海浜植物の調査で京都府の日本海側を訪れた。
山陰海岸を象徴する植物の一つがトウテイランVeronica ornata。
ゴマノハグサ科(APG分類体系ではオオバコ科)の多年草で、春の雑草として有名なオオイヌノフグリと同属である。
漢字で「洞庭藍」と書き、その花色を中国の洞庭湖の水色の美しさに例えたのが由来だそう。
白い軟毛で覆われた草姿と淡紫の花色の対比が素晴らしい。
観葉植物のような草姿だがれっきとした在来種で、山陰海岸の一部(京都、鳥取、島根の隠岐)にしか自生しない日本固有種である。
日本のクワガタソウ属(Veronica)に似た種はないように思うが、大陸に目を向けるとVeronica incanaを始め、トウテイランとよく似た姿の種がいくつかある。山陰の一部に限られる特異な分布域から、氷期に大陸から渡ってきた祖先が日本で分化したものなのではないか、と思う。
※ちなみに、洞庭湖(どうていこ)は中国一の大河、長江から大量の水が流れ込む富栄養湖だそうで、水の透明度は低いという。むしろ、洞庭湖はその周辺を含めた景観の美しさで知られていたようである。トウテイランの花色を洞庭湖の水色に例えたというよりも、洞庭湖の景観のように美しい草である、という方が由来として適当な気がするがどうなのだろう。
コオニユリLilium leichtlinii。
海岸の草原に生育。
山陰海岸では、コオニユリを始めキジカクシやユウスゲなど、草原性植物が多く見られる。
太平洋側の海岸を見慣れている自分としては、コオニユリでなくスカシユリ、キジカクシでなくクサスギカズラ、ユウスゲでなくハマカンゾウが出現するのが普通であり、それらに置き換わって草原性の植物が出現する山陰は興味深い。
ナナカマドSorbus commixta 。
一般に山地で見られることが多い落葉高木。
この地ではタブノキやトベラなど暖帯の海岸林構成種に混じって冷温帯(山地帯)に出現するナナカマドやアラゲナツハゼなどが見られる。
ケカモノハシIschaemum anthephoroides 。
海岸砂丘で一般的なイネ科の多年生草本。写真下に写っているのはハマゴウ。
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参考
・日本の野生植物Ⅲ 合弁花類, 平凡社, 1992年8月1日 初版第22刷発行
・Wikipedia洞庭湖(どうていこ)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%9E%E5%BA%AD%E6%B9%96(2014年7月30日)
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