生態学会に参加するため、鹿児島県を訪れた。
志布志市中心部から10kmほど離れたところにある白鳥神社。
山間の集落にあるこの神社には、ハナガガシというドングリが生育している。
この写真は高知県で撮影したもの |
ハナガガシQuercus hondaeはブナ科コナラ属の常緑高木。
四国(愛媛、高知)と九州に分布する日本固有種である。
漢字で書けば「葉長樫」で、本種の葉が細長いことに由来する。
葉裏は鮮やかな緑色で、葉の形状がやや似ているアラカシやシラカシなどで白色~黄褐色を帯びるのとは明らかに異なる。また、冬芽が際立って細長く鋭形なことなども特徴である。
日本において森林の主要構成種であることが多いブナ科にあって、ハナガガシは唯一全国レベルで絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)に指定される希少種。
鹿児島県でも絶滅危惧Ⅱ類に指定され、その分布は限られている。
本神社のハナガガシについては次の文書に詳しい→「白鳥神社の社のハナガガシ(2015年3月28日現在)」。
この報告を書かれた方がどなたなのかは分からないが、地元校区のwebサイト内のページである。志布志自然愛好会(ホームページ無)主催の観察会が行われるなど、地元でも一応知られているようだ。
参道沿いの群落。高木のほとんどがハナガガシで、一部イチイガシやスダジイが混じる。直径1m近く、高さ約25mの大木が林立する様は壮観である。
神社は写真右手の谷部を流れる小川に向かって傾斜する斜面地にあり、このような立地がハナガガシの生育に適しているのだそうだ。
林床の実生。
発芽して間もない個体は多く見られたが、それよりもう少し成長した若木は少なく、明るい林縁に限って生育しているように見えた。
ハナガガシにとって懸念材料と思われるのがモウソウチクである。
写真に写る高さ8mくらいの若木は、真上をモウソウチクにほぼ完全に覆われている。
モウソウチクを始めとするタケ類は、樹木を被陰して光合成を妨げるだけでなく、強風時に大きくしなって枝を折ってしまうこともある。
白鳥神社の竹林が昔と比べてどの程度拡大しているのかは分からないが、ハナガガシの更新に悪影響を与えている可能性は十分に考えられる。
竹林は神社景観の重要な要素ではあるが、貴重なハナガガシに影響を与えているとすれば、いくらかの伐採など管理が必要なのではないかと思う。
サツマイナモリ Ophiorrhiza japonica |
シダ類
アマクサシダ、マメヅタ
単子葉類
マムシグサsp.、ムサシアブミ、ボウラン
(真正)双子葉類
サツマイナモリ、セントウソウ、ツルコウジ、ヤマビワ
<引用・参考>
白鳥神社の社のハナガガシ http://www.mura-saisei.jp/isakida/i_bunkan/sjinjiya/pdf/hanagakasi.pdf (2015年3月28日現在)
鹿児島県有明町伊崎田校区分館ホームページ(※) http://www.mura-saisei.jp/isakida/ (2015年3月28日現在)
※有明町は、2006年に志布志市と合併している。
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