2012年9月28日金曜日

コヒルガオの果実と種子

9月26日

北府中駅の近く、武蔵野線沿いのフェンスにコヒルガオを観察しに行った。少し前に研究室の先輩と植生調査をしている時に実が付いているのを見つけたのだ。

コヒルガオCalystegia hederaceaはヒルガオ科の多年生草本。市街地でもよく目にする花のひとつ。



コヒルガオとヒルガオはめったに果実を付けることがない。僕自身、高校生の時使っていた駐輪場のフェンスで見て以来2回目である。(その時見たのがコヒルガオかヒルガオかは残念ながら覚えていない)
めったに実を付けないのは、自家不和合性という自らの花同士で受粉しても種子が形成されない(受精しない)性質を持つためである。
一見すると大群落のように見えるヒルガオは、大抵の場合地下茎で増えた同一個体、つまりクローンであるため、果実を付けないのだ。つまり、果実をつけるためには異なる遺伝子を持つ別株が近くに存在することが必要となる。

では、今回見つけたコヒルガオはどのような要因で実を付けただろうか。
「日本帰化植物写真図鑑 清水矩宏/森田弘彦/廣田伸七 編・著 全国農村教育協会」
によれば、造園関係の植栽とともに由来の異なるヒルガオが持ち込まれることによる、と書いてある。つまり、半ば人為的要因で結実したということになる。 今回の事例も生育環境から考えて人為的要因が関わっていると考えるべきなのだろうか。

もうひとつ、ここでは詳しく書かないが「日本帰化植物写真図鑑」によれば、ヒルガオとコヒルガオの雑種や外国から来たヒルガオ(種としては同じヒルガオだが遺伝的に異なるもの)が見られるそうだ。
実を言うと今回観察したコヒルガオも花柄のひだが典型的なコヒルガオより目立たなかったり、葉やガクの形状が若干ヒルガオっぽい雰囲気がしたり(これらはヒルガオとの区別点になるそうだ)、ひょっとしてヒルガオとの雑種なのではないか、と思ったが比較してみないには分からない。


家に戻って撮影した種子。ひとつの果実に1~4個入っていた。大きさは4ミリくらいで、アサガオの種子を一回り小さくしたような見た目だ。果たしてまいたら発芽するのだろうか。











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2012年9月24日月曜日

スズミグモ Cyrtophora moluccensis

八丈島のキャンプ場で見つけたスズミグモ Cyrtophora moluccensis。
図鑑を見ると成体はもっと鮮やかな色彩をしているようで、これは幼生または亜成体といったところか。

このクモは南方系のクモであるそうだ。手持ちの図鑑 「フィールド図鑑 クモ 新海栄一・高野伸二著 東海大学出版 1984年8月5日 初版」 では、分布が静岡県より南(大井川流域)となっているが、近年では温暖化の影響か神奈川県などでも見られるようになっているそうだ。ただ僕は藤沢市に住んでいるが、まだ見たことはない。

八丈島をはじめとする伊豆諸島は図鑑の分布域には書かれていないが、温暖な気候からして以前からいてもおかしくないと思う。


このクモの網は普通とは随分と異なる。一般に地面に垂直方向に延びる丸網が多いが、スズミグモの網はドーム絹網と呼ばれる地面に水平なもの。それも2重3重となった少々複雑な構造をしている。(写真では分かりずらくて申し訳ないです)また、糸は随分と丈夫だが粘り気はないようだ。
このような形状の網は小型のクモでは比較的多い気がするが、スズミグモのような大柄(よくみかけるジョロウグモより一回り小さいくらい)のクモでは珍しいようである。
糸に粘り気がないし、形状からして飛んできた虫よりも枝から落下してくる虫を主に狙っているのだと思う。




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2012年9月19日水曜日

ハチジョウナナフシ Entria sp.

先月、八丈島にてハチジョウナナフシを採集した。(残念ながら、採集した時の写真はない) 採集地では軽く見ただけで10匹以上が確認できた。
八丈島の他にトカラ中之島、悪石島にも分布するそうだ。(ナナフシのすべて 岡田正哉著 トンボ出版)







wikipediaより。 赤丸はペイントを使用
地図で見てみると奇妙な分布である。(上の赤丸が中之島、下が悪石島)
トカラ列島は南西諸島に含まれるが、そのトカラ列島の一部と遠く離れた八丈島にしか生息していないということになる。また、南西諸島には広く近縁のアマミナナフシ(オキナワナナフシ)Entoria okinawaensisが分布しているとのことであり、ますます複雑だ。なお、中之島と悪石島をはじめとするトカラ列島には、アマミナナフシは生息していないようである。
そもそも、「ナナフシのすべて」によれば、ナナフシ類の研究はまだまだ進んでいないのだそうだ。ハチジョウナナフシも、本書では一つの種として紹介されているが、学名上はEntoria sp.と、Entoria属の未分類種ということになっている。
アマミナナフシとの違いは、オスの交尾器骨片という器官のキチン化(キチンは昆虫の外骨格を形成するもの)が弱く、繊細なところであるという。しかし、アマミナナフシの中にも「サツミ型、ダイトウ型、ケラマ型、ヤエヤマ型、ドナン型」の5つの型があり、その型もやはり交尾器骨片によって分類されるそうだ。サツミ型(大隅半島佐多岬~沖縄本島北部など)とダイトウ型(南大東島)のものは比較的ハチジョウナナフシに似ているそうである。
このことから、(素人なので偉そうなことは言えないが)ハチジョウナナフシはアマミナナフシの1型に含めてよいのではないかと思ってしまう。
仮に、ハチジョウナナフシをアマミナナフシの1型として考えたとしても、今度は八丈島の分布が謎である。日本のEntoria属のナナフシはハチジョウナナフシとアマミナナフシだけで、八丈島により近い本土には生息しないのである。(アマミナナフシは鹿児島の佐多岬にも生息する)

もし、トカラの島々と八丈島との間に人々の交流があったとしたら、その時に八丈島に持ち込まれた古い移入種という可能性もあるんじゃないか、などと考えたがさすがに飛躍しすぎだろうか。 いずれにせよ、不思議な分布を示す虫である。

追記
Wikipediaなど様々なサイトをを参考にすると、同属のオオナナフシEntoria magnaが本州に生息することになっている。しかし、実物の写真、データはタイプ標本と思われるものを除いて見当たらない。単に採集地を間違えているだけなのだろうか?(http://phasmida.speciesfile.org/Common/basic/ShowImage.aspx?TaxonNameID=1003076&ImageID=9520の画像(恐らくタイプ標本)の標本の腹端を見る限りナナフシモドキなどではなく、Entoria属のメスであるように思える)

追追記 2013年6月
飼育していたハチジョウナナフシの卵が孵化しました。図鑑に記載のなかった単為生殖が確認できたので新たに記事としました。よければご覧ください→「ハチジョウナナフシは単為生殖も行う


飼育記は「てっちゃんの庭」で書いています。よろしければどうぞ。 ブログランキング・にほんブログ村へ
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