2014年11月16日日曜日

ヒメシロアサザの種子散布 その2

11月14日

先日から次々と種子を放出しているヒメシロアサザNymphoides coreana
前回の記事(→リンク)で、種子が表面張力によって水面に浮かび、水の流れで散布されるらしい、ということを書いた。

では、果実から出た種子がどのようにして水面へと達するのだろうか。

ヒメシロアサザの果実。

まず、果実を付けた花柄が水面近くまで伸び、果実が水面で割れることで種子が浮かぶのではないか、と考えた。
しかし、少なくとも我が家の栽培株においては、成熟したと思われる果実を付けた花柄も多くが下を向き、水面近くまで達することはなかった。

そこで、水中で果実が割れた場合に種子がどのように水面へ到達するのかを確かめることにした。
果実が割れる瞬間をずっと待ち続けるわけにはいかないので、果実を水中で強制的に割ることにした。

果実に割れ目を付け、種子を押し出す。
すると、種子とともに気泡が姿をあらわした。

種子をまとった気泡はそのまま水面へと上昇、気泡がはじけると同時に種子は水面に浮かび上がった。

外部から空気が入り込まない水中での実験であり、自然状態でもこれに近い形で水面へと運ばれるのではないかと思う。



種子ではないが、沖縄の海に生えるウミショウブは、水中で形成された雄花が気泡とともに浮かび水面を滑走して雌花にたどり着くことで有名で、時々メディアでも紹介される。
ヒメシロアサザの種子散布はそれを彷彿させるもので、興味深いものだと思った。





ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。

2014年11月13日木曜日

ヒメシロアサザの種子散布

花期の様子。花径は1cm以下と小さい
2014年10月31日

栽培しているヒメシロアサザNymphoides coreana が今年も結実した。
埼玉県のとある工事予定地の休耕田から希少種を移植するアルバイトに参加した際、無数に発芽していた幼個体をいくつかいただいたものだ。



本種は自家受粉を行うためよく結実する。
環境さえ整えば爆発的に増える種と思うが、現状は開発などの影響を受け、国のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類。採取地の埼玉県では絶滅危惧Ⅰ類に指定される。

割れた果実から飛び出した種子は水面に浮かぶ(そのまま水底に沈むものもあるかもしれないが)。
茶色い粒々が浮かんでいるのを見つけた時、最初はそれが何なのか見当がつかなかったが、しばらくしてヒメシロアサザのものと気づいた。


表面張力で浮かんでいるようでちょっと突くだけで沈む。自然界でも水面を流れて移動した種子が、波などを受けて適当な所で沈み、広がっていくのだろう。
種子や果実の内部に空気をため、その浮力で浮かぶ戦略を取る植物は多いが、表面張力を利用するものはあまり多くないと思うので、面白い。


・11月15日 追記
追加の記事を書きましたのでリンクを貼ります。
→「ヒメシロアサザの種子散布 その2

・11月26日 追記
ヒメシロアサザの種子散布について、記事を書いた時にはそれに関する情報を見つけられなかったのですが、その後に「ため池の自然-生き物たちと風景 (浜島繁隆・土山ふみ・藤蔵繁生・増田芳樹 編著 信山社サイテック 2001年」に、ヒメシロアサザの種子について、”種子の表面は水をはじき1~2日浮遊した後沈むが、その間、水の働きで種子散布が行われる”、との記述を見つけました。この本の記述は著者の一人の浜島さんの論文が引用されているようなので、そちらにはもっと細かい内容が書かれているのかもしれません。機会があれば読んでみたいと思います。

ただ、僕が観察した限りでは種子は1~2日の浮遊ののちに沈む、というよりも、波などの影響で適当なタイミングで沈む(言い換えれば穏やかな水面では自動的に沈むことなくかなり長時間浮かび続ける)のではないかと思います。自生状態を観察したことがないので、偉そうなことは言えないのですが・・・。






ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキングに参加しています。