この神社の境内には国指定天然記念物の「青桐(アオギリ)樹林」がある。
境内の大部分は、スダジイやイヌマキ、ヤブツバキなどを主体とする常緑広葉樹林で覆われている。林床にはホソバカナワラビやフウトウカズラが多い。
その一方で、落葉樹のアオギリが群落を形成している場所も多く見られた。
アオギリFirmiana simplex はアオイ科 (Malvaceae)の落葉高木。
街路樹や公園樹として植えられているのをよく見かける。
街路樹として用いられているのは中国産と思われるが、日本にも自生しているとされる。琉球植物誌(初島 1975)や千葉県植物誌((財)千葉県史料研究財団 編 2007)などを参考にすると、自生品は葉裏が無毛の品種「ケナシアオギリ」である。一方、中国産のアオギリの葉裏には毛が密生しているという。
また、宮崎(1991)によれば、日本におけるケナシアオギリの生育立地は、海岸の風衝低木林と考えられるという。
白浜神社のアオギリは確認した限りでは全てケナシ型であり、また立地は海岸近くの森林(但し、高木層は10 m以上に発達し、低木林ではない)である。とすると、自生個体群と判断してよいのだろうか。
ボート型の果実と種子。
実生も多く見られた。
暗い林床にも実生はあったものの、順調に成長している個体は林縁や道沿い、林冠ギャップといった明るい場所に集中しているように思われた。
そのような場所では先駆樹種のクサギやカラスザンショウなどと混生していることも多く、アオギリもこれらの種と類似した生態を持つのかもしれない。
参考
・(財)千葉県史料研究財団 編 2007. 千葉県の自然史 別編4 千葉県植物誌.
・初島住彦 1975. 琉球植物誌.
・宮崎 卓 1991. アオギリ雑考. FLORA KANAGAWA No.30: 302-303.