヤクソウ?
ツツジ科 ・ヒカゲツツジ ・ミツバツツジ? ・アセビ 
ムラサキ科 ・ハナイバナ ・キュウリグサ
シソ科 ・キランソウ ・ホトケノザ ・キバナオドリコソウ ・ヒメオドリコソウ ・カキドオシ
ナス科 ・ハシリドコロ
イワタバコ科 ・イワタバコ
スイカズラ科 ・ニワトコ ・オトコヨウゾメ
レンプクソウ科 ・レンプクソウ
キク科 ・スズメノヤリ ・オオジシバリ ・ハルジオン ・モミジガサ ・その他にタカオヒゴタイ?やハグマ系の新芽が見られた。
ラン科 ・シュンラン ・ミヤマウズラ(葉のみ)
ユリ科 ・エンレイソウ ・シロバナエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ) ・カタクリ ・ヒメニラ ・ヤブラン? ・ウバユリ
サトイモ科・ヒトツバテンナンショウ ・マムシグサ?
イグサ科 ・スズメノヤリ
カヤツリグサ科 ・タガネソウ ・ナルコスゲ ・カンスゲ ・他にも少なくとも3、4種は開花していたが種類は分からず。
コケ・シダ植物など ・ジャゴケ ・タマゴケ? ・コウヤノマンネングサ ・コケシノブ ・ヤブソテツsp

そういえば最近、山と渓谷社からAPG分類体系が用いられた植物図鑑が出たそうだ。今までの図鑑は形態に基づく新エングラー分類体系なのに対してAPGはDNAに基づく分類体系であり、より植物の種ごとの類縁関係を正確に表しているといえる。しかし僕を含めて新エングラーに馴染んでいる人が圧倒的で、今までの資料の多くも新エングラーに従ってきたのも事実。しばらくは混乱が起きそうだ。




ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年4月9日火曜日

クヌギハケタマフシから羽化したハチ(その2)

4月5日
昨年学内で拾ったクヌギハケタマフシ(ハチのうしろに写っている褐色の丸いもの)からハチが羽化しているのを見つけた。大きさは2mmくらいだろうか。
(クヌギハケタマフシを採集した時の記事はこちら



実は、ハチが羽化してきたのは今回が初めてではなく昨年11月にも2匹が羽化している。(その時の記事はこちら

その時羽化したハチと比較して、今回のハチは尾端が鋭くとがっている、体が一回り小さい、脚の色が異なる、など明らかな違いがあり、恐らく雌雄ではなく別種である。
だとすると、一方がクヌギハケタマフシを作ったクヌギハケタマバチで、もう一方がクヌギハケタマフシをちゃっかり利用した、もしくはクヌギハケタマバチの幼虫に寄生した寄生バチというこということになるのだろう。

今回のハチについてはまだ調べていないが、そもそも昨年出てきたハチについても学校の図書館にある図鑑には載っていなかったために同定できていない。もう少し自力で調べようとは思ってはいる・・・。



昨年羽化したハチの写真。







ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年4月7日日曜日

ウスタビガの繭から羽化した寄生バチ

4月7日

「カリカリ・・」という音で目が覚めた。最初は風で何かがこすれている音かと思ったが、どうも違う。部屋を探しまわり、2月にセツブンソウを見に山梨に行った時に拾ったウスタビガの繭が発信源であることが分かった。

ウスタビガの繭の上部には幅広で狭い穴(このあと出口と統一)があるが、そこから中を覗くと大柄そうな虫の顔が確認できた。
ウスタビガは年1化で晩秋に羽化するヤママユ科のガである。だからこの時期に羽化するとは考えにくい。とすると寄生バチの類だろうか?
観察を開始した。

(左写真は8時3分の様子)

8時29分

出口が少し広くなってきて中の様子が確認しやすくなってきた。触角とアゴが目立つのでハチの仲間であることは間違いなさそうだ。
出口の少し下辺りをかじり続ける。かじる幅はハチの頭より少し広い範囲で、写真の逆側をかじることも。


時間がたつにつれ繭の出口は段々と広がっているようだが、別にハチが押し広げたわけではなさそうだ。出口近くの内側をかじることで糸を切って繭の緊張を弱めているためだろうか。

8時47分

出口を押し広げて出られるかを確認しているのだろうか?
このような行動は何度も見られた。

8時56分

ほとんど同じところをかじり続けるため、繭のその部分が薄くなって大アゴの先端が貫通するようになってきた。

9時6分

出口のすぐ下に穴があき、今度は出口の縁の頑丈そうな場所を噛み始めた。

9時11分

大分頭が出るようになってきた。縁が噛み続けられたために柔らかくなり、出口を広げやすくなったのだろう。(噛んでいる場所が褐色に段々と湿ってきたのでハチが何らかの液体を出しているようだ。それも縁を柔らかくする意味があるのかもしれない)

9時15分

脱出開始。

9時15分

9時16分

脱出には1分もかからなかった。
ハチでは当たり前のことなのかもしれないが、翅は既に伸びきっていた。しかし全身は褐色の液体で汚れてとても飛べる状態には見えない。

9時17分

羽づくろい。

9時18分

翅についた汚れを払うことも兼ねた羽ばたき練習?

9時19分

体を軍手にこすりつけて表面についた汚れを取る。

羽づくろい(脚による全身のクリーニング)、はばたき、体こすりといった行動はしばらく続けられた。

9時26分

脱出したウスタビガの繭と。

ハチの体長は約4cmで、長さだけならスズメバチにも匹敵するほどの大きさ。ただ、体は細長くて随分と華奢な印象を受ける。
種類はコンボウアメバチHabronyx insidiator などではないかと思われる。
ちなみにコンボウアメバチの寄主はクスサン、ヒメヤママユ、ヤママユ、サクサンだそうで、いずれもヤママユ科のガである。
同科のウスタビガに寄生してもおかしくないとは思うが、今のところ確実な情報は見つけられていない。これからちゃんと調べて追記できたら、と思う。

追記(2013年4月17日)
原色昆虫大図鑑 Ⅲ で調べてみた。特徴からしてコンボウアメバチHabronyx insidiatorでよさそうだ(類似種も存在すると思うので、断定は避ける)。コンボウアメバチは「クスサン、サクサン、ヤママユ類の幼虫に寄生し蛹から羽化」とも書いてあるので、ウスタビガから羽化してもおかしくはないだろう。



羽化の途中の様子を動画で撮影したものをYouTubeにアップしました。よければ見てください。
その1http://www.youtube.com/watch?v=OLIIb21mwTM
その2http://www.youtube.com/watch?v=lfmz3C8d6WM



参考
・日本産ヒメバチ目録
http://cse.naro.affrc.go.jp/konishi/mokuroku/index.html
・新訂 原色昆虫大圖鑑 第Ⅲ巻 2008年1月25日 新訂版初版発行
監修 平嶋 義宏・森本 桂 発行 北隆館


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。

2013年4月3日水曜日

今年も咲いたアズマネザサの花


4月3日

農工大のキャンパス内で今年もアズマネザサPleioblastus chinoが開花していた。
(昨年の開花状況はこちら

開花していた場所は昨年とほぼ同じように見えた。つまり、同じ株?(ササは地下茎でつながっているからどこまでが同一株かよく分からない)が今年も開花していたといえるだろう。
すぐ隣りの群落が全く開花していないのも昨年と同様。

昨年の記事にコメントを書いてくださった方がいて、それによればアズマネザサの開花自体は(草刈りのあるところで)比較的よく見られることだ、とのこと。また花後の動態はその年に枯れたり、何年か咲いて枯れたり、開花しても結局枯れなかったりと色々だとのことである。(貴重なコメントを書いてくださり感謝です。)

農工大のアズマネザサはこの後どのようになるのだろうか。そして、ササ自体はあちこちで同じように刈られている(ように見える)のに開花が一部でしか見られないのはなぜなのだろうか。刈り取り、という行為がササに何らかの影響を与えて開花にいたっているのは間違いなさそうだが、それがどういう仕組みなのかも気になるところだ。
在学中は継続して観察したい。


追記(2013年4月18日)
その後に学内を回っていたら他にも点々と開花しているのが見られた。まだ花茎が伸びていなかったからか、単に見落としていたのかは分からない。残念ながら、昨年まで開花していたかも分からない。
もう少し詳しく調査することが必要そうだ。




ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。クリックいただけると嬉しいです。