10月下旬
沖縄島のとある公園にて列植された木を見つけた。
樹高が20 mを超える大木で、樹皮は白っぽく、葉は羽状複葉。マメ科の何かだろうか、などと考えながら種同定の手がかりを探した。
根元を探索すると長さ20 cmほどの大型の果実を見つけた。果実や種子の特徴からノウゼンカズラ科の樹木と見当がついた。「琉球の樹木」で調べたところカエンボクであると分かった。
カエンボクSpathodea campanulataはノウゼンカズラ科の木本でアフリカ原産。チューリップを思わせる橙赤色の花を咲かせることから英名はAfrican tuliptreeであり、和名の火焔木も花姿に由来する。
本種は分布域外の熱帯地域で野生化しており、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定されているが沖縄ではほとんど野生化していないようで、観察地でも1、2本の若木を見かけただけだった。落ちている果実自体が少なかったので、結実率が低いのかもしれない。
果実内に多数ある種子には大きな翼が付いている。種子本体が大きさ1 cm弱、翼も含めると2 cm前後ある。
種子の拡大。
サイズこそ小さいが、同科のソリザヤノキOroxylum indicumやウリ科のハネフクベ(アルソミトラ)Alsomitra macrocarpaの種子に似ている。
ソリザヤノキやハネフクベの種子は高所から滑空して遠方に散布されることで知られるが、カエンボクも同様の種子散布様式を持つようだ。ただし、私が実験した限りでは、滑空するのは翼の形状が整った種子だけであり、少しでも翼がいびつだと一定方向に飛ばすにひらひらと落ちるだけだった。また、滑空性能はハネフクベよりも大分劣るようだ。もっとも、高木に成長するカエンボクの場合、種子は高所から落ちるために滑空能力が高くなくても十分に散布できるのかもしれないし、種子ごとに飛び方がまちまちなことも、分散して散布するための戦略と捉えられるのかもしれない。
<参考>
大川智史・林 将之 2016. ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑. 文一総合出版.