2013年3月25日月曜日

カワゴロモHydrobryum japonicum    コケのような姿の種子植物

研究室の方々と植物観察、調査のために鹿児島を訪れた。鹿児島大の方に案内していただき、様々な植物に出会うことができた。

空港に到着した日の午後、大隅半島の錦江湾側へ流れる神川(神ノ川)を訪れた。ここはカワゴロモという植物の自生地のひとつである。
観察風景
中流にある自生地に向かい、早速観察を開始した。




水際にゼニゴケのような植物がびっしりと付いていた。これがカワゴロモである。タイ類や地衣類そっくりの姿でとても種子植物には見えない。柔らかそうな見た目だが、触ってみると意外に分厚くしっかりしていた。




この日はしばらく雨が降っていなかったため、水位がかなり下がっていたとのこと。雨が降れば水中に没してしまうと思われる。




水中の様子。左下から長く伸びているのが恐らく針状の葉である。最初の写真でぼさぼさ生えて見えるのも恐らく葉なのだと思う。上の方にこぶ状のものが見えるが、これが何かは分からない。花期は10月~12月とのことで、少なくとも花芽や花ではないと思われる。果実かもしれない。


ここでカワゴロモやカワゴケソウ科について少し詳しく。

カワゴロモHydrobryum japonicumはカワゴケソウ科カワゴロモ属の多年生草本。鹿児島県の大隅半島の河川の流水中に生育する。環境省の第4次レッドリストで絶滅危惧IB類に指定される希少種であるが、今回観察した限りは生息地の環境さえ整っていれば旺盛に繁殖する丈夫な植物であると感じた。
日本に自生するカワゴケソウ科の植物はカワゴケソウ属とカワゴロモ属の2属で、カワゴケソウ属2種とカワゴロモ属4種ずつが確認されている。(※2014年10月訂正)
ほとんどの種の自生は鹿児島県本土に限られ、他に屋久島と宮崎県に1種ずつ見られるのみだそう。

分類について
カワゴロモの属するカワゴケソウ科はその特異な形態から近年まで近縁な植物が特定されず、例えば日本の野生植物(1983年5月30日 初版第9刷)には「イラクサ科の原始的なものとするか、ユキノシタ科またはベンケイソウ科の極端に退化したものとするなどの見解があるが、定説はない」と書かれている。 形態ではどの植物ともうまく結び付けられなかったカワゴケソウ科だが、近年の分子系統解析により「真正双子葉類のキントラノオ目に属するオトギリソウ科(Hypericaceae)と近縁である」(日本植物学会 カワゴケソウ科から探る植物の形態進化http://bsj.or.jp/jpn/general/research/08.phpより引用)と特定されたそうだ。


形態を見てみる。
先にぼさぼさと生えているものは針状の葉、と書いた。では岩にへばりついているものは何かというと「葉状体」と呼ばれる光合成機能を持った根であるらしい。 普通の植物では土中に潜って養分・水分吸収や植物体を支える役割を持つ根が、カワゴケソウ科の植物では葉の役割も兼ねている。
そして、葉や花は、茎を経ることなく直接葉状体(根)から生えているそうだ。

おおざっぱに書けば、普通の植物は下へ下へと伸びる根(根系)と、上へ上へ伸びる茎とそこから生える葉や花(シュート系)で構成されているのに対し、カワゴロモ科では横へ横へと伸びる根と、そこから生える葉や花で構成されている、というところだろうか。 
図鑑には流水に適応した形態である、などと書かれているが、流水中に生育する植物は他にもたくさんあり(セキショウモなど)、その多くは水にたなびくような姿をしている。どうしてカワゴケソウの仲間だけはこのような姿になることになったのだろうか。


もっと詳しく知りたい方は日本植物学会 カワゴケソウ科から探る植物の形態進化http://bsj.or.jp/jpn/general/research/08.phpなどを参照していただければと思う。

オトギリソウ科のハチジョウオトギリ。








参考
・日本の野生植物 草本Ⅱ 離弁花類 1983年5月30日 初版第9刷 平凡社
・(社)日本植物学会 カワゴケソウ科から探る植物の形態進化 片山なつ1・厚井聡2・加藤雅啓3
1 金沢大・院・自然科学,2 奈良先端大・バイオ,3 国立科博・植物)
http://bsj.or.jp/jpn/general/research/08.php(2015年3月24日現在)





(※)2014年10月10日
以前までは日本に自生するカワゴケソウ属とカワゴロモ属の植物はそれぞれ4種、としていました。しかし、分子系統学的研究による分類ではカワゴケソウ属のうちマノセカワゴケソウとトキワカワゴケソウは、どちらもカワゴケソウにまとめられることになり、カワゴケソウ属の日本自生種は2種、とされたようです。
先日購入した本(「ネイチャーガイド 日本の水草」 角野康郎著 文一総合出版 2014年9月30日 初版第1冊発行)に記述があったので訂正しました。




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