2011年7月30日土曜日

タマムシ Chrysochroa fulgidissima

16日土曜日、学芸員の授業の合間に工学部のキャンパス内をうろつき、シダレザクラの幹から飛び立ったものをはたき落して捕獲。人生初の「活」タマムシであった。生物好きが集まる農学部ならまだしも、工学部キャンパス内で急に腕を振り回し、さらには手元を見つめてにやけていた自分はかなりの奇態であったと思う。

今回捕まえたタマムシは、日本のタマムシ科の昆虫では最大種であり、ヤマトタマムシとも呼ばれる。タマムシは飼育が難しいと聞き、当初は翌日に逃がすつもりだったが、エノキの葉を与えたところよく食べるので、1週間観察のために飼育した。                 
タマムシの美しさは格別である。タマムシ以外にも美しい昆虫はいくらでもいるのだが、タマムシの場合は有無を言わさない、というか文句なしの美しさである。よくよく見れば素敵だ、とかいうレベルではない。
タマムシの光沢を生みだすのは、表面の微小構造、つまり構造色であり色素由来ではないそうだ。つまり、表面構造が壊れない限り、永遠にこの輝きを保ち続ける。ただし、東京農業大学のサイトによれば、色を際立たせるために色素も含まれているらしい。

ところでタマムシはなぜこのような体色をしているのだろうか。インターネットなどで調べると、
①天敵からの防御 ②擬態 ③繁殖のため
という説が出てきた。実際のところどうなのだろうか。生意気ながら自分なりに考えてみた。

まず、天敵からの防御である。ぴかぴか光っていると鳥も驚くだろうという話らしい。確かに畑で鳥よけにCDがぶら下げてあったり、鳥は光るものが苦手らしい。しかし、だからと言って本当にタマムシが光っているから食べれない、というほど鳥はバカなのだろうか。最初は嫌がっても旨いと分かれば普通に捕って食ってしまう気がするのだが。

次に、擬態である。こんなに目立つタマムシが擬態とはおかしな気もするが、これはかなり正しいと思う。タマムシが餌とするエノキは落葉樹の割に葉が丈夫で光沢をもつ。角度によっては太陽光を反射し、少しまぶしいくらいだ。この中にタマムシが紛れ込めば、意外と目立たないのではないだろうか。翅に見られる赤茶色の筋は枝への擬態という考えもできる。

最後に繁殖である。僕はこれがタマムシの光沢を説明する有力な説だと思っている。タマムシの光沢は擬態に役立つだろうと書いたが、別に光沢のないただの緑色でも擬態になるはずだ。
タマムシは昼光性であり、日中梢を飛び回る。葉を食べるだけならエノキにずっとくっついていればいいわけで、飛び回るのには恐らく繁殖相手を探す意味もあるのだろう。タマムシの複眼はかなり大きい。(←)繁殖相手は、主に視覚に頼って探していると考えられる。その時この光沢が役立つのではないか。タマムシは角度によって太陽光を反射しキラッと輝くことがある。飛び回るタマムシは、樹上で相手が輝く瞬間を見つけ、そこへと飛んでいくのではないだろうか。 だとすれば、樹上にタマムシの光沢を持たせた物体を置く実験をすれば面白い気がするのだが。

ということで僕の結論はタマムシの体色は繁殖のためであり、同時に擬態も兼ねている、です。


最初の投稿から長くなってしまいました。タマムシの光沢の理由について他の説があるとか、事実を知っているよ、などあれば気軽に書いてください。