時系列がずれてしまいますが、昨年訪れたオーストラリアで観察した生き物について。
ブルーマウンテンズを代表するThe Three Sisters |
世界自然遺産に登録され、奇岩やユーカリを中心とした豊かな森林が広がる観光名所でもある。
道沿いの植生を観察しながら歩く。
水分条件が良好と思われる谷間などでは、高木層にユーカリ属(Eucalyptus)が優占し、亜高木~低木にはバンクシア属(Banksia)を始めとするヤマモガシ科や、アカシア属(Acacia)を始めとするマメ科、木生シダのヘゴ属(Cyathea)などが見られる。
観察地は標高約1000m。日本では主に亜熱帯に見られるヘゴの仲間が高地に生えているのは、何だか不思議だ。
亜熱帯と呼ぶには涼しすぎるブルーマウンテンズだが、気温の年較差が小さく、降雪や降霜がほとんどないことが影響しているのかもしれない。
少し乾き気味の尾根部。
高木層はユーカリ(谷間に生育しているものとは別種かもしれない)で変わりないが、亜高木層に樹高7~8mくらいの常緑樹が目立つ。
近づいて観察してみる。
見覚えのあるような葉だが、分からない。
つぼみがあったので、他に花や実が付いている個体がないか探す。
果実がついている木を見つけた。
思わず「おー」、と声が出る。日本の海岸に生育するトベラ(Pittosporum tobira)にそっくりだったからである。
あとで調べたところ、トベラ属のPittosporum undulatumという種であるらしいことが分かった。
花も咲いていた。
これも日本のトベラによく似ている。
日本では小笠原を除けば海岸部でしか見られず、しかも低木であるトベラの仲間が、オーストラリアでは内陸の森林の構成種であることに驚いた。
オーストラリアといえば、ユーカリやバンクシアなどのイメージが強いが、じつはトベラ科が多様な場所でもあるらしい。
日本ではトベラ属(Pittosporum)1属しか見られないが、オーストラリアではトベラ科に含まれる属全てにあたる9属が生育しそのうち7属はオーストラリア固有なのだそうだ。日本は、トベラ科の分布域の北端といえる。
ちなみに、オーストラリア固有属のうちソリア属(Solya)の一種は、オーストラリアン・ブルーベル、またはヒメツリガネなどの名で日本でも園芸植物として利用されているそうだ。
帰国後に、撮影した写真の中に他にトベラ科がないかを調べると、別属のものが見つかった。
Billardiera scandens と思われる。
ややつる性の低木。観察時には何の仲間か全く見当が付かなかった。
現地ではApple Berryなどと呼ばれ、果実は食用になるらしい。Wikipediaには、リンゴやキウイフルーツに似た味、と書いてあった。
最後に
日本のトベラの果実。(2014年11月撮影)
オーストラリアのP. undulatumのものとよく似ているけれど、日本のトベラは果実が3つに裂けるの対し、オーストラリアのものは2つに裂ける点が異なる。
<参考文献・サイト>
・Margaret Baker Robin Corringham. Native Plants of the Blue Mountains. Boner Bird Books, 2004年 第2版.
・Margaret G. Corrick, Bruce A. Fuhrer. Wildflowers of Southern Western Australia. Rosenberg Publishing, 2009年 第3版.
・Wikipedia 英語版 Billardiera scandens http://en.wikipedia.org/wiki/Billardiera_scandens (2015年3月5日現在)
・Wikipedia 英語版 Pittosporaceae http://en.wikipedia.org/wiki/Pittosporaceae (2015年3月5日現在)
・ガーデニング花図鑑 オーストラリアン・ブルーベル http://sodatekata.net/flowers/page/563.html (2015年3月5日現在)
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