2012年4月26日木曜日

カビゴケ Leptolejeunea elliptica

4月22日
所属する大学の植物研究会の新歓行事の高尾山散策にて観察。天候は曇りのち雨。

カビゴケ(Leptolejeunea elliptica)は、クサリゴケ科のコケ植物。熱帯に広く分布、日本では福島県が北限とのこと。 コケには蘚類と苔類とツノゴケ類に分類されるが、カビゴケはそのうち苔類であり、有名なゼニゴケと同じ仲間ということになる。 名前の由来は、見た目がカビのようだからとか、カビのような臭いを発するから、という2説があった。どちらが正しいのだろうか。


僕が、このコケの存在を知るきっかけとなったのが、ゲッチョ先生こと盛口満さんの著書「コケの謎-ゲッチョ先生、コケを食う どうぶつ社」である。
主に植物の葉っぱの上で生育するという特異な生態を持ち、触ると独特の化学物質臭を漂わせるという。実に面白いコケだ、是非見てみたいと思った。
しかし本によればカビゴケはとても小さく目立たないうえに、準絶滅危惧種に指定されるほど減少している種だという。まあ容易には見つかるものではないだろうと思っていた。

出会いはあっけないものだった。2年前の植物研究会の高尾山散策の時、川沿いの伸びる6号路を歩いているときに、常緑樹のアオキの葉っぱに群生しているのを見つけたのだ。
こんなに簡単に見つかっていいのかと思ったが、触ると独特の刺激臭がしたからほぼ間違いないだろう。
ただ、カビゴケのように葉っぱの上で生活をするコケはクサリゴケ科などにいくつかあるようだから、僕が高尾で見ているコケが本当にカビゴケなのかは実際のところ分からない。とりあえず、訂正がない限りはカビゴケとして扱いたい。


ところでこのカビゴケの臭い、かなりきつい臭いではあるが、別に嫌なものではない(と個人的には思う)。他の人にかがせたところ、「何とも言えない香り」とか、「カビのような臭い」という感想だった。まあカビ臭いというと躊躇してしまうが、ドクダミみたいないわゆる悪臭ではないので一度試してみてはいかがだろうか。

生えすぎである。これでも絶滅危惧種
高尾では6号路、1号路などの、川沿いを通る場所でかなり見られるカビゴケ。しかし先にも書いたように、現在は絶滅危惧種に指定されるほど数を減らしているとのことだ。
カビゴケの生育には、多湿な環境と、清浄な空気が必要とのこと。だから、外部の影響で乾燥しやすく、排気ガスの影響などを受けやすい都市部の小さな緑地では生きていけない。また、冬でも葉をつける常緑樹の存在が欠かせないから、広く見られる雑木林のような二次林も、生育には恐らく不適だろう。 カビゴケの生存には、かつて関東以西に広く見られたであろう、まとまった面積の常緑広葉樹林の存在が、恐らく不可欠なのである。

カビゴケが息づく高尾の森は、スギ植林が行われるなど人の手が加わっているものの、古くから開発は規制され、豊かな森が守られてきたと言える。 一度でも過剰な伐採が行われていたら、環境の変化でカビゴケは姿を消してしまっただろう。カビゴケは、高尾の森が守られてきたことを示す、小さな生き証人といえるのかもしれない。


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