2012年8月31日金曜日

八丈島のシマウリの話

先日、大学のサークルで伊豆諸島の八丈島へ行ってきた。観察した植物などについてはおいおい触れるとして、今回は購入したシマウリについて書きたい。

gあたりの値段は隣にあったマクワウリの半額以下
シマウリは、八丈特産のウリ。シマが縞を意味するか、島を意味するのかはまだ調べていないのでちょっと分からない。 ウリ、と書いてあるがメロンの一品種であるそうだ。種(しゅ)としてのメロンCucumis meloの中には、マクワウリや漬物に用いるシロウリも含まれる。

この八丈島のシマウリを知ったのは、2年ほど前、盛口満さん著の「ゲッチョ先生の野菜探検記 木魂社 2009年」を読んだ時のこと。甘くない「モモルディカメロン」という品種群があり、日本では長崎の五島列島と八丈島でのみ栽培されているらしい、と書いてあった。
ネットで調べてみると、平安時代には広く普及したが、今では八丈島など一部に残るのみになってしまったそうだ。
2年前(2010年)、ちょうどサークルで八丈島へ旅行に行くことになった。島のスーパーの野菜売り場を探すと、早速それがあるのを見つけた。
残念なことに、購入時点で過熟状態だったシマウリは帰宅した時には腐ってしまい、食べることができなかった。今回はそのリベンジである。

家に持ち帰ったシマウリは皮に割れ目が入り、すばらしいメロンの香りを放ち始めた。皮が割れたら食べごろと聞いていたので夕食後に食べることにした。(上の写真の状態)

切ると、中から白い果肉が顔を出した。種の周りの見た目は普通のメロンと変わらない。しかし、果肉は明らかにジューシーさに欠けていた。切る時の感触を例えると、ナスを切った時に一番近い。

まずはそのまま食べてみた。



全く甘くない、というか無味である。粉質で、まるでマッシュポテトのよう。
香りだけはメロンだが、もそもそするし、味がないし、とてもそのまま食べられるものではない。のどに詰まりやすいから別名「ババゴロシ」と呼ばれているそうだがうなずける。

次に、島で一般的らしい食べ方、練乳(コンデンスミルク)をかけて食べてみた。



急に食べやすくなった。メロンの香りと練乳の甘さが合ってなかなか美味しい。食感の悪さも練乳でかなり解消された。
しかし、夕食後には甘すぎる。3時のおやつにはいいのかもしれない。

最後に同じく八丈島で買ったパッションフルーツをかけてみた。


パッションフルーツの濃厚な香りにメロン臭は完全にかき消された。もはや、シマウリはケーキの生地のような存在になってしまった。
しかし、決してパッションフルーツとミスマッチなわけではない。シマウリ自体の香りは良いし、味の主張がない分、他の食材との様々な組み合わせが考えられそうに思った。


八丈島で僕が友人にこのシマウリについて話したら、「練乳がない時代にどうやって食っていたんだ?」という話になった。かつてどのように食べていたかは分からないが、今回食べてみて、シマウリは必ずしもデザートとして食べるものとは限らないかもしれない、と感じた。


作物に興味がある僕としては、平安時代などには広く栽培されていたが、その後は廃れ、しかし八丈島では今でも栽培が続けられ、しかも練乳をかけて食べられている、ということにロマンを感じてしまう。 おおげさかもしれないが、シマウリは、かつての栽培文化の生き証人、というか文化そのものであると思う。

9月17日 追記
自宅で家族とともに残り半分を食べた。へたの部分まで食べたところで強い苦みを感じた。恐らくニガウリなどウリ科植物に含まれる苦み成分のククルビタシンによるものではないかと思う。



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2012年8月14日火曜日

府中にて アカボシゴマダラ Hestina assimilis

8月8日

府中市の浅間山公園を散策。公園内のクヌギの樹液にアカボシゴマダラが来ているのを見つけた。

アカボシゴマダラ(Hestina assimilis)は、タテハチョウ科のチョウの一種。日本では、元々奄美に生息していたが、近年、関東では放蝶によると思われる中国大陸の亜種が野生化しており、環境省により「要注意外来生物(飼育等は規制されないが、生態系への影響が心配され、注意が必要な種)」に指定されている。

僕がこのチョウを初めて見たのは、神奈川県藤沢市のとある中学に通っていた2004年のこと。(2005年かもしれない。残念ながら不確か)
昇降口を出てすぐ、地面近くをひらひら舞っているのを見つけた。
家に帰って図鑑を開いてアカボシゴマダラだということが分かった。ところが、分布は鹿児島の奄美のみとなっていて、神奈川は分布域から大きく外れていた。
ちょうど、温暖化でツマグロヒョウモンやナガサキアゲハなどのチョウが北上傾向にあることが話題になっていた時だったので、アカボシも奄美から北上したのかな、などと考えていた。

それからしばらくして、放蝶によるものだということを知った。


求愛中
今ではすっかり普通種になってしまったアカボシゴマダラ。

ここまで増えた理由として、在来のゴマダラチョウやオオムラサキと異なり、都市部の小さなエノキもよく利用すること、越冬の際に地面にあまり降りないために落ち葉かきの影響を受けないこと、などが挙げられているようだ。侵入して間もない(生きもの便り さまよえるアカボシゴマダラによれば1995年に埼玉県、1998年に神奈川県藤沢市で確認したのが最初)ために、外敵も少ないかもしれない。

今まで、アカボシゴマダラはゴマダラチョウが住まないような都市部で分布を広げているという印象が強かった。 しかし今回、都市の緑地とはいえ、ゴマダラチョウが生息しそうな場所でアカボシゴマダラが普通に樹液を吸っていたのは驚きだった。ここまで来ると、アカボシゴマダラは単に空いたニッチ(※)にうまく入っただけでなく、ゴマダラチョウに対しても直接の影響を及ぼしているのではないかと思ってしまう。
アカボシゴマダラはゴマダラチョウと比べて一回りサイズが大きいから、仮に樹液をめぐって争ったらアカボシが勝ってしまうのではないだろうか。

2010年 大磯町
余談
アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウ、オオムラサキの幼虫はよく似ているが、次のようにして見分けられるようだ。
・アカボシの幼虫の背中には4対の突起があり1対が大きい、また尻の突起がすぼまっている。
・ゴマダラの幼虫の背中の突起は3対で、尻の突起は開いている。
・オオムラサキの幼虫の背中の突起は4対で、尻の突起は開いている。




※ニッチ(専門家ではないので正確かはわかりません)
日本語では「生態系地位」。
生物は生態系の中で特有の位置を持っている。つまり、どんな環境(場所、時期など)で、どんなものを食べているのか、あるいは食べられているか、ということである。生物が生態系内で持つ位置(地位?)のことをニッチという。

例えば、今回の場合アカボシゴマダラとゴマダラチョウはエノキという樹木の葉っぱを食べるという点で共通している。しかし、仮にアカボシが都市部で、ゴマダラチョウが郊外で生息しているならば、それぞれの住む環境が異なるからニッチは重なっていないといえる。 しかし、両種が同じ環境で同じものをエサとするなら、それぞれのニッチは重なっている、ということになる。
ニッチが重ならない限り、それぞれの種はそれほどぶつかり合うこともなく共存していくことができる。しかし、もしもニッチが被っている場合は競合が起き、強い種が優先してしまう可能性がある。



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2012年8月8日水曜日

ミンミンゼミの羽化

7月31日~8月1日

家の中にてミンミンゼミHyalessa maculaticollis の羽化を観察した。
アブラゼミの羽化は何度も見たことがあるが、ミンミンゼミの羽化を見るのは今回が初めてであった。

幼虫の体色はアブラゼミに比べて緑がかっており、ぱっと見でアブラゼミとは違うぞ、と感じた。
抜け殻だけでアブラゼミとミンミンゼミを判別するのは少々難しく、なんでもミンミンゼミの方が触角の毛が少ないことや、またアブラゼミは触角の第2節より第3節の方が長いが、ミンミンゼミではほぼ同じ長さであることから判別できるとか。





22:45 羽化の始まり。






22:50

アブラゼミに比べて、体が緑がかっているように思える。





23:02






23:12






23:30






23:43
だんだんと翅が透けてきた。

このあと寝落ちしてしまい、残念ながら羽化の撮影はここまで。

翌朝の様子。
薄緑の体に金色の産毛が生え、実に美しいセミである。


その後元気よく飛んでいった。






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2012年8月7日火曜日

7月23日 高尾山

友人のS君とT君と3人で高尾山へ。
6号路を通り、山頂を通過したあと小仏城山へと続く尾根道を進み、一丁平で折り返した。
途中から僕がひどい頭痛に襲われたこともあり、高尾からの下山はケーブルカーで。

6号路に入る手前、まず見つけたのはコバノカモメヅル(ガガイモ科)である。
花色は暗赤色でかなり地味だが、形が面白い。
ガガイモ科の植物の花は、地味な色だが変わった形をしたものが多い。

これはイワタバコ(イワタバコ科)。
6号路の川沿いの岩に張り付くようにして生えていた。
これを目当てにしていた友人は大喜びであった。



他に6号路で見た主な花。
・ヤブミョウガ ・ダイコンソウ ・ギンレイカ ・タマアジサイ ・ハエドクソウ ・ウマノミツバ

こちらはタカトウダイ(トウダイグサ科)。
尾根沿いのいたるところに生えていた。花火のように放射状に広がる草体が素晴らしい。

ヤマユリ(ユリ科)もあちこちに見られた。
時に、姿を見つけるよりも先に香りでその存在に気づくほど、強い芳香を放っていた。近くにいると少々くらくらするほど。


他に尾根沿いで見た主な花。
・オカトラノオ ・ヤマホトトギス ・オオバギボウシ ・アカショウマ ・キンミズヒキ ・ノササゲ ・アキノタムラソウ

ここまでは植物を紹介したが、昆虫も面白かった。特に印象的だったのはこれ、
アケビコノハ(蛾)の幼虫である。

大きな2対の目玉模様が特徴である。また、全体に青い点が散らばっていて美しい。
鮮やかな模様と変わった姿をしているから、始めて見た人や鳥などは驚かされることだろう。
しかし、茶色のために茂みの中では意外と目立たないようにも思う。



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ブログ開設から1年を過ぎて

昨年7月30日に、本ブログ「てっちゃんの自然観察記」を開設してから1年を過ぎました。
タイトル通り、自然に関することについて不定期に綴ってきました。
拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけているなら幸いです。

自然を相手にする限り、これからも毎日のように新しい発見があると思います。始めて見る生き物を見つけたならそれだけで大きな発見ですし、当たり前にいる生き物であっても、観察すればするほどに新しい発見があるものです。
恐らく、記事の内容探しには困ることはないでしょう。あとは、ブログを書く気力を持ち続けることだけです。



今後もよろしくお願いします。



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