2012年11月30日金曜日

虫こぶからハチが羽化しました(クヌギハケタマバチ?)

11月30日
虫こぶの一種、クヌギハケタマフシ(以前の記事で紹介しました)を入れたケースを見たら小さな黒いハチが歩き回っていた。虫こぶを確認してみると、ひとつに新しい穴があいていた。虫こぶから発生したということで間違いなさそうだ。

これが、虫こぶから発生したハチである。体長は約3mm、翅を入れると5mmくらい。思っていたよりは大きいな、というのが第一印象だった。


側面から見た様子。腹は随分と丸っこい。
ところで、このハチは虫こぶを作ったクヌギハケタマバチなのだろうか?調べてみると、虫こぶにさらに寄生するハチも存在するらしい。インターネットで軽く検索した限りではこのハチがクヌギハケタマバチなのか、別の種類なのかは分からなかった。
明日辺りにでも、大学の図書館の図鑑で載っているかどうか調べてみようと思う。





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2012年11月23日金曜日

トホシテントウの越冬形態は?

白っぽくなっているのがトホシテントウの食痕
11月22日 大学のキャンパス内の中庭の木や林床にはキカラスウリが多数生育している。
キカラスウリTrichosanthes kirilowii var. japonicaはウリ科の多年草。カラスウリに似ているが葉の毛はまばらで光沢があることで区別できる。

成虫
このキカラスウリや一緒に生えているアマチャヅル(これもウリ科)に見られたのがトホシテントウである。
トホシテントウEpilachna admirabillisはテントウムシの仲間としては珍しく、ウリ科植物をエサにする植物食性の種である。翅に10個の大きな黒い斑点があることからこの名がついた。ナス科植物の害虫として有名なオオニジュウヤホシテントウなどが近縁である。
大きさの違う3匹。

今回観察したところ、成虫は1匹だけしか見られずほとんどが幼虫だった。(トホシテントウの幼虫はナナホシテントウなどの幼虫とは似ても似つかぬトゲだらけの姿)
しかも幼虫の大きさはまちまち。テントウムシの幼虫は4齢幼虫まであるらしいから、今回見たのは2~4齢幼虫なのだと思う。
観察した時は蛹や成虫で越冬するものだと思っていたから、小さい幼虫たちはまもなく食草が枯れてしまうのにどうするのだろうか、このまま死んでしまうのだろうか、などと考えていたが、あとで調べてみたらトホシテントウは幼虫で越冬する種だとのことで、一応納得した。

それにしても小さな幼虫たちはうまく冬を乗り切れるのだろうか?小さい個体も沢山見られたから恐らく大丈夫なのだと思うけれど、ちょっと心配にも思う。 それと、1匹だけいた成虫はどうなるのだろう。単なる生き残りでやはり冬には死んでしまうのだろうか。

2012年11月18日日曜日

11月16日 多摩丘陵にて

友人とともに京王線の平山城址公園駅から坂を上り、晩秋の雑木林を歩いた。
タンキリマメ
さすがに11月中旬ともなると花はほとんど見られなかった。咲いていたのはキク科のシロヨメナ(イナカギク?)やメナモミ、タデ科のアキノウナギツカミくらい。また、ヤマツツジとタチツボスミレが狂い咲きしていた。
あちこちで目立っていたのが、ノササゲ(左写真)、それにタンキリマメ。
どちらもマメ科のつる性草本である。マメ科にしては随分と鮮やかなサヤとタネを付ける。これは、鮮やかな見た目で鳥に運んでもらう戦略なのだ、と本には書いてあった。マメ科だから当然乾いて硬い種子なわけで、見た目だけ美味しそうにして鳥を騙そうということらしい。
アキノウナギツカミ(殆ど実になっている)

僕と友人の狙いは木の実であった。しかしそれもほとんど見つからず、あったのはガマズミ、ナツハゼ、ムラサキシキブくらい。
ガマズミは酸味が強かったがなかなか美味しかった。ナツハゼはブルーベリーと同じスノキ属(Vaccinium)なので期待していたのだがかなり渋かった。それでも皮を食べなければ酸味は強いものの渋みはあまりなく、まあまあといったところ。ムラサキシキブは無味無臭。 いずれの果実もとても小さなもので腹の足しにはならなかったが、それなりに楽しむことができた。今度はアケビなども食べてみたいものだ。





キッコウハグマの実


















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2012年11月4日日曜日

クヌギクチナガオオアブラムシ(補足の観察)

前回紹介したクヌギクチナガオオアブラムシについての補足になります。

なかなかクヌギの幹から離れてくれない、と書いたが、後日再びつついてみたら何匹かが落ちた。それを捕まえたのがこの写真である。(手の平が拡大されて恥ずかしいですが・・・) 非常に口吻が長いのがお分かりいただけるだろうか。

写真だと分かりづらいと思うので、ペイントで図にしてみた。
少し口の長さを誇張して書いてしまったが、大体このような感じでいいと思う。
観察した個体が幼体だから、成体に当てはまるのかは分からないが、口の長さは体長の4倍くらいはありそうである。 口吻が長いとは聞いていたが、さすがにここまでのものだとは思わなかった。

ところで、幹から離れたアブラムシは再び幹に口を刺すことができるのだろうか。できるとしたら、どのように行うのだろうか。これだけ長いと足を踏ん張って刺すことができない気がするが、カイガラムシと違ってしっかりとした移動能力を持つのだから何かしらの方法があるのだろうと思う、しかし見当がつかない。



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2012年10月31日水曜日

クヌギクチナガオオアブラムシとクロクサアリ

10月27日
学内のクヌギの幹をふと見てみたら、黒光りしたアリが集まっていた。触るとサンショウに似たにおいを発した。恐らくクロクサアリLasius spathepusであろう。類似種にクサアリモドキという種があり、腹柄節(ふくへいせつ)という、腹部と胸部の間にある突起の形で見分けるそうだ。この日はそれを確認できなかったので、また今度観察してみたい。


アリたちが集まるクヌギの幹のくぼみには大柄なアブラムシがいた。

クヌギクチナガオオアブラムシ
Stomaphis japonica というアブラムシであるらしい。大きなものは体長4~5mmくらいはありそうな大柄のアブラムシである。
アブラムシを捕まえて観察してみようと枝でつついたら、クロクサアリが激しく攻撃してきた。日本産アリ類画像データベース(http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/J/Taxo/F80613.html)を参考にすると、クロクサアリはこのアブラムシの出す蜜(甘露)を定常的な餌源としているそうで、その存在は大きいのだろう。

さて、アリの隙間をぬってアブラムシを幹から離そうと繰り返しつついたが、頭を中心に回転して動くだけで全く離れる気配がなかった。大抵のアブラムシは群れをつついた瞬間にポロポロと落ちる個体がいるものだが、この種にはそのような行動は全く見られなかった。
後日調べてみると、クチナガオオアブラムシは自分の体長を超えるような長さの口吻(口)を持つそうだ。幹から樹液を吸うと考えると長い口吻が必要なのは確かにそうだな、と思う。いくらつついても頭を中心にして動き、決して幹から離れなかったのはこれが理由なのだろう。
口が長すぎて幹から離れられないのだとしたら、つまりは外敵に襲われても他のアブラムシのように落下したり歩いたりして逃げることができないということになる。もしもアリの庇護がなければテントウムシなどに容易に捕食されてしまうのではないかと思う。

クヌギの幹をくまなく見てみたが、アブラムシはクロクサアリがいる場所にしか見られなかった。もしかすると、アリがいない場所にもいたのかもしれないが、その数はかなり少ないのだと思う。 クロクサアリにとってアブラムシは重要な相手(エサをもたらす)だが、アブラムシなしでも他に様々なエサを食べることができるはずだ。一方、クチナガオオアブラムシはアリの保護なしでは恐らく天敵に対してあまりに無防備である。ほぼ完全にアリに生活を依存していると言っていいのかもしれない。 長い口吻を持つことで、普通のアブラムシには困難な樹木の幹からの吸汁ができるようになった代わりに、アリなしでは生きられなくなってしまったらしい不思議なアブラムシである。


追記
後日に幹から離れたアブラムシを見つけたので別記事にしました。よろしければ見てください
こちら

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2012年10月22日月曜日

クヌギハケタマフシの生活史(自身の備忘録を兼ねて)

先日、虫こぶの一種のクヌギハケタマフシを紹介したが、日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)に詳しく解説があったのでまとめてみる。

クヌギハケタマフシは、クヌギハケタマバチNeuroterus vonkuenburgi Dettmer(1934)というタマバチ(小型のハチの一種)によってクヌギの葉裏に作られる虫えいである。ただし、クヌギハオオケタマフシという酷似した種類があるので同定には注意を要する。(正直、僕が見つけたのがどちらなのかは分からないです・・・)
形状はほぼ球形、上方に向かってわずかに細くなり、長短に凹みがある。表面には白色微毛、直径8mm、幼虫室の直径2.5mm。→(僕が虫こぶを割って出てきた繭のようなものは恐らくこの幼虫室である。)


このクヌギハケタマフシの生態は随分と変わっている。
クヌギハケタマフシクヌギハケタマバチの単性世代に形成されるもので、両性世代に形成されるものはクヌギハナカイメンフシという全く異なった見た目のものであるらしい。ちなみに、両性世代のクヌギハケタマバチはクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるからややこしい。
つまり、Neuroterus vonkuenburgi というタマバチは、単性世代はクヌギハケタマバチと呼ばれ、両性世代はクヌギハナカイメンタマバチと呼ばれるということである。

詳しく説明すると・・・

・9月下旬ごろから落下する虫えい(クヌギハケタマフシ)の内部で、11月にタマバチは羽化する。(和名を使うとややこしいのでタマバチで統一する。)
・虫えい内で越冬したタマバチは翌3月に出現、クヌギの花芽に産卵する。ちなみに、この時羽化するのはメスだけで、交尾を経ず産卵を行う。そのため、単性世代と呼ばれる。
・萌芽と同時に雄花に虫えいが出現する。(クヌギハナカイメンフシ)
・5月下旬~6月上旬に虫えいからタマバチが羽化する。この時は雌雄両方が羽化し、交尾を経てクヌギの若葉の裏面に産卵する。そのため、両性世代と呼ばれる。
・7月中旬ごろから葉裏に虫えい(クヌギハケタマフシ)が出現する。

と、いうことになる。
同じタマバチによって、2種類の虫こぶが作られるというわけだ。図鑑によれば、本種に限らずタマバチのかなりの種が時期によって単性世代、両性世代を持ち、異なる虫こぶを形成するとのことである。


追記
関連する記事を書いているので、リンクを貼ります。よければご覧下さい。
「クヌギハケタマフシ」 (2012年10月)
「虫こぶからハチが羽化しました(クヌギハケタマバチ?)」 (2012年11月)
「クヌギハケタマフシから羽化したハチ(その2)」 (2013年4月)

参考
日本原色虫えい図鑑(湯川 淳一・桝田 長 編著 全国農村教育協会 1996年6月21日 初版第一刷発行)

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2012年10月17日水曜日

クヌギハケタマフシ


10月11日
大学構内のクヌギの下に大量に落ちていた。クヌギに見られる虫こぶは何種類かあるそうだが、特徴からしてクヌギハケタマフシだと思う。

クヌギハケタマフシは、クヌギハケタマバチという小さなハチによって形成されるもの。大きさは5mm~8mm位のほぼ球形で、一か所がへこんでいる。ピンク色をして、全体に産毛が密生している。
元はクヌギの葉に付いているものだが、この時期になると自然に落下するらしい。虫こぶはいつまでも葉っぱにくっついているイメージがあるが、このタマバチの仲間の虫こぶは落下する性質があるのだろうか。そして、葉っぱから外れることでどのようなメリットがあるのだろうか。気になる。

一つを割ってみると、中から幼虫が出てきた。丸まっていてよく分からないが、体長は3mmくらいのようだ。


慎重に割ったら、今度は繭と思われるものが出てきた。これも大きさは3mm程度。中には幼虫が入っているのだろう。随分と硬質で、しかしみずみずしさのある繭である。恐らく、タマバチの幼虫が自ら作り出したのではなく、虫こぶの組織の一部なのではないかと思う。

いくつかを容器に保管してみた。果たして、うまく羽化してくれるのだろうか。



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2012年10月1日月曜日

迎賓館前にてヤマトタマムシ


9月29日 迎賓館赤坂離宮の目の前の道路にヤマトタマムシが転がっていた。既に死んでいた。 近くにはエノキがあったり、都心にしては比較的緑の多い場所である。

迎賓館前のユリノキ並木
環境さえ整っていれば、東京のど真ん中でも見られるようだ。何だかうれしくなった。









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2012年9月28日金曜日

コヒルガオの果実と種子

9月26日

北府中駅の近く、武蔵野線沿いのフェンスにコヒルガオを観察しに行った。少し前に研究室の先輩と植生調査をしている時に実が付いているのを見つけたのだ。

コヒルガオCalystegia hederaceaはヒルガオ科の多年生草本。市街地でもよく目にする花のひとつ。



コヒルガオとヒルガオはめったに果実を付けることがない。僕自身、高校生の時使っていた駐輪場のフェンスで見て以来2回目である。(その時見たのがコヒルガオかヒルガオかは残念ながら覚えていない)
めったに実を付けないのは、自家不和合性という自らの花同士で受粉しても種子が形成されない(受精しない)性質を持つためである。
一見すると大群落のように見えるヒルガオは、大抵の場合地下茎で増えた同一個体、つまりクローンであるため、果実を付けないのだ。つまり、果実をつけるためには異なる遺伝子を持つ別株が近くに存在することが必要となる。

では、今回見つけたコヒルガオはどのような要因で実を付けただろうか。
「日本帰化植物写真図鑑 清水矩宏/森田弘彦/廣田伸七 編・著 全国農村教育協会」
によれば、造園関係の植栽とともに由来の異なるヒルガオが持ち込まれることによる、と書いてある。つまり、半ば人為的要因で結実したということになる。 今回の事例も生育環境から考えて人為的要因が関わっていると考えるべきなのだろうか。

もうひとつ、ここでは詳しく書かないが「日本帰化植物写真図鑑」によれば、ヒルガオとコヒルガオの雑種や外国から来たヒルガオ(種としては同じヒルガオだが遺伝的に異なるもの)が見られるそうだ。
実を言うと今回観察したコヒルガオも花柄のひだが典型的なコヒルガオより目立たなかったり、葉やガクの形状が若干ヒルガオっぽい雰囲気がしたり(これらはヒルガオとの区別点になるそうだ)、ひょっとしてヒルガオとの雑種なのではないか、と思ったが比較してみないには分からない。


家に戻って撮影した種子。ひとつの果実に1~4個入っていた。大きさは4ミリくらいで、アサガオの種子を一回り小さくしたような見た目だ。果たしてまいたら発芽するのだろうか。











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2012年9月24日月曜日

スズミグモ Cyrtophora moluccensis

八丈島のキャンプ場で見つけたスズミグモ Cyrtophora moluccensis。
図鑑を見ると成体はもっと鮮やかな色彩をしているようで、これは幼生または亜成体といったところか。

このクモは南方系のクモであるそうだ。手持ちの図鑑 「フィールド図鑑 クモ 新海栄一・高野伸二著 東海大学出版 1984年8月5日 初版」 では、分布が静岡県より南(大井川流域)となっているが、近年では温暖化の影響か神奈川県などでも見られるようになっているそうだ。ただ僕は藤沢市に住んでいるが、まだ見たことはない。

八丈島をはじめとする伊豆諸島は図鑑の分布域には書かれていないが、温暖な気候からして以前からいてもおかしくないと思う。


このクモの網は普通とは随分と異なる。一般に地面に垂直方向に延びる丸網が多いが、スズミグモの網はドーム絹網と呼ばれる地面に水平なもの。それも2重3重となった少々複雑な構造をしている。(写真では分かりずらくて申し訳ないです)また、糸は随分と丈夫だが粘り気はないようだ。
このような形状の網は小型のクモでは比較的多い気がするが、スズミグモのような大柄(よくみかけるジョロウグモより一回り小さいくらい)のクモでは珍しいようである。
糸に粘り気がないし、形状からして飛んできた虫よりも枝から落下してくる虫を主に狙っているのだと思う。




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2012年9月19日水曜日

ハチジョウナナフシ Entria sp.

先月、八丈島にてハチジョウナナフシを採集した。(残念ながら、採集した時の写真はない) 採集地では軽く見ただけで10匹以上が確認できた。
八丈島の他にトカラ中之島、悪石島にも分布するそうだ。(ナナフシのすべて 岡田正哉著 トンボ出版)







wikipediaより。 赤丸はペイントを使用
地図で見てみると奇妙な分布である。(上の赤丸が中之島、下が悪石島)
トカラ列島は南西諸島に含まれるが、そのトカラ列島の一部と遠く離れた八丈島にしか生息していないということになる。また、南西諸島には広く近縁のアマミナナフシ(オキナワナナフシ)Entoria okinawaensisが分布しているとのことであり、ますます複雑だ。なお、中之島と悪石島をはじめとするトカラ列島には、アマミナナフシは生息していないようである。
そもそも、「ナナフシのすべて」によれば、ナナフシ類の研究はまだまだ進んでいないのだそうだ。ハチジョウナナフシも、本書では一つの種として紹介されているが、学名上はEntoria sp.と、Entoria属の未分類種ということになっている。
アマミナナフシとの違いは、オスの交尾器骨片という器官のキチン化(キチンは昆虫の外骨格を形成するもの)が弱く、繊細なところであるという。しかし、アマミナナフシの中にも「サツミ型、ダイトウ型、ケラマ型、ヤエヤマ型、ドナン型」の5つの型があり、その型もやはり交尾器骨片によって分類されるそうだ。サツミ型(大隅半島佐多岬~沖縄本島北部など)とダイトウ型(南大東島)のものは比較的ハチジョウナナフシに似ているそうである。
このことから、(素人なので偉そうなことは言えないが)ハチジョウナナフシはアマミナナフシの1型に含めてよいのではないかと思ってしまう。
仮に、ハチジョウナナフシをアマミナナフシの1型として考えたとしても、今度は八丈島の分布が謎である。日本のEntoria属のナナフシはハチジョウナナフシとアマミナナフシだけで、八丈島により近い本土には生息しないのである。(アマミナナフシは鹿児島の佐多岬にも生息する)

もし、トカラの島々と八丈島との間に人々の交流があったとしたら、その時に八丈島に持ち込まれた古い移入種という可能性もあるんじゃないか、などと考えたがさすがに飛躍しすぎだろうか。 いずれにせよ、不思議な分布を示す虫である。

追記
Wikipediaなど様々なサイトをを参考にすると、同属のオオナナフシEntoria magnaが本州に生息することになっている。しかし、実物の写真、データはタイプ標本と思われるものを除いて見当たらない。単に採集地を間違えているだけなのだろうか?(http://phasmida.speciesfile.org/Common/basic/ShowImage.aspx?TaxonNameID=1003076&ImageID=9520の画像(恐らくタイプ標本)の標本の腹端を見る限りナナフシモドキなどではなく、Entoria属のメスであるように思える)

追追記 2013年6月
飼育していたハチジョウナナフシの卵が孵化しました。図鑑に記載のなかった単為生殖が確認できたので新たに記事としました。よければご覧ください→「ハチジョウナナフシは単為生殖も行う


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2012年8月31日金曜日

八丈島のシマウリの話

先日、大学のサークルで伊豆諸島の八丈島へ行ってきた。観察した植物などについてはおいおい触れるとして、今回は購入したシマウリについて書きたい。

gあたりの値段は隣にあったマクワウリの半額以下
シマウリは、八丈特産のウリ。シマが縞を意味するか、島を意味するのかはまだ調べていないのでちょっと分からない。 ウリ、と書いてあるがメロンの一品種であるそうだ。種(しゅ)としてのメロンCucumis meloの中には、マクワウリや漬物に用いるシロウリも含まれる。

この八丈島のシマウリを知ったのは、2年ほど前、盛口満さん著の「ゲッチョ先生の野菜探検記 木魂社 2009年」を読んだ時のこと。甘くない「モモルディカメロン」という品種群があり、日本では長崎の五島列島と八丈島でのみ栽培されているらしい、と書いてあった。
ネットで調べてみると、平安時代には広く普及したが、今では八丈島など一部に残るのみになってしまったそうだ。
2年前(2010年)、ちょうどサークルで八丈島へ旅行に行くことになった。島のスーパーの野菜売り場を探すと、早速それがあるのを見つけた。
残念なことに、購入時点で過熟状態だったシマウリは帰宅した時には腐ってしまい、食べることができなかった。今回はそのリベンジである。

家に持ち帰ったシマウリは皮に割れ目が入り、すばらしいメロンの香りを放ち始めた。皮が割れたら食べごろと聞いていたので夕食後に食べることにした。(上の写真の状態)

切ると、中から白い果肉が顔を出した。種の周りの見た目は普通のメロンと変わらない。しかし、果肉は明らかにジューシーさに欠けていた。切る時の感触を例えると、ナスを切った時に一番近い。

まずはそのまま食べてみた。



全く甘くない、というか無味である。粉質で、まるでマッシュポテトのよう。
香りだけはメロンだが、もそもそするし、味がないし、とてもそのまま食べられるものではない。のどに詰まりやすいから別名「ババゴロシ」と呼ばれているそうだがうなずける。

次に、島で一般的らしい食べ方、練乳(コンデンスミルク)をかけて食べてみた。



急に食べやすくなった。メロンの香りと練乳の甘さが合ってなかなか美味しい。食感の悪さも練乳でかなり解消された。
しかし、夕食後には甘すぎる。3時のおやつにはいいのかもしれない。

最後に同じく八丈島で買ったパッションフルーツをかけてみた。


パッションフルーツの濃厚な香りにメロン臭は完全にかき消された。もはや、シマウリはケーキの生地のような存在になってしまった。
しかし、決してパッションフルーツとミスマッチなわけではない。シマウリ自体の香りは良いし、味の主張がない分、他の食材との様々な組み合わせが考えられそうに思った。


八丈島で僕が友人にこのシマウリについて話したら、「練乳がない時代にどうやって食っていたんだ?」という話になった。かつてどのように食べていたかは分からないが、今回食べてみて、シマウリは必ずしもデザートとして食べるものとは限らないかもしれない、と感じた。


作物に興味がある僕としては、平安時代などには広く栽培されていたが、その後は廃れ、しかし八丈島では今でも栽培が続けられ、しかも練乳をかけて食べられている、ということにロマンを感じてしまう。 おおげさかもしれないが、シマウリは、かつての栽培文化の生き証人、というか文化そのものであると思う。

9月17日 追記
自宅で家族とともに残り半分を食べた。へたの部分まで食べたところで強い苦みを感じた。恐らくニガウリなどウリ科植物に含まれる苦み成分のククルビタシンによるものではないかと思う。



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2012年8月14日火曜日

府中にて アカボシゴマダラ Hestina assimilis

8月8日

府中市の浅間山公園を散策。公園内のクヌギの樹液にアカボシゴマダラが来ているのを見つけた。

アカボシゴマダラ(Hestina assimilis)は、タテハチョウ科のチョウの一種。日本では、元々奄美に生息していたが、近年、関東では放蝶によると思われる中国大陸の亜種が野生化しており、環境省により「要注意外来生物(飼育等は規制されないが、生態系への影響が心配され、注意が必要な種)」に指定されている。

僕がこのチョウを初めて見たのは、神奈川県藤沢市のとある中学に通っていた2004年のこと。(2005年かもしれない。残念ながら不確か)
昇降口を出てすぐ、地面近くをひらひら舞っているのを見つけた。
家に帰って図鑑を開いてアカボシゴマダラだということが分かった。ところが、分布は鹿児島の奄美のみとなっていて、神奈川は分布域から大きく外れていた。
ちょうど、温暖化でツマグロヒョウモンやナガサキアゲハなどのチョウが北上傾向にあることが話題になっていた時だったので、アカボシも奄美から北上したのかな、などと考えていた。

それからしばらくして、放蝶によるものだということを知った。


求愛中
今ではすっかり普通種になってしまったアカボシゴマダラ。

ここまで増えた理由として、在来のゴマダラチョウやオオムラサキと異なり、都市部の小さなエノキもよく利用すること、越冬の際に地面にあまり降りないために落ち葉かきの影響を受けないこと、などが挙げられているようだ。侵入して間もない(生きもの便り さまよえるアカボシゴマダラによれば1995年に埼玉県、1998年に神奈川県藤沢市で確認したのが最初)ために、外敵も少ないかもしれない。

今まで、アカボシゴマダラはゴマダラチョウが住まないような都市部で分布を広げているという印象が強かった。 しかし今回、都市の緑地とはいえ、ゴマダラチョウが生息しそうな場所でアカボシゴマダラが普通に樹液を吸っていたのは驚きだった。ここまで来ると、アカボシゴマダラは単に空いたニッチ(※)にうまく入っただけでなく、ゴマダラチョウに対しても直接の影響を及ぼしているのではないかと思ってしまう。
アカボシゴマダラはゴマダラチョウと比べて一回りサイズが大きいから、仮に樹液をめぐって争ったらアカボシが勝ってしまうのではないだろうか。

2010年 大磯町
余談
アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウ、オオムラサキの幼虫はよく似ているが、次のようにして見分けられるようだ。
・アカボシの幼虫の背中には4対の突起があり1対が大きい、また尻の突起がすぼまっている。
・ゴマダラの幼虫の背中の突起は3対で、尻の突起は開いている。
・オオムラサキの幼虫の背中の突起は4対で、尻の突起は開いている。




※ニッチ(専門家ではないので正確かはわかりません)
日本語では「生態系地位」。
生物は生態系の中で特有の位置を持っている。つまり、どんな環境(場所、時期など)で、どんなものを食べているのか、あるいは食べられているか、ということである。生物が生態系内で持つ位置(地位?)のことをニッチという。

例えば、今回の場合アカボシゴマダラとゴマダラチョウはエノキという樹木の葉っぱを食べるという点で共通している。しかし、仮にアカボシが都市部で、ゴマダラチョウが郊外で生息しているならば、それぞれの住む環境が異なるからニッチは重なっていないといえる。 しかし、両種が同じ環境で同じものをエサとするなら、それぞれのニッチは重なっている、ということになる。
ニッチが重ならない限り、それぞれの種はそれほどぶつかり合うこともなく共存していくことができる。しかし、もしもニッチが被っている場合は競合が起き、強い種が優先してしまう可能性がある。



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2012年8月8日水曜日

ミンミンゼミの羽化

7月31日~8月1日

家の中にてミンミンゼミHyalessa maculaticollis の羽化を観察した。
アブラゼミの羽化は何度も見たことがあるが、ミンミンゼミの羽化を見るのは今回が初めてであった。

幼虫の体色はアブラゼミに比べて緑がかっており、ぱっと見でアブラゼミとは違うぞ、と感じた。
抜け殻だけでアブラゼミとミンミンゼミを判別するのは少々難しく、なんでもミンミンゼミの方が触角の毛が少ないことや、またアブラゼミは触角の第2節より第3節の方が長いが、ミンミンゼミではほぼ同じ長さであることから判別できるとか。





22:45 羽化の始まり。






22:50

アブラゼミに比べて、体が緑がかっているように思える。





23:02






23:12






23:30






23:43
だんだんと翅が透けてきた。

このあと寝落ちしてしまい、残念ながら羽化の撮影はここまで。

翌朝の様子。
薄緑の体に金色の産毛が生え、実に美しいセミである。


その後元気よく飛んでいった。






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