2021年4月29日木曜日

2021年4月18日 流紋岩地のはげ山

 

4月18日

とある流紋岩の山を訪れた。岡山県では県内に広く流紋岩(多くは火砕流堆積物が凝結した溶結凝灰岩)が分布し、沿海地でははげ山になっている場所も多い。
この日の訪問地でも、低木林や草本がまばらに生える裸地が広く分布していた。花期をむかえたヤマツツジRhododendron kaempferi var. kaempferi やコバノミツバツツジRhododendron reticulatum などが目立っていた。

ウンヌケモドキ Eulalia quadrinervis
(イネ科ウンヌケ属)

流紋岩のはげ山には花崗岩地に生育しない(少ない)植物が生えており、ウンヌケモドキもその一つ。ススキに似た穂はさわるとポキポキと折れる。
お隣の兵庫県では、似たような環境に同属ウンヌケE. speciosa も生えているが、岡山では見つかっていない。

ヒメハギPolygala japonica
(ヒメハギ科ヒメハギ属)

流紋岩はち密で水がしみ込みにくい上に、(恐らく)風化で形成される粘土が不透水層になるため、湿地が形成されやすい。

ゴウソCarex maximowiczii
(カヤツリグサ科スゲ属)

流路沿いにはゴウソやアブラガヤといった大型の湿生植物が生えていた。

イシモチソウDrosera peltata var. nipponica
(モウセンゴケ科モウセンゴケ属)


モウセンゴケDrosera rotundifolia
(モウセンゴケ科モウセンゴケ属)

イガクサRhynchospora rubra
(カヤツリグサ科ミカヅキグサ属)

ミカヅキグサ属Rhynchospora やシンジュガヤ属Scleria の複数種が生えているようだが、時期がら種同定は難しかった。
夏以降に再び観察したいと思う。

ノグサSchoenus apogon
(カヤツリグサ科ノグサ属)







2021年4月27日火曜日

2021年4月25日 鷲羽山(倉敷市)

 

4月25日

職場の生き物観察会で倉敷市の鷲羽山(わしゅうざん)(標高112.7 m)を訪れた。瀬戸内の多島海や瀬戸大橋を望むことができる。

山体は花崗岩からなる。主な木本はクロマツPinus thunbergii やアカマツPinus densiflora 、ネズミサシJuniperus rigida 、ヤマモモMorella rubra 、ウバメガシQuercus phillyreoides 、コナラQuercus serrata 、ハゼノキToxicodendron succedaneum 、トベラPittosporum tobira、シャリンバイRhaphiolepis indica var. umbellata 、サクラの仲間(恐らくオオシマザクラCerasus speciosa)、シャシャンボVaccinium bracteatum などであり、同じ花崗岩の山である王子が岳と比べて海岸植生の雰囲気が色濃い。

海岸らしい草本としては、ハマアオスゲCarex fibrillosa が多く生えていた。ヒトモトススキCladium jamaicense subsp. chinense もわずかにみられた。

ヘクソカズラPaederia scandens の多くは葉の毛が少なく光沢があり、海岸型変種のハマサオトメカズラvar. maritima でよさそうだ。

コシダDicranopteris pedata の新芽。鷲羽山の登山道ではコシダは多かったが、ウラジロはあまり見かけなかった。


外来種も多かった。写真のシナダレスズメガヤEragrostis curvula やメリケンカルカヤAndropogon virginicus 、マツヨイグサOenothera stricta 、コマツヨイグサOenothera laciniata 、オッタチカタバミOxalis dillenii 、マツバウンランNuttallanthus canadensis 、ウスベニチチコグサGamochaeta purpurea などがみられた。

マツヨイグサOenothera stricta

この日は親子の参加が多く、昆虫採集で盛り上がった(そんな中でも、何人かの子供たちが植物の話を聞いてくれてうれしかった)。

キムネクマバチがとても多く、パトロール中の♂を素手で捕まえられるほどだった。

ジガバチのカップル。

鷲羽山には裸地が多く、地面に営巣するハチたちの生息環境が整っていそうだ。他にも小型のハチが沢山飛んでいた。

コアオハナムグリ

トベラの花に来ていた。よく似たアオヒメハナムグリ(オキナワコアオハナムグリ)もいたようだが、僕は見つけられなかった。
現地ではアオヒメハナムグリは外来種である話を聞いたが、原名亜種は近畿以西に分布するようだ。

この日一番の収穫はオオキンカメムシだった。










2021年4月7日、11日 吉井川沿い(和気町)

 

4月7日、11日

岡山三大河川の一つである吉井川(和気町内)を訪れた。11日が職場の観察会当日で、7日はその下見だった。

土手にはカンサイタンポポTaraxacum japonicum とキビシロタンポポTaraxacum hideoi (ともにキク科タンポポ属)が生えていた。カンサイタンポポの個体数は圧倒的が多く、外来タンポポも少なかった。

近くにはカナビキソウThesium chinense(ビャクダン科カナビキソウ属)も生えていた。

この場所で見られた主な植物は、アオスゲ、メアオスゲ、スズメノヤリ、フシゲチガヤ、シバ、ヤハズエンドウ、カスマグサ、スズメノエンドウ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、スイバ、スミレ、ヘラオオバコ、オオイヌノフグリ、オオキンケイギク、ヨモギ、ノヂシャなど。

ノニガナIxeris polycephala
(キク科ノニガナ属)

湿地生の植物だと思うが、ここでは道路のすき間にばかり生えていて、河原ではほとんど見かけなかった。

土手の下部は湿り気があり、オドリコソウLamium album var. barbatum(シソ科オドリコソウ属)やイタドリ、ハナウドといった中~大型の多年草が生えていた。


ハナウドHeracleum sphondylium var. nipponicum
(セリ科ハナウド属)

岡山では「うどな」と呼び、山菜にするとのこと。

河原に降りた。河川中流域らしく石河原である。


石河原はさまざまな岩石で構成されている。左上は流紋岩で他は(確か)花崗岩。ともに観察地周辺に分布し、山々を構成している。

変斑レイ岩(おそらく)。観察地よりも上流(北)に分布し、河川の運搬でここまでたどり着いたのだそうだ。変斑レイ岩の他にも、上流から運ばれてきた様々な岩石を見ることができた。



川岸には一年草や越年草が多くみられた。
これはヤナギタデPersicaria hydropiper(タデ科イヌタデ属)。

ミゾコウジュSalvia plebeia
(シソ科アキギリ属)

他に見られた主な植物はヤマアゼスゲ、ヨシ、ツルヨシ、クサヨシ、ヤナギ属の一種、ナヨクサフジ、オヘビイチゴ、トキワハゼ、ツボスミレ、メリケンムグラ、メハジキ、マツバウンラン、カラシナなど。
流れがゆるやかな場所では、外来種のコゴメイJuncus polyanthemus(イグサ科イグサ属)が群落を作っていた。

対岸には河原はほとんどなく、川岸まで落葉樹林が成立している。美しい新緑はエノキCeltis sinensis(アサ科エノキ属)で、展葉していない高木は恐らくケヤキZelkova serrata(ニレ科ケヤキ属)。

ニホンアマガエル。

観察会は動物、植物、地質の合同だったので、色々な興味を持つ方たちと楽しい自然観察ができた。

ヤナギハムシ。

コオニヤンマの幼虫(ヤゴ)。

水中や水際ではヒラタドロムシの仲間の幼虫、トビケラやカワゲラ、カゲロウの幼虫や成虫を観察できた。

2021年4月4日日曜日

2021年4月3日 王子が岳(玉野市)のバッドランド

 


4月3日
王子が岳(標高約234 m)は児島半島の東南部、倉敷市と玉野市の境界に位置する。
20万分の1シームレス地質図V2(リンク)によれば、全山が後期白亜紀に形成された花崗岩で構成され、ブロック状の岩があちらこちらに露出する。また、風化で真砂が形成されて侵食谷が発達し、バッドランドBadland(悪地)と呼ぶにふさわしい場所もある。


コバノミツバツツジ Rhododendron reticulatum D.Don ex G.Don
(ツツジ科 Ericaceae

ちょうど満開だった。

サルトリイバラ Smilax china L.
(サルトリイバラ科 Smilacaceae

ヤマモモ Morella rubra Lour.
(ヤマモモ科 Myricaceae

窒素固定能を持つ放線菌(フランキア菌)と共生することが知られる。


カスミザクラ Cerasus leveilleana (Koehne) H.Ohba

(バラ科 Rosaceae


色合い的にはヤマザクラを思わせるが、花柄などが多毛であり、カスミザクラとするのが妥当だろう。

アカマツ Pinus densiflora Siebold et Zucc.
(マツ科 Pinaceae

やせ地に生える個体は、人の背丈前後の高さでも花実をよく付けるので、観察しやすい。

アカシア属の一種 Acacia sp.
(マメ科 Fabaceae

外来種。ソウシジュ Acacia confusa Merr.かと思ったが、同じアカシア属の別種の可能性もあり、調べている。緑化用に植えられたのか、あちらこちらに見られた。稚樹は見られなかった。

ヒオドシチョウの春型(写真)やミヤマセセリなど、早春を代表する蝶たちにも出会えた。


山頂付近からの景色。中央にみえるのは大槌島で、奥に見えるのは四国の山々。
瀬戸内の絶景を楽しめる観光地であり、山頂付近は多くの人で賑わっていた。






< 確認した植物の一覧(計34種) >
■シダ植物
コシダ、ウラジロ、ワラビ

■裸子植物
アカマツ、ヒノキ(逸出)、ネズミサシ

■単子葉植物
サルトリイバラ、ネジバナ、メリケンカルカヤ、ススキ

■真正双子葉類
ソウシジュ?(植栽)、ヤマハギ、ザイフリボク、カスミザクラ、シャリンバイ、
ミヤコイバラ、ウバメガシ、コナラ、アベマキ、ヤマモモ、
オオバヤシャブシ、アカメガシワ、ハゼノキ、ヤマハゼ、ヒサカキ、
クロバイ、ネジキ、ヤマツツジ、コバノミツバツツジ、シャシャンボ、
スノキ、クチナシ(逸出?)、マツバウンラン、ソヨゴ