昨年12月末に羽化した成虫2匹は未だ健在(6月26日)で産卵を続けている。産卵自体は1月頃から始まっているから、かれこれ5カ月間産卵し続けているということになる。まだ正確に数えていないが、おそらく産卵数は2匹合計で500個を超えている。予想以上の寿命と産卵数だ。
(飼育の記録は別ブログ「てっちゃんの庭」で紹介しています)
ところで、「ナナフシのすべて」(岡田正哉著 トンボ出版)によれば、ハチジョウナナフシは両性生殖を行うという。実際、八丈島の生息地ではオス成虫の姿を見た。
しかし、今回捕まえてきたナナフシは羽化してみると2匹ともメスだった。オスがいなければ累代飼育ができないではないか、と残念に思った。
それでも、もしかすると単為生殖の可能性もあるかもしれないし、産卵数とかは記録しておかないともったいないな、と卵の保管は行うことにした。ナナフシの仲間はナナフシモドキやトゲナナフシなど単為生殖を行う種がかなり見られる。
虫かごに入れた卵が乾燥しないように、卵を載せたヨーグルトのフタの下に敷いたティッシュに水を補給し続けた。しかしカビの生える卵が増えてきたり、試しにいくつかの卵を割ってみても発育が進んでいる様子がなく、孵化はあきらめかけていた。
6月18日
いつものように虫かごの中を覗いてみると、なんと孵化が始まっていた。数日前から孵化は始まっていたようで、残念ながら既に餓死している個体もいた。
その後も少しずつ孵化が続き、26日現在6匹が健在である。
生物相手なら新発見はある意味当たり前のことなのだろうが、とりあえず「ハチジョウナナフシが単為生殖を行う」ことを初めて確認できたのだと思う。
その後インターネットでハチジョウナナフシや近縁?のアマミナナフシEntoria okinawaensisの生殖方式について調べた。ハチジョウナナフシについては「ナナフシのすべて」に書いてある以上のデータは出てこなかったが、アマミナナフシは案外飼育している方も多く、結構情報が出てくる。それによれば、アマミナナフシは両性生殖も単為生殖も両方行うそうだ。
ならば、ハチジョウナナフシが単為生殖を行っても何ら不思議はないだろう。
そもそも、僕の中ではハチジョウナナフシが固有の種なのか、また他の陸地と一度もつながったことのない海洋島である八丈島に自然分布していたのか、という疑問があった。
前回の記事では、トカラ列島と八丈島に分布する、ということから古い時代の非意図的な移入があったのではないか、などと勝手に想像してみた。今回も机上の空論ではあるがちょっと考えてみたい。
トカラ列島と八丈島のハチジョウナナフシが同じ種である、とすれば、一度もつながったことのない両地域で何らかの交流が起こったと考えなければならない。それは非意図的な人為によるものなのか、自然におこったものなのか、どちらなのかはDNAを調べて人の活動が関わるより前に分化したことが示されない限りは恐らく分からない。
飼育時に観察した限り、本種の産卵タイプは粘着型(粘着物で枝葉などに卵をくっつける)と落下型(地面にそのままポトリと落とす)の両方があるようである。
人為的移入だと仮定すると、「人が持ち込んだ枝や土に卵が入っていてそこから広がった」などと考えられるし、自然による分布拡大だと仮定すると、「卵がくっついていた枝葉や卵が挟まっていた朽ち木が台風後などに海に流され、それが流れ着いた」などと考えられると思う。(ちなみに、卵単体では全く水に浮かない。これは試してみたので確かである。)
一つ言えることは、本種が単為生殖を行えることから、偶然の移入による定着の可能性が両性生殖を行う種より格段に上がる、ということだ。極端にいえば、卵がたった1個島にたどり着いただけでも定着が可能になる。
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