2015年3月7日土曜日

オーストラリアの生き物 アオアズマヤドリPtilonorhynchus violaceus のバワー

The Bower of Ptilonorhynchus violaceus (Satin bowerbird)

2014年9月10日

シドニー近郊のブルーマウンテンズ国立公園にて。


森林内の遊歩道を歩いていると、左手前方に、青いものが散らばっているのに気がついた。

アオアズマヤドリPtilonorhynchus violaceusの巣である。
正確には、子育てに使う巣とは全く異なるバワーBower(あずまやの意味)と呼ばれるもので、オス鳥がメスを呼ぶことを目的に作るものだ。

アズマヤドリ(ニワシドリ)の仲間は、オスがメスを呼ぶ為に手の込んだバワーを作ることで知られ、僕もテレビや本を通して知っていたが、本物を目にすることができるとは思わなかった。

ちなみに、バワー(あずまや)という語が小屋状の構造物のみを指すのか、それとも装飾品が散りばめられた周囲の広場(広場も、アズマヤドリが林床の落ち葉を除けて作り出したもの)も含めた全体を指すのかは、調べた限りではあいまいで、両方の記述が見られた。

ここでは、アズマヤドリの研究者のサイト(Sexual Selection in Bowerbires) などを参考に、「広場も含むアズマヤドリが作り出した構造物すべて」をバワーとして話を進めたいと思う。


バワーの中央には、小枝か草本を集めた小屋状の構造物がある。
アオアズマヤドリのものは、2列平行に枝を立てていることから「並木型のあずま屋」などと呼ばれている。

オスは、並木の間に入ったメスを相手に、求愛行動を行うのだそうだ。

あずま屋の周囲の広場には、青色のものが集められている。そのほとんどは、人が作り出したプラスチック製品。
僕の見たバワーでは、ペットボトルのキャップや洗濯バサミなどが多く使われていた。





現地では人家の庭にやってきて、洗濯バサミを持ち去ってしまうことがあるようだ。
(参考:AUS アンティーのブログ

現地で観察しているときには気付かなかったが、撮影した写真を拡大してみると、青色のもの以外も集められていることが分かった。

左の写真に写っているのはセミの抜け殻。
(枝に紛れて分かりづらいので、矢印で示しました。)

こちらはカタツムリの殻と、タマネギの切れ端。
アオアズマヤドリは果実食性の強い雑食だそうで、タマネギも食料である可能性は否定できないが、おそらく装飾に使われているのだと思う。
人間の目には、タマネギの切れ端は魅力的なものとはとても思えないが、白色で光沢があるので、アズマヤドリには案外美しく見えるのかもしれない。


バワーに用いられている青色の飾りものは、ほとんどが人工物で、少なくとも観察地においてアオアズマヤドリは現在、バワー作りにあたって大きく人間に依存しているといえる。
かつては青色の羽根などを用いていたそうだが、天然物でほかに青色のものは多くなく、探すのは並大抵の苦労ではなかっただろう。そもそも、現在のように青色を主体に飾ることができたか疑問に思う。手に入れるのが困難な青色のものを集めること自体、オス鳥の行動力や頭脳の高さをメスにアピールする重要な手段となっていた(る)のかもしれない。




<参考>
・松本忠夫 1993. 生態と環境 生物科学入門コース7. 岩波書店.
・Bowerbird.  http://www.i-younet.ne.jp/~basaract/bowerbird.html (鈴木まもるさんのwebページ)(2015年3月7日現在)
・Sexual selection in Bowerbirds  Borgia Lab Web Site. http://www.life.umd.edu/biology/borgialab/ (2015年3月7日現在)
・AUS アンティーのブログ -AUS Auntie's Blog http://oceanbirds.blog134.fc2.com/blog-category-21.html (2015年3月7日現在)
・Wikipedia 英語版 Satin bowerbird  http://en.wikipedia.org/wiki/Satin_bowerbird (2015年3月7日現在)


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