2013年4月7日日曜日

ウスタビガの繭から羽化した寄生バチ

4月7日

「カリカリ・・」という音で目が覚めた。最初は風で何かがこすれている音かと思ったが、どうも違う。部屋を探しまわり、2月にセツブンソウを見に山梨に行った時に拾ったウスタビガの繭が発信源であることが分かった。

ウスタビガの繭の上部には幅広で狭い穴(このあと出口と統一)があるが、そこから中を覗くと大柄そうな虫の顔が確認できた。
ウスタビガは年1化で晩秋に羽化するヤママユ科のガである。だからこの時期に羽化するとは考えにくい。とすると寄生バチの類だろうか?
観察を開始した。

(左写真は8時3分の様子)

8時29分

出口が少し広くなってきて中の様子が確認しやすくなってきた。触角とアゴが目立つのでハチの仲間であることは間違いなさそうだ。
出口の少し下辺りをかじり続ける。かじる幅はハチの頭より少し広い範囲で、写真の逆側をかじることも。


時間がたつにつれ繭の出口は段々と広がっているようだが、別にハチが押し広げたわけではなさそうだ。出口近くの内側をかじることで糸を切って繭の緊張を弱めているためだろうか。

8時47分

出口を押し広げて出られるかを確認しているのだろうか?
このような行動は何度も見られた。

8時56分

ほとんど同じところをかじり続けるため、繭のその部分が薄くなって大アゴの先端が貫通するようになってきた。

9時6分

出口のすぐ下に穴があき、今度は出口の縁の頑丈そうな場所を噛み始めた。

9時11分

大分頭が出るようになってきた。縁が噛み続けられたために柔らかくなり、出口を広げやすくなったのだろう。(噛んでいる場所が褐色に段々と湿ってきたのでハチが何らかの液体を出しているようだ。それも縁を柔らかくする意味があるのかもしれない)

9時15分

脱出開始。

9時15分

9時16分

脱出には1分もかからなかった。
ハチでは当たり前のことなのかもしれないが、翅は既に伸びきっていた。しかし全身は褐色の液体で汚れてとても飛べる状態には見えない。

9時17分

羽づくろい。

9時18分

翅についた汚れを払うことも兼ねた羽ばたき練習?

9時19分

体を軍手にこすりつけて表面についた汚れを取る。

羽づくろい(脚による全身のクリーニング)、はばたき、体こすりといった行動はしばらく続けられた。

9時26分

脱出したウスタビガの繭と。

ハチの体長は約4cmで、長さだけならスズメバチにも匹敵するほどの大きさ。ただ、体は細長くて随分と華奢な印象を受ける。
種類はコンボウアメバチHabronyx insidiator などではないかと思われる。
ちなみにコンボウアメバチの寄主はクスサン、ヒメヤママユ、ヤママユ、サクサンだそうで、いずれもヤママユ科のガである。
同科のウスタビガに寄生してもおかしくないとは思うが、今のところ確実な情報は見つけられていない。これからちゃんと調べて追記できたら、と思う。

追記(2013年4月17日)
原色昆虫大図鑑 Ⅲ で調べてみた。特徴からしてコンボウアメバチHabronyx insidiatorでよさそうだ(類似種も存在すると思うので、断定は避ける)。コンボウアメバチは「クスサン、サクサン、ヤママユ類の幼虫に寄生し蛹から羽化」とも書いてあるので、ウスタビガから羽化してもおかしくはないだろう。



羽化の途中の様子を動画で撮影したものをYouTubeにアップしました。よければ見てください。
その1http://www.youtube.com/watch?v=OLIIb21mwTM
その2http://www.youtube.com/watch?v=lfmz3C8d6WM



参考
・日本産ヒメバチ目録
http://cse.naro.affrc.go.jp/konishi/mokuroku/index.html
・新訂 原色昆虫大圖鑑 第Ⅲ巻 2008年1月25日 新訂版初版発行
監修 平嶋 義宏・森本 桂 発行 北隆館


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