2012年8月14日火曜日

府中にて アカボシゴマダラ Hestina assimilis

8月8日

府中市の浅間山公園を散策。公園内のクヌギの樹液にアカボシゴマダラが来ているのを見つけた。

アカボシゴマダラ(Hestina assimilis)は、タテハチョウ科のチョウの一種。日本では、元々奄美に生息していたが、近年、関東では放蝶によると思われる中国大陸の亜種が野生化しており、環境省により「要注意外来生物(飼育等は規制されないが、生態系への影響が心配され、注意が必要な種)」に指定されている。

僕がこのチョウを初めて見たのは、神奈川県藤沢市のとある中学に通っていた2004年のこと。(2005年かもしれない。残念ながら不確か)
昇降口を出てすぐ、地面近くをひらひら舞っているのを見つけた。
家に帰って図鑑を開いてアカボシゴマダラだということが分かった。ところが、分布は鹿児島の奄美のみとなっていて、神奈川は分布域から大きく外れていた。
ちょうど、温暖化でツマグロヒョウモンやナガサキアゲハなどのチョウが北上傾向にあることが話題になっていた時だったので、アカボシも奄美から北上したのかな、などと考えていた。

それからしばらくして、放蝶によるものだということを知った。


求愛中
今ではすっかり普通種になってしまったアカボシゴマダラ。

ここまで増えた理由として、在来のゴマダラチョウやオオムラサキと異なり、都市部の小さなエノキもよく利用すること、越冬の際に地面にあまり降りないために落ち葉かきの影響を受けないこと、などが挙げられているようだ。侵入して間もない(生きもの便り さまよえるアカボシゴマダラによれば1995年に埼玉県、1998年に神奈川県藤沢市で確認したのが最初)ために、外敵も少ないかもしれない。

今まで、アカボシゴマダラはゴマダラチョウが住まないような都市部で分布を広げているという印象が強かった。 しかし今回、都市の緑地とはいえ、ゴマダラチョウが生息しそうな場所でアカボシゴマダラが普通に樹液を吸っていたのは驚きだった。ここまで来ると、アカボシゴマダラは単に空いたニッチ(※)にうまく入っただけでなく、ゴマダラチョウに対しても直接の影響を及ぼしているのではないかと思ってしまう。
アカボシゴマダラはゴマダラチョウと比べて一回りサイズが大きいから、仮に樹液をめぐって争ったらアカボシが勝ってしまうのではないだろうか。

2010年 大磯町
余談
アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウ、オオムラサキの幼虫はよく似ているが、次のようにして見分けられるようだ。
・アカボシの幼虫の背中には4対の突起があり1対が大きい、また尻の突起がすぼまっている。
・ゴマダラの幼虫の背中の突起は3対で、尻の突起は開いている。
・オオムラサキの幼虫の背中の突起は4対で、尻の突起は開いている。




※ニッチ(専門家ではないので正確かはわかりません)
日本語では「生態系地位」。
生物は生態系の中で特有の位置を持っている。つまり、どんな環境(場所、時期など)で、どんなものを食べているのか、あるいは食べられているか、ということである。生物が生態系内で持つ位置(地位?)のことをニッチという。

例えば、今回の場合アカボシゴマダラとゴマダラチョウはエノキという樹木の葉っぱを食べるという点で共通している。しかし、仮にアカボシが都市部で、ゴマダラチョウが郊外で生息しているならば、それぞれの住む環境が異なるからニッチは重なっていないといえる。 しかし、両種が同じ環境で同じものをエサとするなら、それぞれのニッチは重なっている、ということになる。
ニッチが重ならない限り、それぞれの種はそれほどぶつかり合うこともなく共存していくことができる。しかし、もしもニッチが被っている場合は競合が起き、強い種が優先してしまう可能性がある。



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