2019年8月9日金曜日

ハルツ山麓の二次草原

初日2箇所目の観察地は、Sankt Andreasberg近郊の草原。標高約600メートルに位置し、山地生の種が多く見られるとの説明を受けた。

最初のポイントではイネ科草本が優占し、植生高は1 m前後だった。Geranio-Trisetetum、もしくはMeo-Festucetumという群集に相当するらしい。

ホソムギLolium perenne (Poaceae イネ科)

日本では外来種。背後のイネ科はヌカボ属の一種Agrostis sp. と思う。

他にみられたイネ科は、ナガハグサPoa pratensis、カモガヤDactylis glomerata、カニツリグサ属の一種Trisetum flavescensなど。

イネ科の一種Poaceae sp.

属名が分からない…

Geranium sylvaticum (Geraniaceae フウロソウ科)



Rhinanthus minor (Orobanchaceae ハマウツボ科)

半寄生植物。

周囲に生える葉が細かく裂けた草はMeum athamanticum (Apiaceae セリ科)。強い芳香を持つ。

イブキトラノオBistorta officinalis (Polygonaceae タデ科)

Silene dioica (Caryophyllaceae ナデシコ科)

これらの他にはセリ科やマメ科(ViciaTrifoliumなど)の草本が主要構成種だったと思う。




貧栄養と思われる立地では植生高の低い、別タイプの草原が成立していた。
優占種はNurdus strictaというイネ科草本。Polygalo-Nardetumという群集に相当すると思われる。

Nardus strictaの花序。

イネ科の中では特徴的な花序を持ち、花期や果実期なら識別は容易。

Galium hercynicum (Rubiaceae アカネ科)

Nardus草原を特徴づける種のひとつ。種小名はハルツに由来する。
なお、The Plant Listにおいては、G. saxatileのシノニムとして扱われているようだ(http://www.theplantlist.org/tpl1.1/record/kew-86462)。

Potentilla erecra (Rosaceae バラ科)

キジムシロの仲間。

Solidago virgaurea (Asteraceae キク科)

日本のアキノキリンソウの母種に当たる。

斜面地には灌木を伴う草原が成立し、種組成は先ほどの草原とは大きく異なっていた。
草刈りや家畜の採食が低頻度であることが植生の違いに関わっていそうだと感じたが、詳しい理由は聞きそびれた。

Vaccinium myrtillus (Ericaceae ツツジ科)

ブルーベリーの仲間。針葉樹林の林床にも多かった。

Calamagrostis sp. (Poaceae イネ科)

ノガリヤス属の一種。

Luzula sylvatica ? (Juncaceae イグサ科)

日本のスズメノヤリやヌカボシソウなどと同属だが、はるかに大型。

Polygonatum verticillatum (Asparagaceae キジカクシ科)

ナルコユリやアマドコロと同属。葉を4輪生する姿は独特で、初見ではアカネ科などを連想した。

ヤナギランChamaenerion angustifolium (Onagraceae アカバナ科)

Senecio hercynicus (Asteraceae キク科)

日本のキオンとよく似た種。種小名はハルツに由来。

Thesium sp. (Santalaceae ビャクダン科)

日本のカナビキソウと同属。ドイツにはThesiumが複数種分布するらしいが、どの種に該当するかは分からない。

斜面の一角には湧水によって湿性環境が形成されていた。
ここではJuncus(イグサ属)やCarex (スゲ属)、Lotus(ミヤコグサ属)、Ranunulus(キンポウゲ属)、Filipendula(シモツケソウ属)、Athyrium? (メシダ属?)などの草本が特徴的にみられた。

最後に沢沿いの林縁を観察した。

写真はDactylorhiza maculata (Orchidaceae ラン科)

「maculata」は英語で言えばspotted、日本語なら「まだら」とか「斑入り」の意味。斑入りの葉が種小名の由来になっている。

Succisa pratensis ? (Caprifoliaceae スイカズラ科)

マツムシソウの仲間。

Valeriana officinalis (Caprifoliaceae スイカズラ科)

和名はセイヨウカノコソウ。

Cicerbita alpina (Asteraceae キク科)

アキノノゲシなどと同属(Lactuca)とする見解もある。種小名が示すように山地性の種らしい。

Melampyrum sylvaticum (Orobanchaceae ハマウツボ科)

ママコナ属。
後日の観察地では同属のM. pratenseを見かけた。当初はM. pratense1種を観察したと思い込んでおり、M. sylvaticumの存在には図鑑と写真を見比べて初めて気が付いた。



主な識別点は以下の通り。
・上部の葉…M. pratenseでは荒い鋸歯が目立つ。M. sylvaticumでは鋸歯が発達しない(ことが多い?)
・花の特徴…M. pratenseでは長さ1-2 cm、外側は時に白色になる。M. sylvaticumでは長さ0.6-1 cmで全体黄色。

こちらは翌日にブロッケン山で観察したM. pratense

イタドリReynoutria japonica (Polygonaceae タデ科)とDigitalis purpurea (Plantaginaceae オオバコ科)

イタドリは欧州では外来種。

0 件のコメント: