三浦半島の海岸部を訪れた。
神奈川県東部に位置する三浦半島は、横浜や東京都心に近接しており宅地開発が著しい。また、三浦大根やキャベツ、スイカなどで知られるように、平坦地には耕作地も広がる。
その一方で、海岸部や丘陵地には今でもかろうじて自然が残っている。特に、海岸に広がる草原には房総半島と三浦半島、伊豆半島に固有の植物たちが生育しており、全国的に見ても興味深い場所である。
ヒロハクサフジ Vicia japonica var. japonica(マメ科)。
別名ハマクサフジのとおり、海岸部に主に生育する。北日本が分布の中心。
神奈川県では三浦半島に多く、他の地域ではほとんど見られない。
神奈川県東部に位置する三浦半島は、横浜や東京都心に近接しており宅地開発が著しい。また、三浦大根やキャベツ、スイカなどで知られるように、平坦地には耕作地も広がる。
その一方で、海岸部や丘陵地には今でもかろうじて自然が残っている。特に、海岸に広がる草原には房総半島と三浦半島、伊豆半島に固有の植物たちが生育しており、全国的に見ても興味深い場所である。
ヒロハクサフジ Vicia japonica var. japonica(マメ科)。
別名ハマクサフジのとおり、海岸部に主に生育する。北日本が分布の中心。
神奈川県では三浦半島に多く、他の地域ではほとんど見られない。
オオジシバリIxeris japonica(キク科)。
ハマエンドウは、砂浜を主な生育立地とする海岸植物。園芸植物のスイートピーとは同属。
神奈川県植物誌によれば、神奈川県では「海岸線に分布し普通」らしい。しかし、湘南地域の海岸では開発が進み、絶滅状態の場所も多いと思う。三浦半島では今のところ健在のようである。
オオジシバリは内陸にも広く生育するが、海岸でもしばしば見かける。
ミヤコグサLotus corniculatus var. japonicus(マメ科)。
内陸にも生育するが、海岸付近の芝地などで特にまとまって生育しているように思う。
カントウタンポポTaraxacum platycarpum subsp. platycarpum(キク科)。
関東地方を中心に分布する在来タンポポ。近年はセイヨウタンポポに押され気味といわれるが、海岸近くの芝地では本種が優勢だった。
人里に生えるイメージが強いタンポポだが、海岸も案外重要な生育場所なのだろうか。
ところで、千葉県の海岸にはボウシュウタンポポなる種が生えているらしい(本種が記述されている千葉県植物誌を見ていないので、詳細は未把握)。
房総半島と三浦半島に共通して分布する植物は多いが、ボウシュウタンポポはひょっとしたら三浦にも生育しているのだろうか。
ヒゲスゲ Carex wahuensis(カヤツリグサ科)。
がっしりとした姿のスゲ。主に海岸部に生育し、三浦半島の岩礁海岸ではどこでも普通に見かけた。
トベラ Pittosporum tobira(トベラ科)。
海岸近くの低木林の主要構成種。
ありふれた樹木だが、花は美しく香りも良い。
ケナシヒメハギ Polygala japonica forma. nudicaulis(ヒメハギ科)。
ヒメハギは内陸に広く生育する多年草であり、ケナシヒメハギはこれの海岸型品種に当たる。茎葉が無毛で光沢を持つことが特徴である。
本品種は近田文弘氏によって近年記載されたものであり、神奈川県植物誌2001や主要な図鑑には名前が出ていない。
僕自身、最近入手した「伊豆須崎 海岸草木列伝」で初めてその存在を知った。
ところで、ケナシヒメハギを観察したのとは別の海岸では、茎に毛がある個体も見つけた。これはいわゆる”ふつうの”ヒメハギに当たるのだろうか。また、茎が有毛の個体でも葉がやや分厚く光沢を持っているものもあった。
ヒメハギとケナシヒメハギははっきりと二分できるものではなく、形態は連続的に変化しているのではないかと思う。
テリハニオイタチツボスミレ Viola obtusa var. nuda(スミレ科)?
テリハニオイタチツボスミレ(別名ケナシニオイタチツボスミレ)は、花柄に毛が無いことでふつうのニオイタチツボスミレと区別される。
今回観察した個体はいずれも花柄が無毛であり、テリハニオイタチツボにあたると思われた。
悩ましいことに、神奈川県植物誌2001によれば、ニオイタチツボスミレにはハマニオイタチツボスミレV. obtusa var. lucidaという海岸型の変種もあるらしい。ハマニオイ~は、花柄が無毛なことに加えて葉に光沢があること、花の色がより濃いことなどが特徴らしい。
僕が観察した個体はテリハニオイタチツボなのか、それともハマニオイタチツボなのか、図鑑の記述を見ただけでは判断ができない。
ヒメハギやニオイタチツボスミレに限らず様々な植物で、海岸特有の変種や品種が報告されている。これら海岸型変種・品種は、典型的な個体は内陸のものと形態(例えば茎葉の毛の有無、葉の光沢の有無や厚さ)が明らかに異なるのだが、それに混じって中間型と思われるものも生育しており、種同定の際の悩みの種である。
<参考>
神奈川県植物誌調査会 2001. 神奈川県植物誌2001. 神奈川県立生命の星・地球博物館. (各種の特徴、ハマニオイタチツボスミレについて)
近田文弘 2007. 伊豆須崎 海岸草木列伝. トンボ出版. (ケナシヒメハギについて)
Konta F. , Matsumoto S. 2006. New or Interesting Angiosperms from Suzaki, Shimoda City, Central Japan. Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany 32: 35-45.
邑田 仁・米倉浩司 2012. 日本維管束植物目録. 北隆館. (学名を引用)
2 件のコメント:
フォト蔵の雑草です。
ケナシヒメハギの存在を初めて知りました。実は気になるヒメハギと思われる草を見つけて、当時はヒメハギも知らずに牧野図鑑でようやくたどり着きました。ところが違和感がありネットでも見たのですが疑問が残り、茨城の生物の会の先生もヒメハギだろうとのことで、私としては未解決のままでした。
貴ブログで海岸型のケナシヒメハギでなんとなく納得しました。手持ちの画像を探しましたが一枚しか見つかりませんでした。
でも見つけた場所が茨城県笠間市で海からは遠いのでなお検証が必要ですが、ここ数年現地では見つからなくなってしまいました。フォト蔵にその画像をのせてみます。
雑草さま
フォト蔵でいつもお世話になっています。
ヒメハギは形態の変化を起こしやすい植物なのかもしれませんね。
フォト蔵の写真のこと、ありがとうございます。見てみたいと思います。
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