2017年9月23日土曜日

館山市にて ミズキンバイの観察

9月22日

館山市某所。
学生実習の一環で、用水路に生育する植物を観察した。

用水路を覆うように生えていたのはミズキンバイLudwigia peploides subsp. stipulacea(アカバナ科チョウジタデ属)。

チョウジタデは全国的に稀な種で、国のRDBで絶滅危惧Ⅱ類。千葉県内には点々と分布があるようだ。
隣にはタコノアシやガマも生えていた。

砂丘後背地にあたる低標高地には水田や休耕田がみられる。
少し前までは複数の休耕田でミズキンバイがみられたようで、僕が6年前に館山を訪れた際も休耕田で本種を観察している。しかし、現在では植生遷移が進んでヨシやガマ、シロバナサクラタデなどが繁茂し、ミズキンバイは地上からほとんど姿を消している(地中に埋土種子があるかもしれない)。


休耕田から流れ出る用水路は大型草本に覆われないため、ミズキンバイの生育地として辛うじて機能しているようだ。

ミズキンバイの浮葉。

ガの幼虫に激しく食害されているのが目立った。種類が分からなかったので、幼虫を飼育して確認してみようと思う。


2017年9月7日木曜日

シチリアの植生 Pozzilo付近の岩礁植生

6月13日

イタリア最南のシチリア島での学会エクスカーション初日。

最初に訪れたのは、州都パレルモから西に20 kmほどのPozziloの海岸部。近くのパレルモ空港を離発着する飛行機を横に見ながら、石灰岩からなる海岸岩場の草本植生を観察した。


植物群落の主な構成種はLimonium sp. (イソマツ科イソマツ属)、Crithmum maritimum(セリ科)、Sporobolus sp. ?(イネ科ネズミノオ属?)、Sarcocornia sp. (ヒユ科)など。

Limonium sp.

地中海沿岸はイソマツ科の多様性の中心らしく、様々な種が見られる。

Sarcocornia sp.

低木。日本のアッケシソウによく似るが別属。
ヒユ科アッケシソウ亜科(Salicornioideae)には複数属が含まれるが、素人目には属の違いがよく分からない。

セリバオオバコPlantago coronopus L. ? (オオバコ科Plantaginaceae

踏圧がかかる場所では、本種が生育していた。

Thapsia garganica L. (セリ科Apiaceae)

大きな翼を持つ果実が特徴的。
本種は海岸植物ではなく、内陸でもよく見かけた。

セイヨウマツムシソウ?Scabiosa atropurpurea L. ? (スイカズラ科Caprifoliaceae

Sixalix属とする見解もあるようだ。
少し内陸の荒れ地には、外来種であるウチワサボテン(Opuntia sp.)が生育していた。奥に見えるイネ科は恐らくPennisetum setaceum(イネ科チカラシバ属)で、やはり外来種。

両外来種は、シチリアでよく目立つ外来種で、都市近郊では山の斜面で大群落を形成していることもあった。

陸側を見ると、切り立った岩山がそびえている。
海岸線間近に連なる石灰岩の岩山は、シチリア北西部の景観を特徴づける存在である。






シチリア空港に着陸するRyanair(ヨーロッパ最大のLCC)の飛行機。