2012年2月25日土曜日

帰化植物について考える-史前帰化植物について (自身の備忘録も兼ねて)

帰化植物の一つ オオブタクサ
・帰化植物とは

セイタカアワダチソウ、セイヨウタンポポ、アレチウリ・・・
これらは帰化植物と呼ばれる植物である。

帰化植物は、(意図の有無に関わらず)人の手によって外国から日本にもたらされ、野生化した植物のことである。
一般的に、明治維新前後からあとに日本に入り、野生化したものを指す。また、ヨーロッパ諸国との交流が始まった安土・桃山時代以後に入ってきたのものまでを帰化植物とする見解もある。 
明治維新以後に入ってきたのものにせよ、安土・桃山時代以後に入ってきたのものにせよ、あるいははさらに前に入ってきたにせよ、帰化植物として扱われる植物は「いつ頃、入ってきたのか」という情報が、過去の記録として残っている。逆にいえば、記録が残っているからこそその種が自然に分布していたものでなく帰化植物である、と断定できるわけだ。

しかし、一方でこういう考え方もできる。
「記録が残るより前に人の手により入ってきた植物、つまり帰化植物として記録されていない帰化植物はないのだろうか」と。

・史前帰化植物について

ここで出てくるのが史前帰化植物というものである。
史前帰化植物とは、前川文夫氏によって1943年の論文において提唱されたものである。
前川氏が論文で史前帰化植物として挙げているものの一部を紹介すると
スイバ、ナズナ、グンバイナズナ、カタバミ、オオバコ、ハハコグサ、アキノノゲシ、エノコログサ、コナギ、ツルボ、ヒガンバナ、・・・(論文は1943年のものであり、論文中では表記が現在と異なるものもある)
このうち、グンバイナズナは江戸時代に渡来したとされ、広く帰化植物として扱われるが、他の種類については大抵の場合、在来種として扱われるものである。
上にあげた種に限らず、身近に生える草本、つまり一般に雑草と呼ばれる植物のかなりが、史前帰化植物として挙げられている。
前川氏は史前帰化植物を大きく3つのグループに分けて考えている。
(内容は1943年の論文にしたがっている。かっこ内で一部補足した)

一つ目が、ヨーロッパなど大陸に分布し、また越年生草本(秋に発芽し、翌年春に開花するもの)や、春に開花する多年生草本であるもの。上にあげたものでいえば、スイバ、ナズナ、グンバイナズナ、カタバミ、オオバコ、ハハコグサである。
これらは、有史(日本は3世紀ごろと言われる)初期に日本人が大陸文化と接触した際、中国大陸から入ってきたと考えられる。
(⇒1943年の論文中では大陸文化、と書かれていて具体的でないが、のちに麦類栽培の伝来、とされたようだ)

二つ目が、南方にも分布し、一年生草本(春に発芽し、夏~秋に開花するもの)や、夏~秋に開花する多年生草本であるもの。上にあげたものでいえば、アキノノゲシ、エノコログサ、コナギである。
これらは、有史以前の稲作伝来とともに入ってきたと考えられる。
(⇒稲作はどこから伝わってきたのか諸説ある)

三つ目が、中国大陸に分布し、多年生草本(球根等持つもの)であるもの。上にあげたものでいえばツルボ、ヒガンバナである。
これらは大陸から芋類などの運搬時に混入してきたと考えられる。
(⇒今ではヒガンバナなどは観賞用として持ち込まれたとも考えられている)

史前帰化植物という考想は、前川氏が第二次世界大戦中(論文自体、戦時中に書かれている)に兵士として中国大陸に渡っているときに、現地の植生を見たのがきっかけとなっている。また史前帰化植物として挙げた種が、日本において農耕地周辺では生育しているのに、(農耕地周辺に環境のよく似た)自然植生の中には生育が見られないことがこの説の根拠となっている。

以上、まとめてみた。
史前帰化植物、という考え方はかなり最近のものなのかな、と思っていたので、今から約70年も前、しかも戦時中に提唱された説だというのは驚きであった。
今回は論文の内容をまとめただけになってしまったが、自分なりに疑問もあるのでそれについてまた今度書いてみたいと思う。


史前帰化植物についてはほとんど1943年の論文を参考にしました。そのため、現在の学説とは異なる内容も幾分あるかもしれませんが、そこはご容赦願います。また論文は下の参考URLをクリックすればみることができます。

・参考
・日本帰化植物写真図鑑 <編・著>清水矩宏、森田弘彦、廣田伸七 全国農村教育協会
・史前歸化植物について 前川文夫 1943-11-1 (Cinii より 参考URL)


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