2026年1月27日火曜日

スペイン、カナリア諸島の旅6 ラ・パルマ島からテネリフェ島へ

12月1日
この日は、ラ・パルマ島から、諸島中最大の面積と人口を持つテネリフェ島に移動した。


ホテル(Hotel Hacienda de Abajo)の朝食会場。東洋風の器などが飾られていた。

ビュッフェ形式の朝食もとても美味しかった。

朝食後にホテルの庭を散歩。
絵に描いたような南国の風景である。

カナリア諸島原産の植物も植えられていた。
これは Convolvulus floridus L.f. (ヒルガオ科)。木本性のセイヨウヒルガオの仲間である。

ホテルに植えられていたものは、高さ4 mほどあった。葉は柳のように細く、花がなければとてもヒルガオ科には見えない。

ツワブキ

フェルテベントゥーラ島でも植栽されていた。

ホテル近くの展望所(Mirador en Tazacorte)へ行くことにした。
バナナ畑に囲まれた道を歩いていると、教会の鐘の音が響いてきた。前日に見たSan Miguel Parishからだろうか?昔からずっと鳴っていたであろう美しい音に、どこか懐かしさを感じた。

Mirador en Tazacorte からの眺め。
今回は行かなかったが、階段を使って崖下の砂浜まで降りられたようだ。

タサコルテの街中に戻った。

石畳の隙間には小さな雑草たちが生えていた。

その一つのスベリヒユ Portulaca oleracea L.

日本でもおなじみのスベリヒユはラ・パルマ島にも生えていた。
スベリヒユの他には、ハイニシキソウと思わしきトウダイグサ科の植物、ミドリハコベ属(Polycarpon)の一種、スズメノカタビラと思わしきイネ科草本が石畳の隙間に見られた。

ホテルに戻り、少しだけ庭のプールで泳いだ。それが気持ちよかったこと…。もう1泊して、ゆっくり過ごしたいと思った。

11時ごろにチェックアウト。

空港に向かう道中でも植物観察をした。

黒い火山灰。
ラ・パルマ島は、カナリア諸島の中で特に火山活動が活発な島で、2021年の噴火は日本でも報道された。


Aeonium arboreum (L.) Webb & Berthel. (ベンケイソウ科)

昨日、車中から見えていながら通り過ぎるしかなかったアエオニウムにここで出合えた!
 A. arboreum は、日本でも多肉植物として栽培される黒法師(クロホウシ 'atropurpureum')の原種にあたる。

アエオニウム属はカナリア諸島において特に種分化が著しいグループで、20種以上が知られている。

Aeonium arboreum の花。

たぶん Sonchus palmensis (Sch.Bip.) Boulos (キク科ノゲシ属)

ノゲシ属もまた、カナリア諸島において多様な種に進化しており、写真のS. palmensis のように低木性のものもある。日本のノゲシ属(ノゲシやハチジョウナなど)からは想像のつかない姿である。



峠のトンネルを抜けた場所。

ヨーロッパグリ Castanea sativa Mill. が生えていた。カナリア諸島には人によって持ち込まれ、野生化している。

島の東側の低地に着いた。ここでも少しだけ植物観察をさせてもらった。

Cenchrus setaceus (Forssk.) Morrone (イネ科)

日本のチカラシバに似ている。アフリカ~中近東原産で、カナリア諸島に広く野生化している。

Bituminaria bituminosa (L.) C.H.Stirt. (マメ科)

カナリア諸島や地中海地域に広く分布する。僕は、2017年にイタリアのシチリアでも見たことがある。
学名は植物体にビチューメン(歴青)のような臭いがあることにちなむが、観察時は種名が分からず、残念ながら体感することはできなかった。

空港最寄りのガソリンスタンドで給油し、13時前にレンタカーを返却。




15時10分ごろ
ビンターカナリア航空(Binter Canarias)、テネリフェ・ノルテ空港行きNT643便に搭乗。

ラ・パルマ島とテネリフェ島は距離が近く、フライト時間はわずか30分。

15時40分
眼下にテネリフェ島が見えてきた。
写真の左側が北東方向に当たり、貿易風の風上(北東側)だけに雲があるのがよく分かる。
奥の緑豊かな山並みはアナガ山地(Macizo de Anaga)で、翌2日に訪れた。

テネリフェ・ノルテ空港(テネリフェ島にはもう一つ、スール空港がある)に到着。
この日の宿があるラ・ラグーナ(La Laguna)へ行くため、エアポートバスで空港からバスターミナルへ移動した。

バスターミナルから、宿まで約1 kmほどを歩いた。
カナリーヤシの並木がカナリア諸島らしい。

競技場の建物の屋根上に目をやると、なんと多肉植物が生えていた!僕にとってこの上なく素晴らしい光景である。

確認できたのは、ラ・パルマでも見た Kleinia neriifolia(キク科)、テネリフェ島固有種の Aeonium urbicum (C.Sm. ex Hornem.) Webb & Berthel. (ベンケイソウ科)と思われるアエオニウム属の一種、日本のシノブと同属の Davallia canariensis (L.) Sm.(シノブ科)の3種。



高さ3 mはありそうな Kleinia neriifolia の大株。日本でも上手に育てれば、このくらい大きく育つのだろうか。

リュウケツジュ Dracaena draco (L.) L. (キジカクシ科)

カナリア諸島を代表する樹木。

今日明日を2泊するSogno Di Gio De La Lagunaに到着した。
手入れの行き届いたすばらしい部屋!

ホテルの庭には、Echium wildpretii Hook.f. (ムラサキ科)が植えられていた。tower of jewels の名で知られる、高さ3 mにもなる花序を付ける植物で、テネリフェ島の亜高山帯に生える。以前栽培に挑戦したことがあるが、開花には至らず枯らしてしまった(園芸の記録)。

ホテルで一休みした後、食事処を探しに近所に出かけた。
ラ・ラグーナの街は、標高約400 m~500 mに位置し、開発前はリュウケツジュ Dracaena draco や Juniperus canariensis などで構成される植生が成立していたらしい。
Bryonia verrucosa Aiton (ウリ科)

カナリア諸島固有のウリ科植物。

Bituminaria bituminosa マメ科)

ラ・パルマ島でも見かけた植物。この場所では花を見ることができた。

Periploca laevigata Aiton (キョウチクトウ科)

キョウチクトウ科の低木。

地元のレストランをしばらく探したが、結局はケバブ屋(El lugar del sultán Mehmet)で買ってホテルに持ち帰ることにした。

僕は欧米旅行の際、しばしばケバブを食べていたが、妻が今回が初めてだったらしい。
フレンドリーな店主で、中身が分かりやすいようにと牛とニワトリの絵を描いてくれた。

部屋のベランダにて、心地よい風を感じながらの晩御飯。美味しいケバブで満腹になった。
3種のソースのうち、「辛いよ」と言われた赤いソースがびっくりするほど辛かった…


2026年1月26日月曜日

スペイン、カナリア諸島の旅5 フェルテベントゥーラ島からラ・パルマ島へ

旅行と前回の更新から1年以上が経ってしまいました。
記憶があやふやなところがありますが、続きを書きます。


 11月30日

この日は、フェルテベントゥーラ島からグラン・カナリア島経由でラ・パルマ島に移動した。

7時半ごろ

朝焼けの中、ホテル(H10 Tindaya)を出発。

50分ほど高速道路を走り、レンタカー会社の近くのガソリンスタンド(Gasolinera Mederos)で給油、8時半ごろにレンタカーを返却した。

自分たちを含めて数組がシャトルバスに乗り、空港へ。

9時ごろ フェルテベントゥーラ空港に到着。

チェックイン後、ターミナル内の売店を見て回る。
フェルテベントゥーラ島で生産されるアロエベラ製品などを扱うお店(Aloe Vera Exclusive)にて、バルサミコ酢を購入。店員さんはとても親切な人だった。

10時50分ごろ、予定時刻から10分ほど遅れてグラン・カナリア行きのカナリーフライ航空(Canaryfly)、PM806便に搭乗。

窓が傷だらけ…

離陸から30分ほどで、眼下にグラン・カナリア島が見えてきた。

グラン・カナリア島はカナリア諸島で3番目に大きく、人口が2番目に多い島である。今回は飛行機乗り継ぎのために一瞬降り立っただけ。

グラン・カナリア空港での乗り継ぎ時間は、予定で30分、実際は飛行機が遅れていたために20分未満だったと思う。慌ててラ・パルマ行きの便の搭乗ゲートに向かった。

乗り継ぎ時間が短かったので、荷物が無事に次便に載っているのか不安に思いながら搭乗開始。ちょうど、貨物室の入り口から僕たちのキャリーバッグが仲良く並んでいるのが見えて安心した。

さて、飛行機に乗ったところ、先ほどの機内でも見た気がするCAさんが、にこやかに出迎えてくれた。
CAさんも乗り継いだんだな、と思いながら座席に座ると、窓の傷が前便で見たのとそっくりである。さらに、座席ポケットの中のもの(詳細は忘れてしまったけれど)がさっきと全く同じ!ラ・パルマ行きの飛行機は、なんとフェルテベントゥーラ島から乗ったものと同じ(ついでに席も同じ)だったのである。荷物も"無事に次便に載った"のではなく、単に同じ機体に載ったままだったということだ。
同じ機体に乗るんだったら、何のために急いで乗り換えたのだろう、と妻と苦笑した。

12時10分ごろ、PM212便で離陸。
グラン・カナリア空港からラ・パルマ空港までの飛行時間は約50分。途中、テネリフェ島の最高峰のテイデ山が見えた。

13時ごろ、ラ・パルマ空港に到着。
湿気を含んだ空気に、緑豊かな山。死の島と言いたくなる風景のフェルテベントゥーラ島に対して、La isla bonita(美しい島)の愛称を持つラ・パルマ島は生の島である。

空港周辺の舗装は、黒い溶岩(玄武岩)で作られている。

レンタカー会社(TopCar)の窓口で案内を受けて、空港の地下駐車場へ車を取りに行った。
比較的コンパクトなフォルクスワーゲンのゴルフ(または類似する車種)を予約していたのだが、渡されたのは大きなシトロエンのベルランゴ(Berlingo)。地下駐車場内は狭く、壁に擦らないかひやひやしながら出発した。

空港の近くのレストラン「Casa Goyo」へ。人気店で、14時を回っていたがしばらく並んだ。

食べたのは、タコのから揚げと焼いたチーズ?(写真)、パン、クロケット、Crema de piña(パイナップルが入った、あまり冷たくないクリームのデザート)、Crema de limón(同じく、レモン味のデザート)。どれも美味しく、値段も安くて大満足だった。

緑色のソースはモホソース(mojo)というカナリア諸島伝統のソースで、パプリカなどで作られる。緑色のもの(mojos verdes)と赤いもの(mojos rojos)がある。

しばらく寛いだ。
15時半ごろ、今日の宿がある島西部のタサコルテ(Tazacorte)へ向けて出発した。




途中、見晴らしの良い場所(Mirador de Risco Alto)に立ち寄った。

高さ1 mほどの灌木を見つけた。最初は何の仲間か分からなかったのだが…

果実を見ると、ギシギシやスイバ(タデ科スイバ属)にそっくりである。葉の基部にも托葉があって、いかにもタデ科らしい。
調べると、Rumex lunaria L. という種だと分かった。カナリア諸島では、さまざまな植物分類群で草本から木本への進化が見られることは知っていたが、スイバの仲間まで木になっているとは… とても驚いた。

すぐ近くには、日本でも多肉植物として栽培されるKleinia neriifolia Haw.(キク科)が生えていた。
小学生の頃に育てていた植物なので、自生の姿を見れてとてもうれしかった。

Artemisia thuscula Cav.(キク科ヨモギ属)と思われる低木も見られた。

海岸沿いから、島の西部へと抜ける峠道に入った。峠道の法面には、ベンケイソウ科のアエオニウム(Aeonium)と思われる黄色い花が咲いているのが見られた。

Mirador de La Cumbreという展望所で駐車。

展望所の周囲は、常緑広葉樹を主体とする森林が広がっていた。この森はラウリシルバ(Laurisilva)と呼ばれ、日本の照葉樹林と同じタイプの植生に位置付けられる。

Persea indica (L.) Spreng.(クスノキ科)

間近に観察することができた。アボカドと同属で、日本のタブノキに似た葉をしている。

Persea indica の果実。カナリア諸島固有のハト(Columba bolliiColumba junoniae)の重要な食べ物であるそうだ。

Hypericum grandifolium Choisy (オトギリソウ科)
木本性のオトギリソウ。

他にも数種の植物を観察した(アエオニウムは見当たらなかった)。
宿のチェックインなどもあるので、10分弱で出発した。

峠のトンネルを抜けると、そこはカナリアマツ Pinus canariensis C.Sm. ex D.C. の森だった(運転中の僕に代わり妻が撮影)。先ほどの森(ラウリシルバ)とは全く異なる風景である。

島の東西での森林の違いには、北東貿易風が大きく影響している。貿易風の風上の東向き斜面は、雲霧によって湿潤な環境となり、ラウリシルバが成立する。一方、風下の西向き斜面は乾燥しており、Pinus canariensis 林が成立する。

16時30分ごろ
スーパーマーケット(SPAR El Paso)で買い物。

バナナ畑の中を通る。

17時15分ごろ
この日の宿Hotel Hacienda de Abajoに到着した。

外壁には、カナリア諸島を代表する花、Canaria canariensis が描かれている。

宿の周りもバナナ畑。

建物の中には、歴史を感じさせる絵画や装飾などが至る所にあり、昔のヨーロッパにタイムスリップしたかのような不思議な空気感。宿に着いてから、17世紀から続くカナリア諸島で一番古いホテルであることを知った。

オーナーが「あなたたちは気に入ると思うわ」と案内してくれた客室には、東洋風の大きな絵画が飾られていた。どうやら、アジア人の僕たちが好きそうな(?)部屋を選んでくれたようだ。

宿に荷物を置き、近場へ散歩に出かけた。
サハラ砂漠からの砂ぼこりのためか、空はやや霞んでいた。ラ・パルマ島は星空観察に適していることで知られるが、今日は条件が良くなさそうである。

タサコルテ中心部に立つ教会(San Miguel Parish)。隣には、ブーゲンビリアの美しいパーゴラもあった。

ホテル併設のレストラン(Restaurante El Sitio)で夕食。
値段の高さに一瞬たじろいでしまったが、折角なのでここで食べることにした。

頼んだメニューはいずれも創作料理で、美しい食器と相まってとても美味しかった。

ピスタチオのケーキを前に、嬉しそうな顔の妻。


夕食後、宿のテラスに出た。満天の星空とはいえなかったが、ラ・パルマの夜空を楽しむことができた。

テラスの壁に、かわいいヤモリがいた。
カナリア諸島固有の Tarentola delalandii というヤモリの幼体だと思う。