2011年10月30日日曜日

「西表・石垣の生き物」 オキナワウラジロガシ Quercus miyagii

大富林道を歩いていると、うぶ毛の生えた大柄なドングリが転がっているのを発見した。オキナワウラジロガシである。いくつか拾って持ち帰った。
オキナワウラジロガシはブナ科の常緑高木。日本固有種で、奄美大島から西表島に分布する。ドングリをつけるブナ科の樹木の多くは、実を多くつける成り年と、ほとんどつけない不成り年を繰り返すが、村田自然塾のひげさんこと村田さんによれば、今年は成り年であるという。幸運であった。
右が村田さんにいただいたオキナワウラジロガシ

その特徴はなんといっても巨大なドングリをつけること。本州で最大のドングリをつけるクヌギのドングリと背比べをさせた写真を見れば、一目瞭然だろう。
ちなみに重さを測ったところ、クヌギが最大10グラム、オキナワウラジロガシが最大20グラムであった。無論、重量はドングリの乾燥具合によって変わるからそこまであてにならないかもしれない。また、木によってつけるドングリのサイズにはばらつきがあり、村田さんにいただいたものや石垣島で拾ったものは、非常に大きかったが、最初の写真のドングリはクヌギより一回り大きいだけであった。


ドングリの落ちていた上を見上げると、まだ多く樹上になっていた。
オキナワウラジロガシのドングリはリュウキュウイノシシの重要な食べ物のひとつだそうだ。昼間僕が歩き回っていた木の下を、夜はイノシシたちが食事に訪れに来ているのかもしれない。


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2011年10月28日金曜日

「西表・石垣の生き物」 ナリヤラン Arundina graminifolia

西表島の林道の斜面にナリヤランの群落を見つけた。林道沿いには他にも似たような雰囲気の斜面がいくつか見られたが、コシダというシダ植物が繁茂するばかりでナリヤランが見られたのはここだけであった。図鑑でその存在を知ってからずっと見たいと思っていたナリヤラン。まさかここまで大きな群落を見られるとは思っていなかった。


ナリヤランは、日本では西表島と石垣島に分布するラン科の多年草。園芸植物のカトレアにも似た美しい花をつける。
ナリヤとは、西表島の湾内に浮かぶ内離島にかつてあった成屋集落に由来するという。ただし、どういう理由で成屋集落が名前の由来になったのかについての記述は見当たらなかった。
ナリヤランは日当たりの良い場所を好んで生育するそうだ。そのため、草原で一時的に大群落を作っても植生の遷移とともに姿を消していき、そのため同じ場所で長期にわたり見られることは少ないらしい。今回見つけた群落も、数年後には姿を消してしまっているのだろうか。




左下は実









2012年11月14日 題の学名をArundina bambusifoliaからA.graminifoliaに訂正しました。これは、日本の野生植物(平凡社)や、山に咲く花(山と渓谷社)に従ったものです。今までの学名は西表島フィールド図鑑(実業之日本社、横塚眞己人 著)によるものでした。ただし、2つの学名で調べてみても、出てくる写真の差異はよく分かりません。一応、訂正した方の学名が多数派らしい、ということで。

2013年12月
BG Plant(http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html)を参考にすると、標準の学名がArundina graminifoliaで、異名(synonnm)としてArundina chinensisがあるそうだ。とすると、A. bambusifoliaは完全に別の種のことを指しているのかもしれない。

2017年8月
A. bambusifoliaA.graminifoliaの異名(シノニム)でした。イギリスのKew植物園のウェブサイト「World Checklist of Selected Plant Families」によれば、Arundina(ナリヤラン属)はA.graminifoliaのみ(+亜種のA.graminifolia ssp. caespitosa)が有効な学名(accepted name→適切な訳語が見つからない)として認められていて、現状では他の学名は全て異名。



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「西表・石垣の生き物」 ニッパヤシ Nypa fruticans

注:これは帰りの写真です
エコツアーを行う村田自然塾のひげさんこと村田行さんの案内で、船浦湾にそそぐヤシ川を上流へとのぼった。この日は北風が強く海はかなり荒れていたが、マングローブ林に囲まれるヤシ川はそれがうそのように静かで、樹冠を揺らす風の音がざわざわと聞こえるだけであった。ひげさんの話によれば、地元では台風の際に船をマングローブ林内に避難させるのだそうだ。なるほど、である。

オレンジ色のものは花
密生したマングローブをかき分けるようにカヌーで進み、ようやく国の天然記念物に指定されているニッパヤシ群落についた。
ニッパヤシはマングローブ湿地に生えるという特異な生態を持った一属一種のヤシである。普通のヤシに見られるような幹は持たず、泥から出ているのは葉っぱだけである。日本では西表島の内離島と、ここ船浦の2か所にだけに自生し、特に船浦の群落は自生の北限地として天然記念物に指定されている。なお、海外から流れてきたとみられる果実は海岸に数多く漂着する。

オヒルギなどのマングローブが生い茂る林内において、ニッパヤシの周りだけは木が見られず明るかった。これは、衰弱傾向にあったニッパヤシに日光が当たるようにと、人為的にオヒルギなどを伐採したためだそうだ。はじめて来た僕にはいたって元気なように見えたが、ひげさん曰く背丈が以前の半分程度になってしまったのだそうだ。群落がこれからも存続し続けるのか、それとも無くなってしまうのか。僕には全く分からないが、最北の群落としてこれからも残り続けてほしいものである。
漂着した果実







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2011年10月24日月曜日

「西表・石垣の生き物」 ミナミトビハゼ Periophthalmus argentilineatus

西表島の川べりの湿地やマングローブ林においてよく見られたのがミナミトビハゼである。魚のくせに陸上でぴょんぴょん飛び跳ねる。また水に潜るのは嫌いなようで、逃げる時も水面を跳ねるように移動していく。


ミナミトビハゼは沖縄方言で「トントンミー」と呼ばれる。ぴょんぴょん跳ねるもの、という意味らしい。なんだか島人の、この愛らしい魚への気持ちが感じられる温かみのある呼び名だなあ、と思った。



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「西表・石垣の生き物」 クロマダラソテツシジミ Chilades pandava

10月15~23日に訪れた西表島と石垣島では様々な生き物たちに出会うことができました。その一部をこれからしばらくに渡り紹介したいと思います。


離島ターミナルは八重山の各島への船の出発港である
石垣島離島ターミナルのすぐ近くでクロマダラソテツシジミを見つけた。かなりの数であった。
新芽がひどく食われていた。
クロマダラソテツシジミはもともと日本に生息しておらず、台風などに乗って偶発的に外国からやってくる迷蝶と呼ばれるチョウであるらしい。しかし、幼虫の食草であるソテツは八重山において各地で栽培、また自生しているので、それをエサに一時的に大発生することがあるようだ。離島ターミナルの周りに植栽されたソテツの葉っぱはボロボロになり、何とも無残な姿だった。これではもはや害虫である。この勢いなら近々迷蝶でなく、土着種の仲間入りを果たすのでは、と思ってしまうがどうなのだろうか。
最近では、沖縄に限らず本土でも時たま発生して話題になるようだ。僕もこのチョウが東京で発生したことについて書かれた新聞記事を読んだ記憶がある。

クロマダラソテツシジミはシジミチョウの仲間だけあってかなり小さい。しかし、♂の翅の表は青に輝き、また裏面も独特のまだら模様をしていてなかなか美しいチョウである。







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2011年10月12日水曜日

石垣・西表島旅行について

前回の旅行より リュウキュウアサギマダラ
10月15日(土)~23日(日)に、石垣島と西表島へ一人旅行に行くことにしました。石垣・西表には今年2月にも訪れており、今回が2回目となります。
日程上、学校は1週間休むことになります。なぜ夏休みでなくこの時期を選んだかというと、季節風の影響で海岸への漂着物が多くなったり、この時期固有の昆虫が見られたりすると考えたからです。学園祭の展示資料を集めるという目的もあります。集落などを訪れることもあるかと思いますが、観光名所を巡るつもりはありません。
いくつか行きたい理由は挙げましたが、学校を休んでまで行く必要があるのか?と聞かれたら、はっきりと答えられる自信はありません。自分はあまり学業のできる方ではないこと、所属サークル(管弦楽団)を長期にわたり休むことになることなどから、旅行へ行くことへの不安や後ろめたさを持っているので。自然を相手にするので、十分な収穫が得られるかも不明です。
それでも行くと決めた以上、なるべく有意義な旅行となるように努力したいと思います。


前回の旅行より カンムリワシ

旅行に関しての記事ですが、旅行中に出会った生物については本ブログで、旅行記については「てっちゃんの庭」という別ブログで取り上げていきたいと思います。

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2011年10月10日月曜日

ハラビロカマキリ Hierodula patellifera

画面のハラビロと格闘?
友達が教室にハラビロカマキリを持ってきた。普通に撮るのは面白くないので、インターネットで同種を検索して、それを背景に撮影してみた。

つい最近まで、ハラビロカマキリ以上のサイズのカマキリ(つまりハラビロとオオカマキリ)がちょっと苦手であった。小学1年生の時、友達が僕の手に乗せてくれたやつが、いきなり小指をかじってきたという嫌な経験があるからだ。嫌な経験、というよりも「カマキリに食われた」という恐怖体験、といった方が正しいかもしれない。
苦手意識が薄れた今では、平気で手に乗せることができるようになった。でも、エサと勘違いされないように、指を微動だにさせないことだけはいつも心がけている。


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2011年10月7日金曜日

トキホコリ Elatostema densiflorum

葉の付け根のモサモサが花である。
我が東京農工大学が誇る?トキホコリを撮影してみた。
トキホコリはイラクサ科の一年生草本。全長は学校に生育するもので5~10センチといったところで非常に小型である。(図鑑には最大20センチとある)
「トキ」が時々、「ホコリ」がはびこるとか茂るという意味だそうだ。名前からすれば、繁殖力はそれなりにあることが想定される。
かつては湿り気の多い場所で普通に見られたそうだが、今ではレッドデータで絶滅危惧Ⅱ類に指定されるほどの希少種である。ちなみに大学がある東京都では最も高いランクの絶滅危惧Ⅰ類となっている。

小さいうえに一年草のトキホコリ。日向では乾燥に耐えられないだろうし、日陰でも草刈りなどの人の管理が加わらない限り、ドクダミやアマチャヅルなどの多年草に場所を奪われてしまうだろう。逆に草を根こそぎ取るような過度な草刈りも、地中に地下茎などを持たないトキホコリにとっては好ましくないだろう。減少理由はよく分からないが、宅地化による乾燥化や、人の管理方法の変化が影響しているのかもしれない。
(ここからは完全な推論です・・)トキホコリの本来の自生地は、恐らく洪水のたびに植生が破壊され、また常に湿り気のある土質の川べりなのではないか、と思う。洪水で裸地になったところにいち早く進出し、多年草が進出する前に世代交代を行い、また新天地へと進出していく。こんな生態を持っていたのでは、と推測する。もっとも、上流のダム建設で洪水が起こりにくくなったり、護岸工事が行われてしまった現代の川もまた、トキホコリには厳しい環境になってしまった、とは思うが。

はっきり言ってあまり目立たないトキホコリ。学内に自生しているという話を聞いていなかったら、その存在に全く気付かなかったと思う。しかし貴重な種であることには違いないし、これからも大切にしていきたい種である。





(※農工大のトキホコリ自生地)
正門を入って正面の突きあたりに本館があります。そのわきに「絶滅危惧種 トキホコリ自生地」の看板があります。夏から秋にかけて看板の奥の地面を探せば、この小さな絶滅危惧種に会うことができるでしょう。


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2011年10月5日水曜日

クズ(花) Pueraria lobata

クズの花が咲いていた。
クズはマメ科の多年生草本である。場合によっては根元が木本化することもあるというからつる性木本とも言える。根にはでんぷんが豊富に含まれ、いわゆる葛粉の原料となる。
クズはつる草の代表選手である。その繁茂の仕方は尋常ではない。空き地や高速道路の路肩をひと夏で一気に覆いつくしてしまう。アメリカでは帰化して猛威をふるっているそうである。日本でいうアレチウリ(特定外来生物と日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている)のような存在なのだろう。

そんなクズであるが、花はなかなかに美しいものである。同じマメ科で、園芸植物のルピナス(ノボリフジ)に似ているかもしれない。ススキやハギ、ナデシコなどと共に秋の七草のひとつに数えられているから、昔からその美しさは認められていたのだろう。しかし、旺盛に茂った葉っぱの陰でひっそりと咲いていることが多いから、意外と気づかない人が多いのではないかと思う。







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2011年10月2日日曜日

ブログ名の変更

明日から大学の新学期が始まるのに合わせてブログ名を変更しました。
以前の「てっちゃんの部屋」という名前は、ブログの趣旨が分かりづらいと思ったので。(実際googleで検索すると鉄道マニアのサイトと並んで出てきます・・・)

よろしくお願いします。

ヒラタドロムシ(幼虫)

野川(小金井市の貫井大橋近くにて)
学校のサークルで、多摩川の支流のひとつの野川の生物調査を行った。この調査で見つけた生物のひとつがヒラタドロムシの幼虫だ。
ヒラタドロムシはヒラタドロムシ科の甲虫。成虫は7~8月に見られるそうだ。幼虫は川底の石に張り付いて生活する。日本にはこの科が10種類ほど確認されているようだが、特徴からいって恐らくノーマルのヒラタドロだと思う。(違ったいたらご指摘いただけると嬉しいです)
ヒラタドロムシは「きれい」な水質の河川の指標種とされている。つまり野川の水質はかなり良い、ということになるのだろう。

ヒラタドロムシ幼虫(左下はヒラタカゲロウの一種の幼虫)

ヒラタドロムシの幼虫は非常に独特の形をしている。まるで古代生物の三葉虫みたい、といったところか。おおよそ甲虫の幼虫とは思えない。もしこの虫の正体を知らずに見たら、昆虫とすら思わなかったかもしれない。
この円盤状で扁平な形は、水の抵抗を最小限に抑える役目をはたし、それにより流速の早い川の中・上流域での生活に適応していると考えられる。
裏面。6本の足と、白いエラが見える。
それにしてもカブトムシなどと同じ甲虫に属する虫の幼虫が、このような姿をしているとは。昆虫の多様性を改めて感じた。











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