アリたちが集まるクヌギの幹のくぼみには大柄なアブラムシがいた。
クヌギクチナガオオアブラムシ
Stomaphis japonica というアブラムシであるらしい。大きなものは体長4~5mmくらいはありそうな大柄のアブラムシである。
アブラムシを捕まえて観察してみようと枝でつついたら、クロクサアリが激しく攻撃してきた。日本産アリ類画像データベース(http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/J/Taxo/F80613.html)を参考にすると、クロクサアリはこのアブラムシの出す蜜(甘露)を定常的な餌源としているそうで、その存在は大きいのだろう。
さて、アリの隙間をぬってアブラムシを幹から離そうと繰り返しつついたが、頭を中心に回転して動くだけで全く離れる気配がなかった。大抵のアブラムシは群れをつついた瞬間にポロポロと落ちる個体がいるものだが、この種にはそのような行動は全く見られなかった。
後日調べてみると、クチナガオオアブラムシは自分の体長を超えるような長さの口吻(口)を持つそうだ。幹から樹液を吸うと考えると長い口吻が必要なのは確かにそうだな、と思う。いくらつついても頭を中心にして動き、決して幹から離れなかったのはこれが理由なのだろう。
口が長すぎて幹から離れられないのだとしたら、つまりは外敵に襲われても他のアブラムシのように落下したり歩いたりして逃げることができないということになる。もしもアリの庇護がなければテントウムシなどに容易に捕食されてしまうのではないかと思う。
クヌギの幹をくまなく見てみたが、アブラムシはクロクサアリがいる場所にしか見られなかった。もしかすると、アリがいない場所にもいたのかもしれないが、その数はかなり少ないのだと思う。 クロクサアリにとってアブラムシは重要な相手(エサをもたらす)だが、アブラムシなしでも他に様々なエサを食べることができるはずだ。一方、クチナガオオアブラムシはアリの保護なしでは恐らく天敵に対してあまりに無防備である。ほぼ完全にアリに生活を依存していると言っていいのかもしれない。 長い口吻を持つことで、普通のアブラムシには困難な樹木の幹からの吸汁ができるようになった代わりに、アリなしでは生きられなくなってしまったらしい不思議なアブラムシである。
追記
後日に幹から離れたアブラムシを見つけたので別記事にしました。よろしければ見てください
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