2012年9月19日水曜日

ハチジョウナナフシ Entria sp.

先月、八丈島にてハチジョウナナフシを採集した。(残念ながら、採集した時の写真はない) 採集地では軽く見ただけで10匹以上が確認できた。
八丈島の他にトカラ中之島、悪石島にも分布するそうだ。(ナナフシのすべて 岡田正哉著 トンボ出版)







wikipediaより。 赤丸はペイントを使用
地図で見てみると奇妙な分布である。(上の赤丸が中之島、下が悪石島)
トカラ列島は南西諸島に含まれるが、そのトカラ列島の一部と遠く離れた八丈島にしか生息していないということになる。また、南西諸島には広く近縁のアマミナナフシ(オキナワナナフシ)Entoria okinawaensisが分布しているとのことであり、ますます複雑だ。なお、中之島と悪石島をはじめとするトカラ列島には、アマミナナフシは生息していないようである。
そもそも、「ナナフシのすべて」によれば、ナナフシ類の研究はまだまだ進んでいないのだそうだ。ハチジョウナナフシも、本書では一つの種として紹介されているが、学名上はEntoria sp.と、Entoria属の未分類種ということになっている。
アマミナナフシとの違いは、オスの交尾器骨片という器官のキチン化(キチンは昆虫の外骨格を形成するもの)が弱く、繊細なところであるという。しかし、アマミナナフシの中にも「サツミ型、ダイトウ型、ケラマ型、ヤエヤマ型、ドナン型」の5つの型があり、その型もやはり交尾器骨片によって分類されるそうだ。サツミ型(大隅半島佐多岬~沖縄本島北部など)とダイトウ型(南大東島)のものは比較的ハチジョウナナフシに似ているそうである。
このことから、(素人なので偉そうなことは言えないが)ハチジョウナナフシはアマミナナフシの1型に含めてよいのではないかと思ってしまう。
仮に、ハチジョウナナフシをアマミナナフシの1型として考えたとしても、今度は八丈島の分布が謎である。日本のEntoria属のナナフシはハチジョウナナフシとアマミナナフシだけで、八丈島により近い本土には生息しないのである。(アマミナナフシは鹿児島の佐多岬にも生息する)

もし、トカラの島々と八丈島との間に人々の交流があったとしたら、その時に八丈島に持ち込まれた古い移入種という可能性もあるんじゃないか、などと考えたがさすがに飛躍しすぎだろうか。 いずれにせよ、不思議な分布を示す虫である。

追記
Wikipediaなど様々なサイトをを参考にすると、同属のオオナナフシEntoria magnaが本州に生息することになっている。しかし、実物の写真、データはタイプ標本と思われるものを除いて見当たらない。単に採集地を間違えているだけなのだろうか?(http://phasmida.speciesfile.org/Common/basic/ShowImage.aspx?TaxonNameID=1003076&ImageID=9520の画像(恐らくタイプ標本)の標本の腹端を見る限りナナフシモドキなどではなく、Entoria属のメスであるように思える)

追追記 2013年6月
飼育していたハチジョウナナフシの卵が孵化しました。図鑑に記載のなかった単為生殖が確認できたので新たに記事としました。よければご覧ください→「ハチジョウナナフシは単為生殖も行う


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