2011年11月25日金曜日

「西表・石垣の生き物」 ウミアメンボ(の一種)

「西表・石垣の生き物」はひとまず終了と前回言ったのにすみません。まだ紹介したい生き物がいました。


僕は、海岸で物を拾うのが一つの趣味である。小さい頃はもっぱら貝殻集めていたが、最近は海を漂い流れ着く漂着種子を探すことに、特にはまっている。今回西表島を訪れた理由の一つに、海岸で漂着物を拾いたかったことがあげられる。

旅行中、特に前半は、気圧配置の関係で北風が強く、曇りがちで気温がかなり低かった。波はかなり高く、西表島の上原港行きの高速船は外洋を通るために運休が続いていた。


多量に打ち上がった海藻をひっくり返して歩いていると、何やら小さな虫がはねていることに気が付いた。近づいてみると、なんとウミアメンボの仲間であった。詳しい種類は分からなかったが、かなりの数が確認できた。

体長は2~3ミリくらいと小さい。
 ウミアメンボ類は、昆虫の仲間で唯一外洋に進出したと言われる珍奇な仲間である。日本ではコガタウミアメンボ、ツヤウミアメンボ、センタウミアメンボの3種が知られている。ちなみに、外洋性でない種もいくつかあるそうで、例えば「ウミアメンボ」という、この仲間の代表選手のような名前を持つ種は河口など沿岸にすむ。
沖縄大学の准教授である盛口 満さんの著書「ゲッチョ昆虫記―新種はこうして見つけよう (出版 どうぶつ社)」を参考にすると、外洋性のウミアメンボ類は、その生態ゆえ普通は発見が困難であり、極めつけの珍虫とされているようだ。ただし、強風時にまれに海岸に打ち上げられるそうで、今回も強い北風が吹き続けたために、浜に打ち上げられたのだろう。

背面泳ぎをしていて、赤い腹が見える。
捕まえたウミアメンボはしばらくの間生きていて、ビンに入れた水の上を泳いでいた。共食いなどの行動も見ることができた。また、多くの個体が途中から水生昆虫のマツモムシのごとく水面下を背面泳ぎするという、謎の行動も見られた。
村田塾のひげさんは、実はそれが自然な姿なのでは?とおっしゃっていたが、どうなのだろうか。確かに、海面より海中の方が波や風の影響を受けにくく、生活しやすいようにも思うが。
ところで、捕まえた何匹かを、ひげさん経由で盛口さんに送ったところ、ありがたいことにお返事が来た。それによると今回の個体は幼虫であるとのこと。残念ながら種類は専門の方に聞かないと分からないということだった。

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2011年11月16日水曜日

「西表・石垣の生き物」 セマルハコガメ Cuora flavomarginata

西表島、南風見田の浜のほど近くの道の側溝にセマルハコガメがいた。垂直な側溝の壁はカメにはとても登れそうにない。ということで出してあげることにした。
箱になりました

セマルハコガメは絶滅危惧Ⅱ類、国の天然記念物に指定されている。名前の由来は、危険を感じると甲羅の中に手足をすべてしまい、箱のようになってしまうことから。
日本では西表島と石垣島に分布し、日本のものはヤエヤマセマルハコガメという亜種とされている。
側溝は、小さな野生動物にとって脅威だ。特に壁が垂直の場合、よじ登ることができずに死亡することも多い。
西表島では、野生動物が元に戻れるようにと側溝の壁に傾斜がつけられているものが多かった。しかし、セマルハコガメのいた辺りではそのような配慮がなされていないように見えた。(もしかすると何かしらの配慮が行われていたかもしれないが)

ひとしきり観察したあと、ハコガメを側溝より内陸側の茂みに放した。彼(彼女?)はゆっくりと奥へ消えていった。また側溝に落ちないことを祈るばかりであった。

西表島は豊かな自然に恵まれた島である。一方で人々の暮らしが必ずしも自然に配慮したものではないと感じた。特に感じたのが高速で走る自動車の存在であった。
島内の道路は時速30キロ制限となっている。しかしそれを大きく超える速度で走っている車が多かった。それらの車が島民の運転するものなのか、島外の人が運転するレンタカーなのかは分からないが。
最近行われた道の拡幅により高速化が進んだのだろうか、イリオモテヤマネコの交通事故件数はここのところ増加しているという。恐らくハコガメなども同じような状況にあるのだろう。島内の道は集落の周辺以外は森やサトウキビ畑しかなく、スピードを出したい気持ちは何となく分かる。しかし、貴重な生物が住んでいるのを知りながら速度違反を行うことは、僕には全くもって理解できないことである。
様々な生き物と出会えて楽しかった旅であったと同時に、人と自然の共生の難しさを改めて考えさせられる旅でもあった。


今回で記事数は50となりました。
これで、ひとまず「西表・石垣の生き物」については終わりにします。冬にネタがなくなったら再び取り上げるかもしれません。

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2011年11月14日月曜日

「西表・石垣の生き物」 ヤエヤマムラサキ Hypolimnas anomala

海外から偶発的に入っていくる蝶を迷蝶と呼ぶ。以前紹介したクロマダラソテツシジミもこの一つとされている。
今回、西表島で特に見られた迷蝶がヤエヤマムラサキであった。名前に八重山、とあるが、西表島をはじめとする八重山諸島には未だに定着はしていないそうだ。
多くの蝶はオスが鮮やかな翅を持つが、本種はメスが紫に輝く翅を持ち、オスはもっと地味な色である。
写真は交尾中の本種であるが、昆虫なら普通6本ある足が4本しかないのが分かるだろうか。
実は、ヤエヤマムラサキの属するタテハチョウの仲間は前足が退化していて足が4本に見えるのだ。ただし、前足は消えたわけでなくてしっかりと残っている。wikipediaなどの記述を参考にすると、感覚器官として役立っているそうだ。

本種の幼虫の食草はオオイワガネ(イラクサ科)という樹木。沖縄ではあちらこちらに生育する植物らしい。泊まった宿で出会った蝶屋の方にポイントを教えていただき、この植物につくヤエヤマムラサキの幼虫を見ることができた。


食草があるのに定着できないというのは不思議である。冬の低温に問題があるのだろうか。冬を越した例もあるようだし、簡単に決めつけることはできないと思うが。

2013年12月 追記
先日購入した「フィールドガイド 日本のチョウ 日本蝶類保全協会 編 誠文堂新光社(2012年4月30日 発行、8月20日 第2刷)」によれば、継続発生が見られるもの、全く見られない年もあることから完全に定着しているとは言えないそうだ。
冬期の気温は年によって異なるから、現状では暖冬の年に限って越年が可能ということなのだろう。
地球温暖化が騒がれているにも関わらず、日本の冬はいつも通り(ここ数年はいつも以上に?)寒い。いくら地球全体の平均気温が高くなっているとしても、厳しい冬の寒さがある限り南方系のチョウの北上は容易ではないと思う。


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「西表・石垣の生き物」 タイワンヒグラシとイワサキゼミの声。 Noise of Pomponia linearis and Meimura iwasakii

前回紹介したイワサキゼミ、それとタイワンヒグラシの鳴き声を You Tube にアップしました。

タイワンヒグラシhttp://www.youtube.com/watch?v=HuFeIX-Qh7M
イワサキゼミ  http://www.youtube.com/watch?v=xBGWGzGbH60

ちなみに、タイワンヒグラシは日本では西表島と石垣島に生息する大型のセミ。世界最大のセミとして有名なテイオウゼミと同属とされているようだ。
夕方から、金属的で何とも形容しがたい声で鳴く。僕が石垣島の万勢岳近くで聞いた時には、17時30分ごろから鳴き始めていた。
かなり遠くの個体だったので鮮明には撮れず。

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2011年11月6日日曜日

「西表・石垣の生き物」 イワサキゼミ Meimura iwasakii

10月中旬の西表島と、石垣島の郊外はどこへ行ってもイワサキゼミの鳴き声で溢れていた。

イワサキゼミは秋を告げるセミとして有名なツクツクボウシと同じMeimura属に属するセミ。
発生時期は8月~12月と、日本産のセミで最も遅くまで鳴く種である。場合によっては年明けまで鳴くこともあるらしい。
鳴き声は、僕には「ゲーツ、ゲーツ、ツクツクツク…」という風に聞こえた。ただし、図鑑やwebサイトによって様々な聞きならしが書かれているから、僕の書いた鳴き方が実際の声を正確に表せているわけではないと思う。


石垣島のバンナ公園では、羽化してすぐらしいメス(お尻の産卵管が目立つ)と、その抜け殻をまじかに観察することができた。
緑色を基調とした複雑な模様が美しいセミである。







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「西表・石垣の生き物」 チャイロマルバネクワガタ Neolucanus insularis

大富林道を歩いていると、前方から地面すれすれを茶色い虫がこちらへ向かって飛んできた。
と、そいつは僕の靴にぶつかるように着地した。
チャイロマルバネクワガタのオスであった。今回の旅で、特に会いたい虫のひとつだったから実際に手に取ることができて感激した。

チャイロマルバネクワガタは西表島と石垣島の特産種。10月が発生期である。クワガタの時期にはかなり遅い気もするが、八重山の10月は、朝晩は涼しいものの日中はまだまだ暑いから、クワガタの活動には適しているのだろう。
このチャイロマルバネクワガタは、樹液にはほとんど集まらず、日中に林縁の道路やススキ原の上を飛び回る変わった習性を持つそうだ。今回の旅で見つけた3個体も全て林道を飛んでいたり、路上を歩きまわっていたものである。

ところで、今回見つけた個体は全てオスであった。写真を見て、なんだ、メスじゃないか、と思う人もいるかもしれないが、この種はオスでも大あごがあまり大きくないのだ。(もちろん、メスの大あごの方がもっと小さい)
旅行後に家の図鑑を見ると、メスは林の中にいることが多く、オスのように林道などを飛び回ったり歩き回ったりすることが少ないようだ。それを覚えて旅行に行くべきだったと少し後悔している。

次回は是非、メスも見つけてみたいが、10月は学校の授業がある。社会人になっても仕事があるのはほぼ間違いない。

一体、今度はいつ行くことができるだろうか。


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2011年11月2日水曜日

「西表・石垣の生き物」 オオジョロウグモ Nephila maculata

手の方が後ろ。手よりは若干小さいです
大富林道のいたるところでオオジョロウグモを見かけた。

オオジョロウグモは日本最大のクモだ。最大で胴体の長さが5センチに達する。僕が見た個体で最大のものは足を広げた大きさが恐らく15センチくらいあった。
内地で見られる網を張るクモで大型のものはジョロウグモやコガネグモなどだと思うが、これらはせいぜい2.5~3センチである。虫好きの僕でも、触るのがためらわれる大きさと存在感であった。

オオジョロウグモは体だけでなく網も大きい。別の日に、カヌーに乗っている最中、幅2メートルを越える川をまたぐように張られた本種の網を見た。
網の強度もかなりのもののようで、コウモリや小鳥がかかって食べられてしまった例もあるそうである。「オオジョロウグモ シジュウカラ」とか、「オオジョロウグモ コウモリ」と検索すると、かなりショッキングな写真が出てきた。

網を観察すると、多数の小さなクモがいることに気が付いた。網にかかった小さな虫や、網の主の食べ残しなどを食べるイソウロウグモの仲間だ。恐らくアカイソウロウグモかミナミアカイソウロウグモという種類と思われるが、写真が不鮮明なこともあり同定はできなかった。










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