2015年5月12日火曜日

多年生化したヒシモドキ(栽培下にて)

5月7日

神奈川の実家に帰省した際、睡蓮鉢で栽培しているヒシモドキTrapella sinensis(オオバコ科(以前の分類ではヒシモドキ科orゴマ科))の様子を観察した。
以前に大学の友人に分けてもらったものだ。


水温が上昇し、成長を始めたヒシモドキ。観察したところ、種子から発芽した実生個体と越年した個体の2つがあることに気がついた。


実生個体。

棒状の子葉(双葉)が目立つ。


越年個体。

前年に成長した茎の節から新しい芽を吹いている。現時点では実生個体よりも弱々しい姿だが、この後どのように成長するのだろうか。





ヒシモドキが一年生草本であるか、それとも多年生草本であるかは図鑑によって記述が異なり、たとえば「日本の野生植物 草本Ⅲ 合弁花類 (平凡社)」では多年生、「日本水草図鑑 (文一総合出版)」や「日本水生植物図鑑 (北隆館)」では一年生、とされている。

野外に置いた睡蓮鉢の環境は、温度などの点で自生地とそれほど差はないと思われ(厳寒期には何度も氷が張った)、ヒシモドキは野生下でも植物体の一部が越冬し、多年生草本としてふるまう可能性は十分にあると思われる。
しかし、多くの多年生水草に見られるような殖芽※を作るわけではないし、実生個体の方が勢いよく成長しているところを見ると、水草に特化した図鑑に書かれている通り、基本的には一年生草本として振る舞う植物なのではないかと思える。そのうちに自生の姿を見てみたい。


※殖芽(turion)は、越冬などのために特殊に変化した植物体の一部(分かりやすくいえばイモや球根)のうち、水草が作るものを指すそうです。正月に食べるくわい(慈姑)も、クワイというオモダカを作物化した植物の殖芽に当たります。
殖芽はイモ状のもの(オモダカ、ヒルムシロ等)に限らず、茎の先端に葉が密集したもの(タヌキモ、マツモ等)など、多様です。しかし、ヒシモドキの場合、越冬した茎はあまり特殊化したものには見えず、殖芽とは言い難いように思います。

<引用・参考>
角野康郎 1994. 日本水草図鑑. 文一総合出版, 東京.
角野康郎 2014. 日本の水草(ネイチャーガイド). 文一総合出版, 東京.
大滝末男, 石戸忠 1980. 日本水生植物図鑑. 北隆館, 東京.
佐竹義輔, 大井次三郎, 北村四郎, 亘理俊次, 富成忠夫 1981. 日本の野生植物 草本 Ⅲ合弁花類. 平凡社, 東京.



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2015年5月9日土曜日

空から見た赤潮

4月27日

残雪の目立つ氷ノ山
大阪伊丹から飛行機で隠岐へ向かった。
この日は快晴で、窓から氷ノ山や鳥取砂丘を望むことができた。

鳥取県中部の東郷池の上空にさしかかる頃、海面の一部が赤く色づいていることに気が付いた。赤潮である。

この日流れていたニュースによれば、今回の赤潮は渦鞭毛藻の夜光虫(やこうちゅう、ノクチルカ)の大発生によるものだという。



隠岐の主島、島後にて。

毒々しい色合いの赤潮だが、夜光虫によるものは無害で、漁業被害もあまりないそうだ。




島後 浄土ケ浦海岸



赤潮の発生要因として、生活排水の流れ込みなどによる海水の富栄養化がよく言われる。

しかし、春季に日本海側で発生する赤潮は、必ずしも海水の富栄養化を示すものではないらしく、島根県では春の風物詩的な現象だそうだ。確かに、赤潮の発生していた隠岐の海は透明度が高く、汚染とはほとんど無縁に思われた。

もっとも、鳥取沿岸では河川の流れ込む場所を中心に発生しているようにも見えたので、川から流れ込む栄養塩の存在も重要なのかもしれない。

5月1日

帰りの飛行機から島後を見る。
風に吹き寄せられたのか、沿岸に赤潮が集中して見られた。








<参考・引用>
ノクチルカ赤潮(夜光虫)について
http://www1.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/shinkou/gyosei_info/akashio/suisanka.data/papaer.pdf (2015年5月4日現在)








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