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2026年1月26日月曜日

スペイン、カナリア諸島の旅5 フェルテベントゥーラ島からラ・パルマ島へ

旅行と前回の更新から1年以上が経ってしまいました。
記憶があやふやなところがありますが、続きを書きます。


 11月30日

この日は、フェルテベントゥーラ島からグラン・カナリア島経由でラ・パルマ島に移動した。

7時半ごろ

朝焼けの中、ホテル(H10 Tindaya)を出発。

50分ほど高速道路を走り、レンタカー会社の近くのガソリンスタンド(Gasolinera Mederos)で給油、8時半ごろにレンタカーを返却した。

自分たちを含めて数組がシャトルバスに乗り、空港へ。

9時ごろ フェルテベントゥーラ空港に到着。

チェックイン後、ターミナル内の売店を見て回る。
フェルテベントゥーラ島で生産されるアロエベラ製品などを扱うお店(Aloe Vera Exclusive)にて、バルサミコ酢を購入。店員さんはとても親切な人だった。

10時50分ごろ、予定時刻から10分ほど遅れてグラン・カナリア行きのカナリーフライ航空(Canaryfly)、PM806便に搭乗。

窓が傷だらけ…

離陸から30分ほどで、眼下にグラン・カナリア島が見えてきた。

グラン・カナリア島はカナリア諸島で3番目に大きく、人口が2番目に多い島である。今回は飛行機乗り継ぎのために一瞬降り立っただけ。

グラン・カナリア空港での乗り継ぎ時間は、予定で30分、実際は飛行機が遅れていたために20分未満だったと思う。慌ててラ・パルマ行きの便の搭乗ゲートに向かった。

乗り継ぎ時間が短かったので、荷物が無事に次便に載っているのか不安に思いながら搭乗開始。ちょうど、貨物室の入り口から僕たちのキャリーバッグが仲良く並んでいるのが見えて安心した。

さて、飛行機に乗ったところ、先ほどの機内でも見た気がするCAさんが、にこやかに出迎えてくれた。
CAさんも乗り継いだんだな、と思いながら座席に座ると、窓の傷が前便で見たのとそっくりである。さらに、座席ポケットの中のもの(詳細は忘れてしまったけれど)がさっきと全く同じ!ラ・パルマ行きの飛行機は、なんとフェルテベントゥーラ島から乗ったものと同じ(ついでに席も同じ)だったのである。荷物も"無事に次便に載った"のではなく、単に同じ機体に載ったままだったということだ。
同じ機体に乗るんだったら、何のために急いで乗り換えたのだろう、と妻と苦笑した。

12時10分ごろ、PM212便で離陸。
グラン・カナリア空港からラ・パルマ空港までの飛行時間は約50分。途中、テネリフェ島の最高峰のテイデ山が見えた。

13時ごろ、ラ・パルマ空港に到着。
湿気を含んだ空気に、緑豊かな山。死の島と言いたくなる風景のフェルテベントゥーラ島に対して、La isla bonita(美しい島)の愛称を持つラ・パルマ島は生の島である。

空港周辺の舗装は、黒い溶岩(玄武岩)で作られている。

レンタカー会社(TopCar)の窓口で案内を受けて、空港の地下駐車場へ車を取りに行った。
比較的コンパクトなフォルクスワーゲンのゴルフ(または類似する車種)を予約していたのだが、渡されたのは大きなシトロエンのベルランゴ(Berlingo)。地下駐車場内は狭く、壁に擦らないかひやひやしながら出発した。

空港の近くのレストラン「Casa Goyo」へ。人気店で、14時を回っていたがしばらく並んだ。

食べたのは、タコのから揚げと焼いたチーズ?(写真)、パン、クロケット、Crema de piña(パイナップルが入った、あまり冷たくないクリームのデザート)、Crema de limón(同じく、レモン味のデザート)。どれも美味しく、値段も安くて大満足だった。

緑色のソースはモホソース(mojo)というカナリア諸島伝統のソースで、パプリカなどで作られる。緑色のもの(mojos verdes)と赤いもの(mojos rojos)がある。

しばらく寛いだ。
15時半ごろ、今日の宿がある島西部のタサコルテ(Tazacorte)へ向けて出発した。




途中、見晴らしの良い場所(Mirador de Risco Alto)に立ち寄った。

高さ1 mほどの灌木を見つけた。最初は何の仲間か分からなかったのだが…

果実を見ると、ギシギシやスイバ(タデ科スイバ属)にそっくりである。葉の基部にも托葉があって、いかにもタデ科らしい。
調べると、Rumex lunaria L. という種だと分かった。カナリア諸島では、さまざまな植物分類群で草本から木本への進化が見られることは知っていたが、スイバの仲間まで木になっているとは… とても驚いた。

すぐ近くには、日本でも多肉植物として栽培されるKleinia neriifolia Haw.(キク科)が生えていた。
小学生の頃に育てていた植物なので、自生の姿を見れてとてもうれしかった。

Artemisia thuscula Cav.(キク科ヨモギ属)と思われる低木も見られた。

海岸沿いから、島の西部へと抜ける峠道に入った。峠道の法面には、ベンケイソウ科のアエオニウム(Aeonium)と思われる黄色い花が咲いているのが見られた。

Mirador de La Cumbreという展望所で駐車。

展望所の周囲は、常緑広葉樹を主体とする森林が広がっていた。この森はラウリシルバ(Laurisilva)と呼ばれ、日本の照葉樹林と同じタイプの植生に位置付けられる。

Persea indica (L.) Spreng.(クスノキ科)

間近に観察することができた。アボカドと同属で、日本のタブノキに似た葉をしている。

Persea indica の果実。カナリア諸島固有のハト(Columba bolliiColumba junoniae)の重要な食べ物であるそうだ。

Hypericum grandifolium Choisy (オトギリソウ科)
木本性のオトギリソウ。

他にも数種の植物を観察した(アエオニウムは見当たらなかった)。
宿のチェックインなどもあるので、10分弱で出発した。

峠のトンネルを抜けると、そこはカナリアマツ Pinus canariensis C.Sm. ex D.C. の森だった(運転中の僕に代わり妻が撮影)。先ほどの森(ラウリシルバ)とは全く異なる風景である。

島の東西での森林の違いには、北東貿易風が大きく影響している。貿易風の風上の東向き斜面は、雲霧によって湿潤な環境となり、ラウリシルバが成立する。一方、風下の西向き斜面は乾燥しており、Pinus canariensis 林が成立する。

16時30分ごろ
スーパーマーケット(SPAR El Paso)で買い物。

バナナ畑の中を通る。

17時15分ごろ
この日の宿Hotel Hacienda de Abajoに到着した。

外壁には、カナリア諸島を代表する花、Canaria canariensis が描かれている。

宿の周りもバナナ畑。

建物の中には、歴史を感じさせる絵画や装飾などが至る所にあり、昔のヨーロッパにタイムスリップしたかのような不思議な空気感。宿に着いてから、17世紀から続くカナリア諸島で一番古いホテルであることを知った。

オーナーが「あなたたちは気に入ると思うわ」と案内してくれた客室には、東洋風の大きな絵画が飾られていた。どうやら、アジア人の僕たちが好きそうな(?)部屋を選んでくれたようだ。

宿に荷物を置き、近場へ散歩に出かけた。
サハラ砂漠からの砂ぼこりのためか、空はやや霞んでいた。ラ・パルマ島は星空観察に適していることで知られるが、今日は条件が良くなさそうである。

タサコルテ中心部に立つ教会(San Miguel Parish)。隣には、ブーゲンビリアの美しいパーゴラもあった。

ホテル併設のレストラン(Restaurante El Sitio)で夕食。
値段の高さに一瞬たじろいでしまったが、折角なのでここで食べることにした。

頼んだメニューはいずれも創作料理で、美しい食器と相まってとても美味しかった。

ピスタチオのケーキを前に、嬉しそうな顔の妻。


夕食後、宿のテラスに出た。満天の星空とはいえなかったが、ラ・パルマの夜空を楽しむことができた。

テラスの壁に、かわいいヤモリがいた。
カナリア諸島固有の Tarentola delalandii というヤモリの幼体だと思う。


2025年1月10日金曜日

スペイン、カナリア諸島の旅4 フェルテベントゥーラ島南部へ

11月29日
この日はホテル(H10 Tindaya)の目の前のビーチでのんびりした後、フェルテベントゥーラ島の南西端にあるハンディア自然公園(Parque Natural Jandía)、特に、島で随一の景勝地として知られるコフェテ海岸(Playa de Cofete)に行った。

朝焼け。
この日の日の出は7時29分だった。

朝食の前にホテルの前のビーチに行った。

ビーチに降りる斜面には、ハマビシ科のZygophyllum fontanesii(Synonym, Tetraena fontanesii)が生えていた。

Zygophyllum fontanesii

多肉質の葉が特徴的な低木。

南米原産のキダチタバコNicotiana glauca(ナス科)も数多く見られた。

キダチタバコは、以前にイタリアのシチリア島の荒地でも見かけた。
温暖な乾燥地に適応しているようだ。

Launaea arborescens(キク科)

昨日も路傍の荒地で見かけた。フェルテベントゥーラ島では街なかから海岸、山に至るまで、どこにでも生えているようだ。
ビーチの砂はとても粒子が細かく気持ちよかった。
磯臭さはなく、べとつく感じもしなかった。それは、海水が貧栄養であることの裏返しでもあると思われる。砂浜には貝殻はほとんど落ちておらず、生き物の気配は少なかった。

打ち上げられていた海草。アマモの仲間だろうか?

唯一、数多く見られたのがトグロコウイカSpirula spirulaの殻。深海性のイカの仲間(十腕形上目)で、Wikipediaによるとカナリア諸島の周辺などに生息しているらしい。

ホテルの敷地内。プールやテニスコート、遊具などが完備されていて、いかにもリゾートホテルらしい。





生垣にはオオバナカリッサCarissa macrocarpa(キョウチクトウ科)が使われていた。
果実は食用になるそうだ。

キョウチクトウNerium oleanderもたくさん植えられていた。
日本ではあまり結実しないが、ここでは結実率が良かった。訪花昆虫がいるのだろう。

ビーチで数時間ほど寝転がり(とても気持ちが良かった!)、近くのスーパーで買ったパンやビスケット、ポテトチップス、ジュースで昼食を済ませた。
このままビーチでゆっくり過ごそうかという話も出たが、折角なので出かけることにした。

フェルテベントゥーラ島で行きたいと思っていたのが、コフェテ海岸(Playa de Cofete)。しかし、アクセスがかなり大変そうなので、ひとまずホテルから車で10分弱のPlaya de Sotaventoというビーチを訪れた。「コフェテ海岸に匹敵する」という口コミもあって期待したが、駐車場の近くを見た限りでは大したことがなさそうで、むしろホテルの前のビーチの方が良さそうに思えた(後から調べると、駐車場から離れた場所が美しかったようだ)。

ということで、大変そうだけれどコフェテ海岸に行くことにした。

出発から30分弱でMorro Jableの街を通過すると、道は舗装路から砂利道になった。砂利道とはいっても整備されていて走りやすかったが、ガードレールやカーブミラーはなく、気の抜けない道が続く。

コフェテ海岸を含むフェルテベントゥーラ島の南西部は、ハンディア自然公園(Parque Natural Jandía)の区域である。
ここに固有のトウダイグサ科の多肉植物Euphorbia handiensis は、この旅で見たい植物の一つだった。しかし、自生地が限られているという情報から、発見は難しいだろうと思っていた。

わずかな期待を持ちながら車を走らせていると、右手前方にそれらしき植物を発見したので急いで停車。

近づいてみると、紛れもないEuphorbia handiensis! この場所ではかなりの個体数だった。
見られると思っていなかったので、とても感激した。

枯れた株もあった。乾燥に適応している本種といえど、この場所の環境は厳しいように思われた。また、幼個体は全く見られなかった。
現在の生育状況が気候変動の影響を受けているのだとすれば、将来が心配である…。

15時30分

曲がりくねった山道を上がり続け、峠であるMirador de Cofeteに到着した。

峠を越えてからの道は、さらに狭くて見通しが利かなくなった。

途中、Euphorbia canariensis の群生地があったが、行きは立ち止まらず帰りに観察することにした。
16時前

コフェテ海岸に到着。有名なだけあって、素晴らしい景色が広がっていた。

砂は、ホテル前のビーチと比べるとやや粒子が大きかった。
コフェテ海岸は波が高く水温は低く、ホテル前のビーチと比べると海水浴向きではないと感じた。それでも、折角なので少し海に入って海水浴を楽しんだ。

波打ち際から離れた場所には、かん木からなる島状の植生が成立していた。

見た範囲では、Traganum moquinii(ヒユ科)1種のみが生育していた。

じっくりとコフェテ海岸を楽しみたかったが、明るいうちに帰らなければいけない(日没後に道を走るのは危ない)ので、16時30分前に出発。
帰路の途中、行きに目を付けていたEuphorbia canariensis の群生地に立ち寄った。

Euphorbia canariensis はスミキリン(墨麒麟)の名で日本でも栽培される。
草丈1~2 mほどで、大きな株を作って生えていた。

周囲には、葉のないかん木が見られた。枯れているのか落葉しているのか?

岩肌には地衣類も見られた。

緊張が続く山道を何とか抜けた(途中、対向車とあわや接触という場面も…)。

最後に、Solana Matorral という町の近郊の海岸を訪れた。ここには、ヒユ科を主体とする低木や草本が密に茂っていた。周囲が他の場所と比べて緑が濃い理由は定かでないが、後背地の山から地下水が流れ込んでいるのだろうか。

Sarcocornia perennis ?(ヒユ科)の群落とモロ・ハブレ灯台(Faro de Morro Jable)。

Atriplex semibaccata ?(ヒユ科)

さまざまな植物が生えていた中で一番印象的だったのが本種。
ハマアカザの仲間だが、果実を包む苞が赤く肉質で、液果状になる。英名「Berry saltbush」はその特徴にふさわしい。

付近の公園には、クジラの骨格標本(本物?)が飾られていた。Googleの口コミなどによると、フェルテベントゥーラ島に座礁したマッコウクジラのようだ。

18時過ぎにホテルに帰着。

この日も美味しい晩ご飯をたくさん食べた。



虫が少ないフェルテベントゥーラ島だったが、Gはしっかりいた。
ワモンゴキブリかコワモンゴキブリ。