2025年1月10日金曜日

スペイン、カナリア諸島の旅4 フェルテベントゥーラ島南部へ

11月29日
この日はホテル(H10 Tindaya)の目の前のビーチでのんびりした後、フェルテベントゥーラ島の南西端にあるハンディア自然公園(Parque Natural Jandía)、特に、島で随一の景勝地として知られるコフェテ海岸(Playa de Cofete)に行った。

朝焼け。
この日の日の出は7時29分だった。

朝食の前にホテルの前のビーチに行った。

ビーチに降りる斜面には、ハマビシ科のZygophyllum fontanesii(Synonym, Tetraena fontanesii)が生えていた。

Zygophyllum fontanesii

多肉質の葉が特徴的な低木。

南米原産のキダチタバコNicotiana glauca(ナス科)も数多く見られた。

キダチタバコは、以前にイタリアのシチリア島の荒地でも見かけた。
温暖な乾燥地に適応しているようだ。

Launaea arborescens(キク科)

昨日も路傍の荒地で見かけた。フェルテベントゥーラ島では街なかから海岸、山に至るまで、どこにでも生えているようだ。
ビーチの砂はとても粒子が細かく気持ちよかった。
磯臭さはなく、べとつく感じもしなかった。それは、海水が貧栄養であることの裏返しでもあると思われる。砂浜には貝殻はほとんど落ちておらず、生き物の気配は少なかった。

打ち上げられていた海草。アマモの仲間だろうか?

唯一、数多く見られたのがトグロコウイカSpirula spirulaの殻。深海性のイカの仲間(十腕形上目)で、Wikipediaによるとカナリア諸島の周辺などに生息しているらしい。

ホテルの敷地内。プールやテニスコート、遊具などが完備されていて、いかにもリゾートホテルらしい。





生垣にはオオバナカリッサCarissa macrocarpa(キョウチクトウ科)が使われていた。
果実は食用になるそうだ。

キョウチクトウNerium oleanderもたくさん植えられていた。
日本ではあまり結実しないが、ここでは結実率が良かった。訪花昆虫がいるのだろう。

ビーチで数時間ほど寝転がり(とても気持ちが良かった!)、近くのスーパーで買ったパンやビスケット、ポテトチップス、ジュースで昼食を済ませた。
このままビーチでゆっくり過ごそうかという話も出たが、折角なので出かけることにした。

フェルテベントゥーラ島で行きたいと思っていたのが、コフェテ海岸(Playa de Cofete)。しかし、アクセスがかなり大変そうなので、ひとまずホテルから車で10分弱のPlaya de Sotaventoというビーチを訪れた。「コフェテ海岸に匹敵する」という口コミもあって期待したが、駐車場の近くを見た限りでは大したことがなさそうで、むしろホテルの前のビーチの方が良さそうに思えた(後から調べると、駐車場から離れた場所が美しかったようだ)。

ということで、大変そうだけれどコフェテ海岸に行くことにした。

出発から30分弱でMorro Jableの街を通過すると、道は舗装路から砂利道になった。砂利道とはいっても整備されていて走りやすかったが、ガードレールやカーブミラーはなく、気の抜けない道が続く。

コフェテ海岸を含むフェルテベントゥーラ島の南西部は、ハンディア自然公園(Parque Natural Jandía)の区域である。
ここに固有のトウダイグサ科の多肉植物Euphorbia handiensis は、この旅で見たい植物の一つだった。しかし、自生地が限られているという情報から、発見は難しいだろうと思っていた。

わずかな期待を持ちながら車を走らせていると、右手前方にそれらしき植物を発見したので急いで停車。

近づいてみると、紛れもないEuphorbia handiensis! この場所ではかなりの個体数だった。
見られると思っていなかったので、とても感激した。

枯れた株もあった。乾燥に適応している本種といえど、この場所の環境は厳しいように思われた。また、幼個体は全く見られなかった。
現在の生育状況が気候変動の影響を受けているのだとすれば、将来が心配である…。

15時30分

曲がりくねった山道を上がり続け、峠であるMirador de Cofeteに到着した。

峠を越えてからの道は、さらに狭くて見通しが利かなくなった。

途中、Euphorbia canariensis の群生地があったが、行きは立ち止まらず帰りに観察することにした。
16時前

コフェテ海岸に到着。有名なだけあって、素晴らしい景色が広がっていた。

砂は、ホテル前のビーチと比べるとやや粒子が大きかった。
コフェテ海岸は波が高く水温は低く、ホテル前のビーチと比べると海水浴向きではないと感じた。それでも、折角なので少し海に入って海水浴を楽しんだ。

波打ち際から離れた場所には、かん木からなる島状の植生が成立していた。

見た範囲では、Traganum moquinii(ヒユ科)1種のみが生育していた。

じっくりとコフェテ海岸を楽しみたかったが、明るいうちに帰らなければいけない(日没後に道を走るのは危ない)ので、16時30分前に出発。
帰路の途中、行きに目を付けていたEuphorbia canariensis の群生地に立ち寄った。

Euphorbia canariensis はスミキリン(墨麒麟)の名で日本でも栽培される。
草丈1~2 mほどで、大きな株を作って生えていた。

周囲には、葉のないかん木が見られた。枯れているのか落葉しているのか?

岩肌には地衣類も見られた。

緊張が続く山道を何とか抜けた(途中、対向車とあわや接触という場面も…)。

最後に、Solana Matorral という町の近郊の海岸を訪れた。ここには、ヒユ科を主体とする低木や草本が密に茂っていた。周囲が他の場所と比べて緑が濃い理由は定かでないが、後背地の山から地下水が流れ込んでいるのだろうか。

Sarcocornia perennis ?(ヒユ科)の群落とモロ・ハブレ灯台(Faro de Morro Jable)。

Atriplex semibaccata ?(ヒユ科)

さまざまな植物が生えていた中で一番印象的だったのが本種。
ハマアカザの仲間だが、果実を包む苞が赤く肉質で、液果状になる。英名「Berry saltbush」はその特徴にふさわしい。

付近の公園には、クジラの骨格標本(本物?)が飾られていた。Googleの口コミなどによると、フェルテベントゥーラ島に座礁したマッコウクジラのようだ。

18時過ぎにホテルに帰着。

この日も美味しい晩ご飯をたくさん食べた。



虫が少ないフェルテベントゥーラ島だったが、Gはしっかりいた。
ワモンゴキブリかコワモンゴキブリ。